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「関西女子のよちよち山登り 5. 5 悩める登和子さん」(終)

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 オシャレ、いるのか。山でもいるのか。

 正直、いわゆる山ガールの服装にはあこがれている。登山用品を買いそろえたときに、いいなと思ったキュロットスカートの試着もしてみた。

 しかし、着替えて試着室の鏡を見ると、そこにはとんでもないものが映っていた。

 登和子は足が骨太のうえに、O脚で本来の長さより短く見える。キュロットをはくとより足が短く見え、どの角度から見ても驚くほど似合っていなかった。すぐに脱いだ。

 キュロットや短パンというものは、足が細く長い人間にしか似合わない、選ばれし者のみが着られる服だと痛感した。実際にそういった服装の男女は、皆おおむね足がすらっとしている。

 山スカートなるものも登山ファッション界にはあるらしいが、こちらは似合う似合わないの問題ではない。きっとスカートがめくれていないかを気にしすぎて足下がおろそかになり、パンツ丸出しで派手に転んでしまう。トラウマしか残らない。

 登和子は身を起こし、再び次郞のTシャツを見た。オシャレに疎いとはいえ、いろいろと気づいてしまったからには、何か登山用の服を買い足したくなってくる。

 今度、いつもとは違う、オシャレな服を置いていそうなアウトドアショップに行ってみようか。

 出かけるのであれば、前もってある程度の予算を立てておかなければならない。ボーナスのお小遣い分はあといくら残っていただろうか。記憶を辿り、すぐに頭の中に「ガーン!」という音が鳴り響いた。

 登山用品一式を買いそろえて減った貯金の補填に回したから、もう残金はほとんどないはずだ。登和子は再びベッドに伏した。

「あ……もう十二時や」

 時計を見たら急速に眠くなってきた。
 とりあえず、次の登山はこれまでと同じ服装で行くことになりそうだ。

                    (5.5悩める登和子さん-終)

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