
陰陽師のおじさん。
小学校の高学年になった頃、おじさんを認識した。
いつも、私を頭の斜め上にいるもの。
幽体離脱した時に隣りにいる白い存在。
ゆっくりと時間をかけて輪郭が濃くなっていった。
低い声で穏やかに京言葉を話す大人の男。
陰陽師服のおじさん。
わたしの都合はお構いなしで、一方的に語りかけてくる。
言葉少なめ。
会話はできない。
助言をくれる。
親切ではない
気さくでもない。
静かで厳かな"何かの師匠だった"ような光の存在。
彼のエネルギーに私は長年守られていた。
子どもの頃は彼がわたしにとって何の存在なのかもわからなかったが、"悪意のない憑物"と認識していた。

彼はわたしに私が知らないことを教えてくれる存在。
彼が話することは"世の習い"のような話。
高僧や聖人君子が言いそうな教えを一言ずつ呟くように降ろしてくる。
「なるほど」と思う声もあれば、
「だからなんやねん」
「どうしろっちゅうねん」
とツッコミどころ満載な声も多く、会話にならないのがもどかしかったが。(大人になって会話ができるようになった)
彼とわたしのつかず離れずな関係は30年続いた。