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「関西女子のよちよち山登り 4.飯盛山」(2)

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 登山道を進むにつれて次第に木陰が増えていく。一時でも太陽の熱から逃れられたことで、汗と一緒に体力も流れ出しているようなひどい疲労感が少しやわらいだ。

 階段を登るとT字路になっていた。道標があり、飯盛山頂は右と書かれている。

 いったん立ち止まってペットボトルの麦茶を飲む。それから思い出したようにザックをそっと開け、中の様子を伺った。

「よし、クッカー、倒れてへんな」

 荷物の一番上に深型クッカーが立てて入れてある。

 昨夜、登和子は荷物をザックに詰めながら、クッカーをどのように入れたらいいか悩んでいた。
 クッカーの中にはガス缶が入っている。
 ガス缶入りのクッカーを横倒しにしてザックにしまったほうが収まりはいいのだが、はたしてガス缶は、横倒しにしても爆発したりしないのだろうか。

「怖いな……いや、横にしても大丈夫やろう多分……ああ!やっぱあかん、怖い怖い」

 クッカーを立てたり寝かせたり、うんうん悩んだ末、登和子は結局、クッカーを立てて収納することにした。
 さらに、バーナーでうまく着火できなかったときに備えてライターも持って行くが、念のためそれは、先日購入したサコッシュに入れた。

 それでも心配で、今日だけですでに何度も、クッカーの収納の具合とライターをチェックしている。

「ライターの安全装置もよーし……山登ってる他の人たちも、こんな心配してんのかな」

 それとも私が心配性なんかな。心でつぶやきながら塩分タブレットを食べ、再び少し麦茶を飲む。ザックを背負いなおし、山頂に向けて歩き出した。

 細い道が終わった先に二階建ての展望台が見えた。一階部分にはベンチがあり、五十代くらいの男女数人がおしゃべりしていた。

 ここが飯盛山の山頂なのだろうか。それにしては山頂だと示す看板がどこにも見当たらない。

 展望台の二階部分に行ってみても、やはり看板はなかった。

 一階に下りて辺りを見回していると、登和子が登ってきた道からやってきた男性が、そのまま奥に進んでいった。
 見ると、展望台の奥に細い登りの道がある。登和子もそちらに向かった。

 登り切った先には、武将らしき像が建っていた。甲冑を身につけ刀を差した若い男性だ。

 そういえば、ネットで飯盛山の情報を調べていたときにこの像の写真も見かけた。楠木正行(くすのき まさつら)という武将で、四條畷の戦いという戦で戦死したと書かれていた。

「ここで、戦が?」

 楠木正行の像は小さな丘のような場所に建っており、時折、展望台のほうから登山者の楽しげな声が聞こえる以外はとても静かだ。

 この山のどこかで遙か昔に戦が行われたとは、想像はできても実感がまったく湧かなかった。

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