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【本】『現代日本名詩集大成 10』(鳥見迅彦、会田綱雄、安西均、三好豊一郎、木原孝一、 黒田三郎、田村隆一、吉本隆明、鮎川信夫、井上靖/創元社)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

今日は『現代日本名詩集大成 10』(鳥見迅彦、会田綱雄、安西均、三好豊一郎、木原孝一、 黒田三郎、田村隆一、吉本隆明、鮎川信夫、井上靖/創元社)を読みました。

古くて、ページが醤油のように茶色く変色している、赤い表紙の古い本です。本の後ろを見ると、昭和35年初版の、昭和39年再版 とあり、著者代表の鳥見という人のハンコが推された紙が貼ってあります。
定価は420円ですって。

黒田三郎、鮎川信夫あたりを読もうと思って手に取ったのですが、一番驚いたのが、各詩人の章のはじまりには、小伝が書かれていたことです。
自分の半生を、のびのびと書く詩人もいて、そこだけ読んでいてもとても面白かったので、それぞれ抜粋でご紹介します。

〇木原孝一(1922年生)の小伝より

 ※技師として硫黄島まで送られた戦争の記憶です。

– ゲリラ討伐、日本海溝南端付近の漂流、地熱ヶ原のグラマン、艦砲射撃などは忘れられない戦慄である。椰子の芯、マルハチ、カタツムリなどは飢えのシンボルであった。

グラマンとは米国戦闘機のことのようです。
マルハチも調べたら、常緑性シダの木のことのようです。幹に葉柄の落ちた跡が丸に逆八の字状の模様となって残るので、丸八という和名になったそうです。

〇黒田三郎(1919年生)の小伝より

– 戦前の作品のうち、焼け残ったものをあつめて詩集『失はれた墓碑銘』を編む。戦争直後の作品をあつめた詩集『時代の囚人』はまだ日の目を見ない。

日の目を見ないという言葉が活字になっているところがなんだか愉快です。その後どうなったんでしょうね。

– 三年半まえから中央区(略)4404号に住み、悪名高かった酒を断って一年になる。

あれっ、住所を書いちゃってる! 不安なファンが押し寄せてきたりしないのでしょうか。もっとおおらかな時代だったのかな。

〇吉本隆明(1938年)の小伝より

– 詩を書きはじめたのは十六、七の頃である。はじめて外部の雑誌にものを発表したのは、岡野直七郎主宰の短歌雑誌「竜」で、姉の死について、頼まれてかいた。大学三年の頃と記憶している。


〇鮎川信夫(1920年)の小伝より

– 詩を書き始めるようになってから、父の行き方とは、すべてにおいて反対の方向に自己形成していったようである。父は自由主義を嫌い、ファシズムを礼讃し、最後には新興宗教に凝って終った。
 身内に否定すべきものを失って以来、詩作に衰えを示してきた。一つ一つの詩を書きながら、なにか大きな獲物を包囲してゆく—そういう詩集を、また作りたいものである。


ここだけ読んでも、とてもカッコいいですね。

詩も、カッコいい表現がちょこちょこがあって、ホントはそれをメモしようと思ったのですが、今日はこちら小伝のご紹介までとしておきます。

■本日の一冊:『現代日本名詩集大成 10』(鳥見迅彦、会田綱雄、安西均、三好豊一郎、木原孝一、 黒田三郎、田村隆一、吉本隆明、鮎川信夫、井上靖/創元社)

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