ひとりごと「60秒間の相合傘」
小雨だからと傘を持たずに出かけた
秋の夕刻は肌寒くて
駅までの数分が途方もなく長く感じ
小走りも虚しくあと少しの交差点で赤信号
冷たい強風と大粒になった雨が髪を濡らす
外国人のようにパーカーのフードを
すいっとかぶってみてもただの気休め
いっそびしょ濡れになってやろうと
フードを落とすために顎を上げた視界へ
かぶさってきた大きなコウモリ
「信号が青になるまでどうぞ」
「嫌でなければ駅までどうぞ」
控えめな優しさに断る理由も見つからなくて
それから60秒間の相合傘はコマ送り