妖怪しりけずり
さいきんさいきんあるところに、学校でも有名なガリ勉小僧がおったそうな。
名前を河里辺 吽といい、毎日40時間以上勉強していたという。
吽がいつものように勉強をしていると、すべての鉛筆の先が丸くなっているのに気がついた。
「よし、いっぺんに削るか」
そう言って棚から電動鉛筆削りを取り出し、鉛筆を挿し込む吽。
「ガ⋯⋯ガ⋯⋯ガ⋯⋯」
5年使っているせいか、思うように削れない。
「困ったなぁ、これじゃ鉛筆削るだけで68時間46分と34秒掛かっちゃうよ」
驚異的な計算スピードで時間を割り出し、頭を抱えてふと窓から庭を見た。
「ん⋯⋯なんだあれ?」
吽の目線の先には、惜しげもなく頭皮を丸出しにした頭を地面にこすりつけるように全裸で土下座している49〜56歳と思われる男性の姿があった。
「酔っ払いかな」
吽は酔っ払いが嫌いだった。
自分が1日に40時間も勉強をしているというのに、こんな夜中まで酒を飲んでフラフラしているというのが気に入らないのだ。
「ぶっ殺してやる」
吽は机の上の鉛筆をすべて手に取り、階段を降りた。
玄関で靴を履き、男のいる庭へと向かう。
「ゲロゲロゲロゲロゲロゲロ」
カエルに擬態しているのかただのゲロ吐きなのかは分からないが、非常にキショい声を出していた。
「死ねぇ!」
非常にキショい声を聞いて腹が立った吽は持っていた鉛筆を1本右手に握り、力いっぱい男の肛門に突っ込んだ。
『ガガガガガガガガガガガガガ』
「この感触は!?」
なんと、鉛筆が削れているのだ。
『ガガガガガガガガガガガガガ』
取り出してみると、先がときんときんになっていた。わずか4秒の出来事であった。
「そ、そんなわけないよな⋯⋯疲れてるだけだよな、はは⋯⋯」
そう言いながらも2本目を挿し込む吽。
『ガガガガガガガガガガガガガ』
ときんときんである。
「す、すげーっ!」
それから吽は900本すべてを削った。
「あの⋯⋯ありがとうございました!」
「フッ、礼には及ばんよ」
男はそう言って立ち上がり、真っ赤に染まった尻のまま去っていった。
「神様⋯⋯!」
涙を流しながら男を見送る吽。
先程男が立ち上がった時に腹に『神』と書いてあるのがチラッと見えたのだ。
鉛筆は1本残らずうんこ臭くてカビが生えたのですべて捨てたという。
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