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ふと...
私が今のグループホームで働き始めて8年が過ぎ、赴任する前から入居されていた9名の入居者全て変わりました。
「認知症を発症してからの平均余命は
凡そ8年」
この見解は私の周りでは当たっています。
発症して最期まで在宅で看取られる方は一握りです。多くは施設や病院にて最期を迎えます。
私が勤めるグループホームの9のつの部屋。
1部屋毎にドラマがありました。
ある方は、認知症の進行によるか、はたまた別の病気の苦痛から、気性が荒くなり激しい介護拒否をしていた。
そんなあの方はまるで眠るように旅立った。
ある方は、押さえられない激昂から
噛みつく
蹴る
殴りかかる
そんなあの方の息を引き取る数日前
痩せこけて臥して、もはや意識が朦朧としているのにはっきりと
「ありがとう…」
と聞こえた。
これまで一度も聞いた記憶が無い言葉に思わず、私はびっくりしたと同時に
お別れの時が近いと悟りました。
ある方は言葉を発する機会を失い
かつての声は遠い昔。
言葉は無いが私が手を握ると、確かに軽く手を握り返した…
いずれの方々はもう旅立っています。
今一室空室になっています。
その方が旅立って早10日余り
夜勤中
ほとんどの方々が寝静まっている丑三つ時
巡回後
何気に空室の扉を開くと
そこには火の気が無く寒々しく、ベッドと椅子が一脚だけ置いてあります。
カーテンは明けてあり、外の明かりが窓から差し込む中、壁や天井を眺め他に何も無い部屋で佇むと「ふと」これまでの出来事が甦のです。
入居した日のこと
良く笑ったこと
突然怒られたり
爪を介助中に立てられた傷
今も私の腕に残っています。
私が仕事を終えた数時間後に旅立ちました。
その方とのお別れは出来ず
生前ご自宅への帰宅を待ち望んでいましたが
ご自宅に戻れたのかしら?
その後は分からず
詮索も止めよう。
人の最期は様々
100人居れば100通り
そして主演したドラマも同じ数だけあります
「あなたの人生はどうでしたか?」
「楽しかったですか?」
「逢いたい人に逢えれば良いですね」
人気の無い空室から
確かにそこで暮らしていた彼らの気配を感じるのです。
決して怖くはなく
何だろう「懐かしさ」と言う感覚がしっくり来ます。
また新しい入居者が入ります。
今度の方はどんなドラマを私達に見せてくれるのだろうか?
こうして今まで通り?
新たな日常が過ぎていきます。
旅立った彼らの思い出と共に…
おしまい
今回のアイキャッチはvoice_watanabeさんからお借りしました。
この場を借りて感謝いたします。
今回はここまで
最後まで読んでいただき
ありがとうございます
次の記事で会いましょう。
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