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質問へのお返事2/「猫の皮下点滴中止」の理由は、人と同じく慢性腎臓病が進むと水余り状態になり溺れてしまうから/しかしその経過は人とは違う/今後も質問を受けたいと思います。
猫も人も「慢性腎臓病への対応」は、病気の段階に応じて考える必要がある。
猫も人も慢性腎臓病の進行によって溢水(水過剰状態)になり、その水に溺れてしまう。
猫は砂漠がルーツで経過が特殊だった。
今後も質問があれば答えて行きたいと思います。
はじめに
ある方からコメント欄に2つの質問が来ました。
前回はその 1つである「AIM関連の慢性腎臓病予防フード」についてお返事を書きました。
今回は 、猫の慢性腎臓病治療で「皮下点滴」がこれ以上できない状況になるのはなぜか?に お返事を書きます。
実は猫の慢性腎臓病に「皮下点滴」がそんなにポピュラーな治療だとは知りませんでした。しかも飼い主さんがやるということが多いのも知りませんでした。
そんな状況ですが、まず人のことと、人と比べた猫の特殊事情も考えながらお返事を書こうと思います。
まずお返事の順番を以下とします。
人の慢性腎臓病について、水分摂取・補充を考える。
それを、腎機能の程度に分けて考える。
さらに、猫の慢性腎臓病での水分摂取・補充について、猫の特殊事情を考える。
先ず人の場合を考えます。
大原則として、「慢性腎臓病」はステージ別(腎機能の悪化程度別)に考える。
「慢性腎臓病」の全ての段階を一緒に考えると分かりにくいと思います。
慢性腎臓病で腎機能がだんだん悪化すると、一般健康的なことから慢性腎臓病の特別な要素が強くなると考えると良いと思います。
水分摂取を促す方針から水分摂取を制限する方針に変わることもその一部ですが、その他にもその前は推奨されていたことが途中で制限の対象になるようなことも起こります。
まず慢性腎臓慢性になる前の段階です。
この段階では、人では一般的な生活習慣病を予防・治療することが主であり、脱水はいろんな臓器に負担をかけるので水分摂取を勧めます。
次に軽度の腎機能低下の段階です。
腎機能の低下では、まず(腎臓のいろいろな能力の中で)尿の濃縮力の低下が起こることが多く、薄い尿をたくさん作り尿量が増える時期があります。
薄い尿でも尿量を増やして、老廃物を少しでもたくさん出せるようにするためです。
その時は尿量が増えるため、脱水状態になりやすく普段よりさらに多めの水分摂取を勧めます。
さらに慢性腎臓病が悪化した段階です。
今度はだんだん尿も作れなくなるので、尿量も減り始めます。
こうなると体に水が余る状態(溢水状態)になり始めます。
体の水分のある場所は細胞の内側と細胞の外側に分けられます。
水余り状態(溢水状態)になり始めると、細胞外にある血液中の水分が増えます。
血液中の水分が増えると、体を循環する血液量が増えます。
循環血液量が増えると、血液を循環させるポンプである心臓に負担がかかり、「うっ血性心不全」と言われる状況が起こります。
「うっ血性心不全」が起こると、肺の血液の流れがうっ滞し、肺に水が溜まる「肺水腫」という状態が起こります。
肺水腫が起こると、自分の肺の水に溺れて呼吸ができない「呼吸困難状態」が起こります。
もう一つ、細胞外液である肺の組織間液も増えて、これも肺水腫の原因になります。
要するに、最終的に肺に水が溜まって、その水に溺れてしまうということです。
人間では溢水が起こると、内服や緊急の時は注射で利尿剤を使い尿量を増やし、体内の溢水を修正し、水分摂取を制限します。
それまで勧めていた水分摂取を制限し始めるのです。
利尿剤でも 溢水がコントロールできなくなれば腹膜透析・血液透析・腎臓移植などの「腎代替え療法」が必要になります。
「腎代替え療法」については全てに関わってきたので、またいつか別の記事にしたいと思っています。
猫の話をします。
猫はもともとルーツが砂漠で、そのためか尿の濃縮力が非常に優れています。
その違いのため、猫では腎機能の悪化による濃縮力低下が起こると、人間と比べて多尿の程度が強くなります。
しかも、もともと水を飲まないので、工夫しても自発的な水分摂取が増えない傾向が多く、脱水状態になる程度や可能性が高いとのことです。
この段階で水分摂取が追いつかないと判断したら「皮下点滴」が始まるのだと考えました。
また、猫では腎臓病が進行しても多尿が続くことが一般的であり、脱水を防ぐために積極的な水分補給が推奨されるとのことです。
つまり、過剰な水分による溢水のリスクは人ほど高くないため、基本的には水分補充(摂取・補給)を多くすることが治療の中心となるとのことです。
それでも尿量が減り、溢水が問題になると呼吸状態の方を優先する必要が高くなり、皮下点滴を中止する必要があるのだと考えました。
以上がお返事です。
おわりに
猫も人も「慢性腎臓病への対応」は、病気の段階に応じて考える必要があります。
猫も人も「慢性腎臓病への対応」には、病気の段階に応じてその前は推奨されていたことが途中で制限の対象になるようなことも起こります。
水分摂取を促す方針から水分摂取を制限する方針に変わることもその一例です。
ただし、猫は砂漠がルーツで経過が特殊で特に脱水になりやすかったのです。
しかし、猫も人も、慢性腎臓病が進行すると、最終的には尿量が減り溢水(水過剰状態)になり、その水に溺れて呼吸困難になります。
それが、猫の慢性腎臓病での「皮下点滴治療」中止の時期がくる理由だと考えました。
おまけ
このようになにか「猫」「人」「腎臓」のキーワードに関わること」で質問があれば受けたいと思いますので、コメント欄に書いていただければと思います。
人と猫を比べて、知らないことは調べて、お返事します。
「#かなえたい夢」の原稿を、期限までに間に合わせたいと思います。