【本】[第二章 ネストール] 『ユリシーズ 1-12』(ジェイムズ ジョイス、柳瀬 尚紀 (翻訳)/河出書房新社)
こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。
今日は『ユリシーズ 1-12』の2章を読みました。
1章で友人達と朝ごはんを食べてから、塔を出たスティーヴンは、学校に行って、歴史の授業をしているようです。
昨日はうっかりしていましたが、そもそも一章のタイトルの「テレマコス」って何のことだったのでしょう!? 他の章のタイトルも何かの固有名詞なんですよね? そこで、最初の3章分の名前を調べました。
〇各章のタイトルは何を意味している?
第一章 テレマコス
ギリシア神話の人物で、イタケーの王オデュッセウスとペネロペの息子のこと。父オデュッセウスがトロイア戦争に出征して20年、若者に成長したテレマコスは女神アテナに導かれ、父を捜す旅に出る。
第二章 ネストール
ギリシア神話の人物で、メッセーネの都市ピュロスの王で、トロイア戦争におけるギリシア軍の武将の一人。オデュッセウスと共に行動し、後にその息子テレマコスに会って彼の父親の消息を話す。
第三章 プロテウス
海の老人とあだ名されるギリシア神話の海神。ポセイドンの家畜であるアザラシなどの海獣の番人。ナイル川の河口に近いファロス島の海岸に現れ、予言能力がある。変身能力もあるので、彼の予言を聞きたければ、昼寝をしているところを捕えて、たとえ何に変身しても逃さずにいなければならない。
・・・ということで、『ユリシーズ』は、ギリシア神話になぞらえていますよ♪ というジョイスの目くばせを、遅ればせですが、受け取りました。
どうやら第一章では、テレマコス=スティーヴンなんですね。この後、父を探して三千里なのかしら。でも、スティーヴンの父についての記述は無かったような気がする。お母さんについては書いてあったから、テレマコスの母・ペネロペの死に様を確認したほうがいいのかなぁ?
〇ペネロペ:イタケーの王、オデュッセウスの妻。オデュッセウスとの間に息子テレマコスとプトリポルテスをもうけた。貞淑な美女として知られる。長年のオデュッセウスの不在に108人の求婚者が殺到したが、ペネロペは知恵を尽くして彼らを退け、再婚しなかった。帰還したオデュッセウスは乞食に変装して求婚者の一人になりすまし、他の求婚者たちを撃ち殺してから、ペネロピと再会した様子。
こんな貞淑な妻に対して、オデュッセウスさんて、ちょっと意地悪じゃありませんか。帰還できたなら、すぐに会いに行ってやりなさいよ…。
もしかすると、スティーヴンのお父さんについては、たまたま言及されていないだけで、どこかで元気に暮らしていたりしませんか。
そういえば、物語のあっちこっちで、いわゆるイエスに関する父子同一説がささやかれていますけど、このことと関係あるのかな?
〇第二章の感想と粗筋
時刻は9時40分~10時5分
場所はドーキーの学校で、スティーヴンの教室で、歴史の授業が終わりそうです。「ピュロスの最期」の話などをしています。
生徒たちは生意気で全然可愛くないけど、スティーヴンのお話や謎々を聴くのが結構好きなようです。
それなのに、本当は教師なんかやりたくなーい、全部つまらなーい! って思っているスティーヴンの心の声が、ダダ洩れしています。これがいわゆる意識の流れってやつでしょうか?
授業が終わると、次は、でれっとして可愛くないサージャントという生徒のために計算を解いてやります。スティーヴンは数学も得意なのかも。
その後、スティーヴンはディージー校長の書斎で給料を受け取ります。
これで三回目の給料で、3ポンドと12。
校長は、貯金しなさいとたしなめ、昔話をはじめます。それから、口蹄疫のことで新聞に投稿したいとスティーヴンに仲介を頼みます。スティーヴンが文筆家であることは知られているようです。
校長は、スティーヴンが謙虚でないから教師に向かないなんて言います。面と向かって。それから、なぜかトロイ戦争の話。別れ際にアイルランドはユダヤ人を迫害したことの無い国だと力説します。
■気になったことのメモ
・道化がスティーヴンならご主人は誰? マリガン?
・狐が亡くなったおばあちゃんを柊の下に埋める謎々
・アヴェロエスとモーゼズ・マイモニデスは同郷人
アヴェロエス=イブン・ルシュド:アラブ・イスラム世界におけるアリス
・オコンル時代からの三代
・1846年の飢饉
・オレンジ党が連合撤廃を叫ぶ
・オコンルより20年前のフィニアン会
・口蹄疫
・1866年の皇太子の写真
■終わりに
第二章のタイトルである「ネストール」は、スティーヴンの勤め先の校長のようです。だったら、ジョイスはトロイア戦争を、アイルランドでのどの出来事を割り当てるつもりだったのでしょう?
スティーヴンはいつか父親に会えるような手がかりを、校長から貰えたのでしょうか。そういえば、校長からもらったのは給料と、校長の投稿原稿でしたね。
予想:口蹄疫について書かれた校長の投稿を、掲載してくれる新聞社を探して、たらいまわしされるうちに、スティーヴンは見知らぬ老人に助けられます。実はこの老人は、スティーヴンの行方不明だった父親だったのです! なんだか違う気しかしません。
■本日の一冊:『ユリシーズ 1-12』(ジェイムズ ジョイス、柳瀬 尚紀 (翻訳)/河出書房新社)