「関西女子のよちよち山登り 3.大和葛城山」(4)
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もともと頂上にたどり着いたあと、下山はロープウェイで行う予定だった。頂上まで行ければ問題はない。
「じゃあ行こ行こ!この道、アスレチックみたいでええやん」
頂上に行く技術があるか悩む登和子を置いて、優希は身軽に丸太を渡りきった。
「あ!山ちゃん、丸太渡らんでも、下のくぼみに下りて、歩いてこっちに来られへん?」
言われてみると、丸太の下にぽっかり空いている空間は、高さ一mほどしかない。しかもよく見ると誰かが上り下りした跡もある。踏み跡を使えば、底まで下りて向こうに渡れそうだ。
滑らないように気をつけてくぼみに下りながら、登和子は心で半泣きになった。
ここはもはや初心者向けコースではなく、冒険コースだ。
予想通り、丸太橋のあとも道の崩壊は続いた。
倒木をくぐったり、道なのかも分からない道を、誰かが取り付けてくれたピンクのテープの目印を頼りに進んだりした。目印を見つけられなかったときは、あとから来た登山者にそっとついていってみたりもした。
途中、岩に鎖がかかっている箇所があった。岩は下に向かってやや斜めになっている。
「まさか、この岩の上を進むんやろか」
おののく登和子に、
「そうやと思う。ほらこうやって」
優希は手と鎖を使いながら、なんなく岩を歩いて渡った。アドバイスに従って登和子も岩に登ると、案外簡単に越えられた。
四苦八苦しながら少しずつ登っていくと、やがて道は本来の姿を取り戻していった。両側に並んだ木々の間に、奥まで続くゆるやかな階段がある。
その手前にあるベンチで少し休憩することにした。
「ほんまはこれまでの道も、この道みたいにきれいやったんかな」
登和子がつぶやく。
「そうやったんちゃう?下の荒れっぷりはすごかったなあ」
根っこを露わに倒れる無数の木々を思い出す。中には、倒れるなど木自身も想像していなかったに違いないほど太く大きなものもあった。
人間はなんてちっぽけなんだろうというありきたりな言葉が、山に来ると畏怖の念とともに頭に浮かんでくる。
「山ちゃん、頂上まであとどれくらい?」
ポケットに入れている地図を取り出して確認する。
「あと一時間くらいかな」
「オッケー、あと一息やね、頑張ろー!」
二人はザックを背負い直し、頂上に向けて歩き出した。
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