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ショートショート

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短編小説集です。
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2023年6月の記事一覧

『TVの中の世界』

ある晩、男はひとり酔いながらソファーに座ってテレビを観ていました。 正確にはただ眺めていたと言っても良く、男の心はここにはありません でした。 恋人が亡くなってから3ヶ月、男は空虚な毎日を過ごしていました。 男はテレビの前に座り続けていました。 すると、突如として画面が変化し、見知らぬ風景が映し出されたのです。 それはまるで違う世界のようでした。 驚きながらも、酔っていたせいもあって男はその不思議な光景を 楽しんでいました。 しかし、彼は気づきました。その風景が、自分

『不思議なすし屋』

ある日、小さな街に謎のすし屋が突然現れました。 そのすし屋は外観も内装も非常にシンプルで、看板には「すし屋」と だけ書かれていました。 町の人々が興味津々でそのすし屋を訪れると、男が一人で切り盛りしており、カウンターには見た事もないようなネタが並べられていました。 人々は不思議に思いながらも、その美味しそうな寿司に誘われて食べ始めました。すると、口に入った瞬間、彼らはまるで異世界に連れて行かれたような感覚に陥りました。 食べるごとに、彼らは自分の中に色々な感情が蘇って

『不思議な惑星の話』

ある宇宙船が、惑星に不時着しました。 その惑星の住人が心配して宇宙船を取り囲むと、 中から宇宙服を着た、具合の悪そうな男が出てきました。 男は言いました。 「私は宇宙病という自分たちの文明の医療技術では治療できない病気にかかってしまいました。何とか治せないかと色々な惑星を回っていた所、宇宙船の調子が悪くなり、こちらへ不時着したというわけです。」 すると長老らしき年老いた男が出てきてこう言いました。 「私らの文明は遅れており残念ながらあなたの病気を治すのは難しい、だがこの

『宇宙犬』

宇宙開拓の時代、人々は最新のテクノロジーを駆使して未知の領域に進出していました。その中でも特に注目を浴びていたのは、星間探査に適した高性能なロボット犬でした。 ある日、宇宙船に搭載されたロボット犬「ステラ」は、遥か彼方の惑星探査ミッションに派遣されました。ステラは思考能力を持ち、自律的に行動することができる最新のAI搭載ロボットでした。 ステラは無事に惑星に到着し、調査任務を開始しました。しかし、惑星の地表には人々が予測していたよりも厳しい環境が広がっていました。 極端

『時間を止める能力』

ある日、男は自分が時間を止める能力を手に入れたことを知った。 最初は驚きと戸惑いでいっぱいだったが、 やがてその力を使いこなす方法を探し始めた。 最初の頃は、時間を止めて友達のいたずらをするなど、ちょっとした悪戯に興じることが多かったが、やがて彼はその能力をより大きな目的に活用することを考えた。 彼は夜な夜な街を巡り、危険な状況にある人々を救い、 犯罪者を逮捕する活動を始めた。 しかし、時間を止めることで得られる利便性と力に夢中になっていく うちに、男は少しずつ自分の