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彼岸花


夏のむさ苦しさはどこかへ消えた。

またどこかへ消えてしまった。

行き道にいるいつもの猫も

いつの日から見ていない。

季節がすぎるそのときは、

あの日の陽のまぶしさが風に流れてゆき、

身体が涼しくて空っぽなさびしさを

むりやりに起こす。

あかあかと孤独に群れる彼岸花が

お辞儀をしているそのときに、

やっとはじめて

咲いた息を聞いたような気がする。



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