〔ショートショート〕供物
彼は退屈していた。実業家として大成功を収めた後、アッサリ事業を手放し、長年の夢だった冒険家になったと言うのに。
最初のうちは全てが新鮮で刺激的だった。現地からの配信には多くのフォロワーもついた。だが旅を重ね未開の地まで制覇していくと、飽きてきた。もっと刺激的な場所はないか、と。その時、情報が入った。
「〇〇海に10年に1日だけ姿を現す島があり、次は3日後。そこに無人の寺があるが、地元民は決して近付かない謎の場所だ」
彼の目が輝く。詳しい場所を聞くと、早速家を出た。
そして今日。島の場所は秘密にして欲しいとのことで生配信はナシだが、録画映像を後日アップするのはO.K.だ。カメラ片手に小舟で島に向かうと、確かに暗い寺が見える。彼は小舟から降り、境内に足を踏み入れた。途端、足元は沼のようにドロドロになり、彼の体はズブズブと沈んでいく。
「うわっ!た、助け…」
彼はカメラもろとも泥に沈み、やがて島ごと海の中へ。これで10年、地元は安泰だ。
(完・415字)
こんにちは。少しオーバーしましたが、こちらに参加させていただきます。
沈む寺、というと、どうしてもホラーしか浮かびませんでした💦
たらはさん、どうぞよろしくお願いします。
読んでくださった方、ありがとうございました。