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「関西女子のよちよち山登り 3.5 二度目のお買い物」(終)

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「作るメニューは決まってますか?まずはカップラーメンとか……」

「いえ、パスタを作ってみたいなあと、ぼんやり考えてます」

「なるほど、それならジェットボイルじゃないほうがいいですね。山に行かれるのはひとりが多いですか?」

 さっき見ていた、ガス缶の上に大きなコップが乗っている何かはジェットボイルという名前らしい。

「大体ひとりです。あのそれ、ジェットボイル?ですか、それもバーナーなんですか?」

「ああ、これはバーナーとクッカーがセットになっているやつで、お湯を沸かしたり、ラーメンを作ったり、そういう簡単な料理に特化してます」

 店員は説明しつつ、棚を行き来して登和子の前に商品を集めている。

「こんなもんですかね!」

 登和子の前には、ガス缶とバーナーが一種類ずつ、小さなフライパンと、取っ手がついた円筒形のものが並んでいる。

「ソロ登山におすすめのものを集めてみました。一人分のごはんなら、バーナーはガス缶に直接付ける、一体型がいいと思います」

 軽いですし、と店員は付け加えた。

「ガス缶、なんだかいろんな種類がありますけど、この選んでいただいたものはソロ向けなんですか?」

 店員が選んでくれたガス缶は、黄色の地に赤文字で『POWER GAS』と書かれている。他にも黒文字で『NORMAL GAS』と書かれたものがあり、違いが気になった。

「ソロ向け、ということはなくてですね。この黒文字は使える季節や場所が限られます。寒くない時期の低い山用という感じですね。こっちの赤文字のほうだとオールシーズン、高い山でも使えます」

 赤文字のほうが使い勝手が良さそうだ。高い山に行くかは分からないが、冬も月一で登山に出かけるとしたら、きっとその時期こそ温かいものがほしくなるはずだ。

「そして、クッカーですが、フライパンと深型のもの、どちらもおすすめなので持ってきました」

 円筒形のものが『深型』らしい。これも調理用具なのか。

「深型ですと、上と下が外れるので」

 円筒形のものがぱかっとふたつに分かれる。よく見ると、取っ手は上下のどちらにもついていた。

「下の深いほうは鍋として煮炊きに使えますし、上の浅い方は小さなフライパンとして使うこともできます」

「あ、便利」
 
 どちらも調理用具としては小さいが、鍋とフライパンがセットになっているのは魅力的だ。

「さらになんと深型には……」

 店員はガス缶を手に取ると、ゆっくりとクッカーの深い方に入れていく。

「ガス缶がぴったり収納できるんです!」

 登和子は思わず小さく歓声を上げた。こういう演出にめっぽう弱い。
 店員が勧めてくれたガス缶、バーナ-、深型のクッカーの三点と、ついでにレジに向かう途中で出合ってしまったサコッシュの計四点を購入した。

 アウトドアショップを出ると、初夏特有のさらっとしたさわやかな空気に包まれた。大阪駅に向かって歩き出す。

 種類が多すぎて何を買えばいいのかパニックになってしまったが、結果的に良い買い物ができてほっとした。

 これで準備は整ったが、そもそも本当に山でパスタが作れるのだろうか。実験のようでわくわくする反面、不安な気持ちもある。

 そしてどんな山で山ごはんに挑戦するのか、ということも大切だ。荷物が増え、ザックの重量が増すことを考慮する必要がある。

 調べること、考えることを頭にぽつぽつ思い浮かべながら、登和子は紙袋を揺らして帰路に就いた。

                    (3.5 二度目のお買い物-終)

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