大岩オスカール
今回も過去に鑑賞した作品の紹介だ。
2年前に金沢21世紀美術館に行った際に開催していた、大岩オスカールの個展からである。
ブラジル出身の大岩は、美大ではなく建築学科を卒業している。どこか構築的に感じる構図は、その影響があるのかもしれない。
個展のタイトルは「光を目指す旅」。大岩は、サンパウロから、東京、ニューヨークと拠点をうつし、旅人生を歩んでいる。
「電波に包まれるニューヨークで生活して、まとまらないアメリカで税金を払い 、旅人生を過ごしながら、うまく行かない世の中で光を目指しながらここまで来ました。いろいろな事を経験しながら人間であるだけに、悩んだり、閃いたり、喜んだり、悲しんだりして生きています。これからどうしたいですか?とたまに聞かれることがあります。どこに着くかは分かりませんが、自分の本能に頼って、明るい方へ向かって旅を続けて行きたいと思っています。 最近、 幸せになりたいのだったら、自分の中で自分が目指せる光を育てていくのが大事なのではないかと思っています。幸せはもらうものではなく、自分の中で育てるものではないかと思います。」(「光をめざす旅」展カタログ2019年金沢21世紀美術館/求龍堂発行)
本人が語るように、大岩の作品は光に満ちている。
それは、街のネオンだったり、木漏れ日だったり、世界にあふれるあらゆる光だ。
引用文にあるように、苦しいことや辛いことも経験したのだろうが、光に焦点があてられていること、そしてどこか可愛らしさのある作風のせいか、比較的ハッピーで、作者の人柄も良さそうなどと勝手に思ってしまう。
その中で、印象的だったのが、この作品だ。キャプションのメモをしていなかったため、その点は放念してもらいたい。
中央に描かれるのは、まさかの布団である。枕元には、ライトとティッシュ、目覚まし時計、本、そしてお猪口と徳利がある。
布団を中心に溢れる光の渦。眠りの多幸感とふわふわのした夢の浮遊感が感じられる気がして、モチーフのおかしさと相まって、小作品ながら個人的にとても気に入った作品である。
なお、コロナ禍においては、白黒の「隔離生活」という作品を制作している。こちらは、光の表現はなく、誰もいない街や机などが緻密に描かれ、本展覧会での作品とはまた違う緊張感のある作品であった。