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〔ショートストーリー・青ブラ文学部〕忙しいのにアンニュイな店主

「何で、こんなに忙しいのにアンニュイなんだよ」
常連客が笑いながら言う。
「忙しいのに、じゃなくて、忙しいから、よ」
店主は目も合わさずに、気怠い声で応えた。その声の色っぽさに、思わず客がドキッとしたのが分かる。が、店主は気が付かない振りで作業を続ける。
「昔はもっと、丸くて柔らかくて、でも重心はしっかりして磨くとツヤツヤになるのが多かったのに。この頃は歪で刺々しくて、そのくせ脆くて扱いにくいわ。おまけに、いくらこの鱗で磨いてもツヤが出なくて、くすんだままだし。これで1回当たりの報酬が変わらないなんて、労力と見合わないわ」
店主のぼやきに、常連客は小さく溜息をついた。
「まあ、それはそうかもな。集めてる俺でもそう思うよ。最近は悪知恵ばかりつけて、隙があればこっちを出し抜こうとする奴も増えたしな。でも、せっかく集めたんだから、献上する前に少しでも綺麗にしたいじゃないか。この店があって助かってるよ」
やがて店主は、何とか磨いて形を整えた「人間の魂」を、常連客の悪魔に差し出した。
「はい、これ以上は私でも無理よ」
「いやあ、上等だ!さすが、一流は違うね。あのガタガタでグラグラの薄汚い魂を、よくぞここまで……」
「お世辞はいいから。早くお代を」
「おう。今日はおまけ付きだぜ」
悪魔は大きなヒキガエルを3匹、店主に渡す。店主の大蛇は嬉しそうに受け取ると、一度に全部丸呑みしてしまった。
「嬉しいわ、1匹だと思っていたのに。ありがとね」
またそのアンニュイな声にゾクッとして、悪魔は慌ててこたえる。
「いや、こっちこそまた頼むぜ。じゃあな」
店主は舌をチョロチョロと出しながら見送ると、気怠そうに次の仕事に取り掛かった。
(完)


こんばんは。こちらを読んで書いてみました。

うーん、正解が分からなくて不安ですが、せっかく書いたので参加させてください。山根あきらさん、よろしくお願いいたします。
読んでくださった方、ありがとうございました。

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