ひとりごと「三十三回忌までに」

次の夏の
三十三回忌までに
思い出たちを集めるね

１７歳の私を見つけてくれた
１学年上の１７歳のきみ

出会ってからきみが卒業するまでの
半年間は恋人として
それからの２年と半年は友達として
私が必要とするときだけ
そばにいてくれた優しい先輩

楽しさを優先して
向こう見ずに生きる私と
臆病なくせに
目立ちたがり屋なきみ
いつも笑顔で明るい二人は
似た者同士に見えたけど
性格はまるで正反対だった

ガハハと笑うガサツな私
ガハハと笑う繊細なきみ
内面を隠していたら
同じに見えちゃう

ねぇ
今はね
きみを説明してくれる言葉が
たくさんあるんだよ
「２世信者」
「ＨＳＰ」
「双極性障害」

ひとりで抱え込んで
辛かったであろうきみは
二十歳の誕生日を
人生のゴールテープに見立て
数か月余韻を味わったあと
勢いよく真夏の海へダイブ
目立ちたがり屋の
きみが見せた
最後の姿
友人たちの先頭をきって
楽しそうに海へかける
うしろ姿
いつも通り目立つための
派手なパフォーマンスに見えたと
友人たちは言う
辛さから逃げるための奇抜な行動
ギタリストのカリスマ性を欲して
背伸びしていた凡人の苦悩
誰も気づいていなかったの？
強がりを暴いてはいけないと
見て見ぬふりをしていたの？

きみが海の泡になったと知ったのは
風が冷たくなった秋
何週間も見つからずにいたなんて
ひどいかくれんぼだね
手紙も残さず消えてしまうから
不運な事故ということに

きみが亡くなる前日にくれた電話
話した内容は秘密にしてる
いつかそっちにいったら聞きたいよ
何人の元カノに同じこと言ったの？
もし私だけだったのなら
優しい言葉をかけられなくてごめん
引きとめられなくてごめんねと
何度も言う
きみは多分バカにしたような態度で
「あんなん冗談にきまってるやろ」
そう言って大笑いするだろう
私を守るために
自分を守るために

次の夏の
三十三回忌までに
思い出の場所を巡るね
きみがくれた優しさを
見過ごしていた想いを
拾い集めながら
無償の愛にかえる