高知の八彩帖(ヤイロチョウ)5・「チャイリ」
かつてとある会社のサイトに連載していたショートエッセイです。高知にまつわるあれこれを書いています。
今回は「チャイリ」。何それ?と思ったら読んでね♪
高知県の方言というと「土佐弁」だ、とイメージするのはまだまだ高知県民序ノ口で(何のことやら)。西部には「幡多弁」という東京式アクセントの方言があり(ここで幕下)、さらに山間部は「垂井式アクセント」なる結構レアな方言使用者が存在している(知ってる人は横綱級)。
この垂井式アクセント。土佐弁みたいな京阪式でも、幡多弁みたいな東京式でもない。真似しようのない独特なアクセント使いで、会話を聞くとここは本当に高知県だろうか?と思うくらい新鮮味にあふれている。
さて。母は香美市物部町大栃(旧物部村大栃)に住んでいたことがある。もれなく垂井式アクセントの大栃(母曰く「大栃弁」)。これまたさらに地域方言のようなものが存在していたらしい。
その中のひとつが「チャイリ」。祖母が地区で料理の手伝いに行った時の話。「チャイリ」がどうのこうのと皆言っている。どうも調理器具のようだが、何を指すのかさっぱり見当がつかない。何かハイカラな外国のモノなのか?しかしこんな山に、そんな最新鋭の調理器具があるものなのだろうか。
首をかしげつつ、そのチャイリなるものの登場を待っていると、出てきたのはただのフライパン。そこで気が付いた。何のことはない、「チャイリ=茶煎り」だと。
今でも大栃ではチャイリを使っているのだろうか。人口70万人を切った高知県。垂井式アクセントの使用者も、失われつつある。