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ひとりごと「60秒間の相合傘」

小雨だからと傘を持たずに出かけた
秋の夕刻は肌寒くて
駅までの数分が途方もなく長く感じ
小走りも虚しくあと少しの交差点で赤信号
冷たい強風と大粒になった雨が髪を濡らす

外国人のようにパーカーのフードを
すいっとかぶってみてもただの気休め
いっそびしょ濡れになってやろうと
フードを落とすために顎を上げた視界へ
かぶさってきた大きなコウモリ

「信号が青になるまでどうぞ」
「嫌でなければ駅までどうぞ」
控えめな優しさに断る理由も見つからなくて
それから60秒間の相合傘はコマ送りの長さ
フランス映画なら恋愛が始まるシチュエーション

されどここは日本の独立国家なにわ大阪
面白いことにしか興味がないから
「雨女のくせに横着をするアホやねん」
自分のダメさを開示して笑いを誘うだけ
お礼を言って改札を抜けたらさようなら

それでも60秒間の相合傘は記憶に刻まれ
幸せなできごとの余韻は続いている
親切を拒否されることもある時代なのに
勇気を出してくれてありがとう
飴ちゃんをあげられなくてごめんね

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猫田ミロク
いつも読んでいただいてありがとうございます^^