二十歳の冬、私は勇者になろう。
12月。共通テストまで1ヶ月。
三度目の大学入試シーズン。現役のときにはセンター試験最終年度にぶち当たり、友人たちの多くは、浪人して新たな形式の共通テストに挑むリスクよりも、進学して気持ちを入れ換える選択をした。
私はそれができなくて一年浪人することを選んだ。そうして新しく始まった共通テストでまた失敗した。
そうして、あと一年だけ自分ととことん向き合おうと覚悟をきめた。もう大学への憧れや情熱は高校生の頃ほどではなかったけれど、辞めたら自分になんの自信もなくなると思った。大嫌いな自分を背追い続けることになる気がした。
自分で苦しいとわかって道を選んだ。
これが最後。そんな入試を控えた今は怖くて怖くて仕方がない。成功体験がどこにもない。自信なんか無い。それでも自分で三度目の受験を決めてしまったから。
センターだの共テだのいうマーク試験。全てを決めてしまうような気がする試験。誰が好き好んであのプレッシャーだらけのマーク試験に三度も立ち向かうんだろうか。
それでもその道を歩み始めてしまったから。毎日毎日朝が来るのを怯えながら、三年も受験生をしてきた自分が未だに満足のいく実力を持っていないことに泣きながら、訳がわからなくなりながら机に向かうしかなくて。
逃げない諦めない。それだけは守り抜こうねって心に誓ったから。泣いても良い、弱音はいてもいい、歩みをゆるめてもいい、でも受験のステージから降りてしまったら今まで頑張ってきた自分に頭が上がらないから。
もう現実と向き合うのが苦しくて苦しくて仕方がないし、今にもすべてを捨てて消えてしまいたいとも思う。センター試験なんて大嫌いだ。模擬試験を受けると、過呼吸を起こす日もあれば文字が一切読めなくなる日もある。それでももう本番がやってくる。
この試験を受けなければ何も始まらないの。大丈夫。私は強い。こんなに怖いものに自分から立ち向かうなんて。ここまで何度も立ち上がってきた私は勇者だから。これまでの人生で最大のボス戦に備えてあと少し、気が狂いそうだけれど、それでも前を向いて進んでいくことにするよ。
失敗したらその時考えるから、悪いことは考えないで。頑張れ私。あと少し。