キャンプ&トラブル&ツーリング!③
初のキャンプツーリングを終えて、SSTR 2016に向けて足りないものを準備した。
長距離を運転する為に、よりしっかりした積載方法や、キャンプの道具について考え、できる範囲で揃えていった。目指せ、雑誌に載るようなお洒落キャンパー!
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今回は、とうとうSSTR前日から当日のお話。
・2016年 9月16日 金曜日(SSTR0日目)
夜明けと共にスタート地点を出発するSSTR。
パリダカ(必ずしもパリ~ダカール間のラリーではなく、アルゼンチン等でも行われる)のように一万キロ以上の距離を何日も、道なき道を行くような世界一過酷なラリーではない。
完走者が勝者じゃない。
兎に角楽しんだもの勝ちの自由なラリーだ。
ルールは簡単(第4回SSTR 2016年度版)
・日の出の時間に太平洋の海岸(どこでもいい)をスタート。石川県の羽咋市、千里浜のゴールゲートを日の入りまでに潜る。
・道の駅やSA・PA、5カ所以上に立ち寄る。
・各県必ず1つある〝指定の道の駅〟に最低1カ所寄らなくてはならない。
※なお、立ち寄り回数により称号(プライズ)が授与された模様。
※SSTRシステムという、チェックポイント記録システムはこの年から導入されていたようだが、使った記憶が無く、当時の記録を読み返してみたら……。
事前に必死に地図を見てルートを調べ、
大洗海岸スタート~関越~北陸~千里浜ゴールというコースを選んだ。指定の道の駅は群馬県、前橋市の「道の駅ぐりーんふらわー牧場・大胡」。指定の道の駅は高速道路から少し離れている事が多く、下道は必ず走ることになる(この下道を走るのがいい)。
前日の9月16日。
この日は夜勤明けだった。夜勤入り前にバイクに全て荷物は積んでしまっていたので、帰って来て暫く寝てから出発することにした。
起きて、窓の外を見るとどんよりとした今にも雨が降りそうな曇り空。
〝雨降りそうだよ。今のところ天気予報だと、明日曇りのち雨〟
茨城の友人にLINEで連絡しておく。
実はこの友人は、自他共に認める雨女なのだ。生まれる時代が違ったら、きっと雨乞いの巫女として重宝されただろう。彼女とツーリングに行くとピーカンに晴れていても、どこかで雨に降られる。
私はどちらかというと降られないたちで、今までふらふら乗っていた時に雨なんて一度も無かった。彼女とツーリングに行くようになってから防水の諸々を購入したくらいだ。
〝気を付けてきてね〟
仕事中の彼女から短いメッセージが届いた。
忘れ物は無いか確認し、胸部プロテクターを装着。家を出発した。荷物を大量に積載していると、当然ながら運転しにくくなる。ブレーキをかけた時に制動距離が伸びたり、シートバッグの所為で座る位置が普段と変わったりする。
なので重さに慣れるまでは慎重に運転し、慣れてから高速に乗った。
スタートしてすぐに何やら怪しく風が吹き、既にパラパラと細かな雨粒がメットのシールドを叩いていた。途中のスーパーで買い物をする余裕も無かった為、予約していた水戸のビジネスホテルに早めに着いて早々に休んだ。
・2016年9月17日 土曜日(SSTR1日目)
3時50分
大洗海岸の日の出が5:22分だったので、少し余裕をもって指定されたファミリーマートに着いた。
ところが、友人がいない。
「?」
耳を澄ませても、バイクの音はしない。連絡をすると、もう少し先のファミリーマートにいると言う。走って2分もしないうちに、会う事ができた。コンビニに寄って、お菓子を買っておく。
「なんか空がさー」
友人が空を見上げて言う。
「うーん」
まだ日の出には早い時間だけれど、言いたいことは分かった。シートバッグにカバーを掛けるか迷うくらいのどんよりした空だった。
「いや、まだ朝だし。日が昇ったら分からないよね」
「そうそう、まだまだ分からないよ!」
大洗海岸まで走る間に、少しタンクが濡れた気がしたけれど、二人で大粒の湿気だということにした。
日の出前の大洗海岸にはすでに数台のバイクがいた。
海の中にある鳥居を見たり、雲の切れ間が無いか見つめたり、思い思いに時を過ごしている。でも、なんとなくだけれど、親近感を覚える。皆バイクにゼッケンシールをつけていて、これから一緒のゴールを目指すんだって思うとそれだけで仲間に見えてくるから不思議だ。
5時22分/スタート・大洗海岸
暫く粘ったが日の出は見られず。更に、SSTRシステムにログインできずで徒に時間が過ぎる。海岸にいた他の数人のライダー達もログインできなかったようで22分ぴったりに動いたバイクはいなかった。
先に、スタンプ帳にスタート時間とオドメーターの数値を記し、四苦八苦するうちになんとかスタート記録を送信できたので、キックスターターを蹴り降ろす。
出発進行!
SR400は健気に重たい荷物と私を乗せてトトトト! と軽快に走り出した。友人のZ250も調子が良さそうだ。
朝の冷たい空気の中、坂を上り、道を駆け抜ける。別のルートから向かうライダー達と手を振りあって暫しの別れ。
6時09分/CP1・笠間PA
日が昇らない内の高速ライドは真冬みたいに寒い。それでも、南の空に雲の切れ間を見つけてテンションが上がる。
SRは構造上時速100を超えると、アクセルを握る手がビリビリしてくる。それに、長い上り坂では息切れを起こすようで、追い抜きが難しい。下り坂になった時に、一気に抜くようにした。愛車のクセを知りながら、労わりながら走るのが楽しい。
「寒い、寒い、寒い!」
「日が昇れば、気温上がるのに!」
高速走行で身体が冷えるけれど、スタートの興奮で言う割に苦ではない。
笠間PAで一度休憩。
お店はまだ開いておらず、スタンプは押せなかった。SSTRシステムにログインも出来ず、ここでも他のライダーさん達がスマホの画面と睨めっこをしている。
やがて、一向に繋がらないシステムにしびれを切らした一人の男性が運営に連絡。
システムを使用せずにラリーを続けて良いとの回答を得て、周りのライダーに教えてくれる。スタンプ帳にオドメーターの距離を記載し、SA・PA・道の駅が開いたらスタンプを押して証明にすれば良いとの事。
念の為写真を撮って、男性に感謝し再スタートした。
7時07分/CP2・壬生PA
笠間から約1時間。栃木に入る。
青空が見えた。
再びPAに降りて、スタンプが押せないか入り口を見てみるが、まだ閉まっている。ほんのり嫌な予感がした。指定の道の駅で朝ご飯を食べられれば良いな、と思っていたのだけれど、このままでは閉まっている可能性がある。
7時57分/CP3・波志江PA
群馬に突入。
この辺りは、良く知っているので安心感がある。この後一度高速を降りて、赤城の指定の道の駅に向かうことにする。
空は再び雲に覆われていて、それでも雨は降っていないから良しとした。次のぐりーん・ふらわー牧場は事前に下見に行ったのでまようことは無い筈だ。
8時50分?/CP4・指定の道の駅クリア・ぐりーん・ふらわー牧場大胡
案の定開いていない。
写真が残っていなかったので、詳しい時間は分からないが、恐らくこのくらいの時間だろう。かなり広大な敷地で、晴れていたらソフトクリームなんかが美味しいのだけれど。
スタンプは外にあったので、押すことが出来た。誰かいないかと思って辺りを見渡したけれど、売店には人の気配さえない。
「お腹……空いた」
「えー!」
そろそろお腹がぺこぺこだった。
でも、赤城山を巻いて、榛名山の方に近付いて高速に乗る予定だったので、もたもたしていられなかった。走り出せば空腹など忘れる。
早朝よりも気温が上がり、乗りやすい。適度な山のワインディングも高速だと味わえないので楽しみたい。下道が良いのは、景色を楽しむ余裕が生まれるから。指定の道の駅が高速から離れているのは、このメリットがあるから良い。
「ところで、なんで先刻の道の駅に寄ったの?」
「えー、あれ、指定の道の駅だよ~」
赤城ICから再度乗り、一路新潟へ。
10時57分:CP5・道の駅南魚沼 雪あかり・ポイントクリア
国境の長いトンネルを抜け、新潟県に入る。
「新潟に、入ったよーーーーーッ!」
「やったーーーーーーーーーーー!」
勿論まだまだゴールは先だけれど、日本海側が射程に入ったので空腹を忘れてテンションが上がる。
六日町ICで降り、十日町を通って北陸道に行く予定だ。
インターを降りてしばらく走ると道の駅の表示。
スタンプだけ押してストップ&ゴーで次に向かう。予定よりも少し、時間が押していた。
12時11分/CP6・指定の道の駅2・クロステン十日町
本来であれば、もう北陸道に乗っていなければならない時間だ。ひとまず駐車場にバイクを停めて、スタンプを押しに行く。
そこで、友人の知り合いに出会った。どうやら彼もSSTRに参加している模様。暫し友人が話をしている内に、食べ物を物色しにいく。流石新潟、美味しそうなものが色々ある。もう空腹が限界だった。
お稲荷さんといちごオレを見つけ、やがて戻ってきた友人と一緒に、今にも雨が降りそうな空を眺めながら食べた。
時間が押してしまった理由は色々ある。
多分、友人のZ250なら、高速道路でタイミングを見る事無く、スムーズに追い抜きができたのだろう。SSTRシステムにスムーズにアクセスできなかったことも、少し影響しているかもしれない。
そもそも、タイムスケジュールに無理があったのかもしれない。
いや、今ご飯を食べていることもタイムロス? 色々考えたけれど、やる事は結局一つなので立ち上がる。
「気を付けて残り、行きますか」
「だねー、そろそろ行こうか」
クロステン十日町で買った国道マグネットをタンクにくっつけて再出発した。
16時15分/CP7・小矢部川SA(有磯海他PAにも寄った?)
無事に北陸道に乗る。
北陸道に入ると一気にゼッケンをつけたバイクが増えるようになる。皆仲間で、道中の無事を願ってヤエーする(ライダーの挨拶。片手を軽く上げる)。
「うみー!!!! 海だよーーーー!!!!!!!」
「え? あ、はいはい。海だね」
「え? 感動しない?」
「や、傍にあるし。何時でも見られるし」
海を見て叫ぶ私を見て怪訝そうな声の友人。海無し県出身だもの、海を見たら嬉しくなるでしょう。
「うーみーは広いーな、大きいな」
「はいはい」
「つーきーは昇るし、日がしーずーむ」
「はいはい」
童謡「海」。
作曲・井上武士、作詞・林柳波。共に群馬県の人だ。こんなに素直に海の感動を歌った歌はあるだろうか(反語)。
幾つもトンネルを抜けていく。ちらちら見える海に感動したけれど、もう少し晴れていたらな、とも思う。親知不・子知不トンネルを抜けて暫く行くと、ついに富山に入った。石川県まで、あともう少しだ。日の入りは17時58分。
間に合うのか?
日本海はどんよりと暗く、雲が海まで伸びているように見えるところがあった。あれは、降っている。
途中で抜かしていくライダーが、何かを必死に訴えている。
「なに?」
「なんだろうね?」
気になったけれど、そのまま走っていたら突然大粒の湿気が。
否、湿気では胡麻化しきれない。大粒の雨がバタバタと降り出した。
「ああー雨、雨、雨!」
「レインウェア、着れば良かった!」
「雨降るよって教えてくれてたのか!」
「あああああ! 濡れる。雨粒が痛い。ヤバい服に染みてきた。やばいやばい!」
なんとかSAにバイクを突っ込みレインウェアとシートカバーを装着。ついでにガソリンを入れて、飛騨牛串を食べる。
スタンドのお姉さんに、千里浜までの時間をきくと、あと1時間くらいだという。なんとか間に合うだろうか?
17時42分/千里浜・ゴール
石川県に入り、高速を降りてなぎさドライブウェイへと向かう。
もう時刻は夕方で、空はうっすらピンク色だった。雲が薄くなったのかもしれない。海沿いの道を走り、砂浜を見る。周りはライダーだらけだ。
ついに千里浜に入り、生まれて初めて砂の上をSR400で走る。立って乗ってみたら、少し遠くまで景色が見えた。
思い出したように右手が痺れはじめたけれど、ゴールゲートが見えた時にまた疲れも何もかも吹っ飛んだ。
地元の人が沢山ゴールゲートの傍で手を振ってくれていて、あったかい気持ちになる。
「あ」
「え」
そして、ゲートを潜った先にいたのは、なんと風間深志さんその人。
ライダー一人一人にハイタッチしてくれていて(確か参加者1800人近くいた筈なのだけれど)、左手に力強く風間さんの手を感じた時に、不覚にもメットの中でちょびっと涙が出た。
近くの教習所にバイクを停めて、完走の手続きに行く。
地元の方達が貝汁とおにぎりを配っていて、雨に濡れてしまった身体に染み込むようで、すごく美味しかった。
丁度初日イベントの終わりの花火が夜空に上がり、来て良かったと胸が熱くなりそして思い出した。
あ、我々、キャンプだった。
・お洒落キャンプとは?
前回の反省点。
濡れないこと、明るいうちに色々済ませること、焚火を灯りの替わりにすること。
時刻はもう19時過ぎ。
真っ暗な上、待ち構えたように雨が強くなった。キャンプ場まで這う這うの体で辿り着き、テントを設営。中にこれ以上濡れないように寝袋を突っ込んで、さあ、どうする。
焚火は無く、灯りは前回の暗いLEDのまま。テントの中にお互い避難して、スマホで連絡を取り合う。
〝どうする?〟
〝もう、なんか食べに行こう〟
覚悟を決めて、ラーメン屋さんまで。
ラーメンと餃子を食べた後、震えながら再びサイトに戻った。薄暗いLEDランタンのせいで、幽霊みたいに酷くぼんやりと佇む二基の小さなテントが並んでいた。
びしゃびしゃになった服を狭い空間でなんとか脱いで、新しいものを着て、寒いのですぐに寝袋に入り、寝た。雨は夜通し降り続いていた。
〝明日は晴れなくてもいいから、曇りで済むといいね〟
〝そうだね、雨さえ降らなければいいね。おやすみ〟
焚火を囲んで談笑なんてできるはずもなく、マシュマロも焼けなかった。
ただ、テントを立てて寝ただけになった。
お洒落のおの字も無い。
・2016年9月18日 日曜日(SSTR2日目)
帰りに千里浜に寄って写真を撮り、重ねていた荷物をコンビニで自宅へ送った。疲れていたし、もうバランスを気にしながら走りたくない。それになるべく軽い方が良かった。
集中力を欠いて帰路、北陸道を間違えて福井方面へ進んでしまう。
引き返す頃には既にくたくただった。
勿論雨が止むことは無い。寧ろ土砂降りだった。もう只管走った。レインウェアの下まで雨水は浸透し、バイクの振動なのか寒くて震えているのか自分でも分からないくらいだった。
更に友人は、北陸道でスマートフォンを落とす。
「あー!」
「え? なになに?」
ミラーを見ると木の葉のように何かが道の脇に落下していくのが見えた。
「すまほ、おとした」
「えー!!」
最寄りのインターで降りたけれど、どうしようも出来ず、再度走り出すしかなかった。
帰りは上信から。SAやPAにこまめに寄ってかじかんだ手足を擦りながら進んだものの、ずぶ濡れ過ぎて店にも入れず、同じくびしょ濡れのライダーと軒下で力なく笑い合った。
なんでこんな寒くてきっつい体験をしているんだろう? こんな土砂降りのツーリングの何が楽しいのか?
昨日の感動はどこへやら、段々自分が何をやっているのか分からなくなってくる。
トンネル内の暖かさに救われながら、19時近くなって漸く横川。
釜めしを食べようとしたのだけれど、売り切れという未だ嘗て無い悲劇。空腹と、寒さで二人でへたり込んだ。右手も腰もぷるっぷるだ。
暗くなってしまったので震える手で家に連絡を入れる。
「お母さん? 横川まで帰ってきたんだけどさ、……かま、釜めしが売り切れてて。お腹空いた」
「はぁ? 釜めしってあんた……あ、茨城の子も一緒なの? とりあえずうちに連れてきな。今からあっちまで帰るの無理よ」
釜めしが売り切れたことしか伝えられなかったのに。
二人でガクガク震えながら自宅へ到着。丁度父は仕事でいないとのことだった。お風呂に入って着替えたら、二人してようやく人心地がついた。
寝る前に少し話をした。
「次はさー、夕陽、見たいよね」
「日の出もね」
「キャンプも、今度こそリベンジしなきゃね」
「来年は降らないといいね」
「ねー」
喉元過ぎればなんとやら。
心はもう次のSSTRへ。
なんだろう、あの魅力。
2016年から毎年参加しているイベントだけれど、最近は有名になってきたのでぼちぼち参加漏れすることがあるかもしれない。それでも良いのだ。参加したことの無い人が参加して、私みたいにロングツーリングにハマればにんまりだ。
キャンプツーリングに関しては、こんな風に2回ともずたぼろだったけれど、SSTR同様今も続けている。失敗の経験は次に生きるし、好きな事なら結局トラブルも楽しかったりする。
リターンしてからの軌跡はほぼSSTRの軌跡。
バイクは変わったけれど、冒険に向かうあのドキドキ感は変わらない。
楽しんだもの勝ちの精神を大事に、今後も乗り続けるのだろうなあと思う。
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