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#また乾杯しよう

餃子 1

餃子 1

餃子 2
餃子 3

 目が覚めた時、自分がどこにいるのか全く分からなかった。
「こちらですよ」
 という女性の声がして、金属的な音がした。部屋のドアが開いて、看護師さんと共に入って来た男の人が誰なのかもさっぱりわからなかった。
 その人は若いけれど自分より少し年上の、20代前半ぐらいだろうか、白いポロシャツに黒いズボン。真面目そうな印象だったが、表情には強い陰りが見えた。
 誰だろう。
 誰です

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餃子 2

餃子 2

餃子 1
餃子 3

 フラフラとそちらの部屋を開けてみるとそこは和室で、灯りをつけると仏壇に三人の写真が飾ってあった。
 ああ、やっぱりなと思った。
 一人は優しそうな女の人。あとの二人は、今より少し年老いた、うちの両親だった。三人とも、黒ぶちの枠の中に微笑みながら納まっていた。
「かわいい感じの女の人だなあ。俺、こんなかわいい人と結婚できたんだ。なんか嬉しいなあ。なんかリョウくんもお母さん似だ

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餃子 3

餃子 3

餃子 1
餃子 2

 それからまた時は過ぎ。
 それからはリョウくんと一緒に街を歩き回ったり、ネットやスマホらしきものの端末の操作を教わったり、料理や掃除を勉強したり(インスタントラーメンから始めた)。
 リョウくんは大学はいくつか受けたらしいけれど、中には遠方の学校もあって、そうすればお互い一人暮らしになってしまうので、俺はかなり真剣にやらなくてはならなかった。
 そうして生活が少しだけ落ち着

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