奥西優子個展「Unblocked」
同じ場所で、同じ時に同じタイミングでシャッターを切っても
同じようには写らない。
そこにあった光を同じようにおいただけなのに違う。
それが、撮影者という視線の違いと言えばそれまでなのだが。
その違いに心が踊る。
奥西優子の個展「Unblocked」の風景がそうだった。
展示されている写真の場所は9割、知っている。
場所によっては、シャッターを切った場所。
だけど、知っていたけど、知らなかった景色が広がっていた。
日常に見えているような景色が、彼女がシャッターで切り取ると、それはどこか違う、優しい光の別世界の景色のように見える。
柔らかいミドルトーンの美しい世界が広がっている。
強烈な個性を放つような世界の切り取り方をしていない。
何気ない構図で、見えるかもしれないが
その先の世界、少しだけ広がった世界が広がっており、日常に見える風景に新たな意味を与えている。
ある人が言っていた。
彼女の写真には見たことのない沖縄が写っていると。
そうだと思う。
沖縄からイメージするような写真ではないが、そこには確かに沖縄が写っている。
沖縄に住んでいる自分だから感じられる沖縄であるが、同時に日常に見ている世界と少し違う沖縄。
コンクリートの壁のまだな模様、フライボードの上に広がる穏やかな斜光と雲の世界。
人の肌のような波。
波もよくある景色だし、写真のような波も見たことがあるような気がする。
風でさざ波立っている水たまりの瞬間も見たことがある。
でも、シャッターは切ったことがない。
そこで、シャッターを切れるのが彼女の素晴らしいところ。
何気ない日常のちょっとだけ不思議な空気が彼女の写真にはある。
心優しくなる、美しいミドルトーンの仕上げが、より彼女の世界の空気を醸し出している。
特に白が美しい。
派手な色はないが、一度見ると忘れることができないような、ミドルトーンの美しい白。
心から綺麗だといえる写真でした。
そこには、写真家の心の美しさが、そこににじみ出ているような気がする。