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〔ショートショート〕冬の色鉛筆

冬の色鉛筆を開発した。数々の魔法の書を読み漁り、色鉛筆そのものに魔力を持たせることに成功したのだ。これで絵を描けば勝手に冬モードになる、画期的発明品。青空を描けば薄曇りの寒々しい空になり、雨を描けば雪に変わる。紅葉は枯葉になって落ち、常緑樹はうっすら雪が積もった状態になる。魔法の色鉛筆だ。
「よし、これで冬景色が完璧に描ける!」
私は張り切って街に出かけると、クリスマスのイルミネーションを描こうとした。が、どういうことか、一向に色が乗らない。
「あれ?何で?」
どうやら色鉛筆は、魔力と同時にプライドも持ってしまったらしい。違う季節を冬に変えられることを誇示したいあまり、最初から冬景色を描くことを許してくれないのだ。
仕方がないので、私は煌びやかなイルミネーションを見ながら、少し前の殺風景な街角を思い出して描く。すると予想通り、美しい街角が現れるのを見て手を止めた。ああもう!さっさと帰ってこの色鉛筆を暖炉にくべてしまおう!


こんばんは。シロクマ文芸部のお題で書きました。

ふう。りみっとさんと同じく、百恵ちゃんの歌が浮かんで、しばらく離れられませんでした。何とか違うストーリーを書いてみましたが、これでも大丈夫かな?

小牧さん、いつも有難うございます。読んで下さった方、有難うございました。

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