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竹宮アンチの萩尾信者を考察する

週刊少女コミック連載時の『ファラオの墓』

■ 竹宮アンチ「増山さんは原作者。竹宮さんは絵だけ描いていた」

私がnoteのネタ漁場にしている5chの大泉スレに、
こういうレスが投稿されていました。

一般にマンガ作品における原作というと、文章化されたものかネームとして描かれたものを想定するのが普通だから、そういう意味では増山さんがした
働きは(変奏曲を除くと)「原作」とまでは言えないかもしれない

でもジル本での「ファラオの墓」連載時の描写を見ると、
・貴種流離譚で行こう
・悲恋を入れよう。ロミジュリがいい
・そのなかでライバル同士の戦いに持っていく
・最初は王家をつぶされた側の少年の話を描いてきたわけだけど、
 この二人が王様として立っていく状況を描いて、
 ゆくゆくは王様同士の戦いを描く
という話の展開まで増山さんが指示しており、
更に恋愛シーンが苦手な竹宮さんに水野英子さんの「銀の花びら」を読んで恋愛のシーンを勉強させたり、主従関係では「勧進帳」が人気あるからと
舞台を一緒に見に行って取り入れさせたりで、意見を反映なんていうレベルでなく完全に増山さんに依存してるよね
ストーリー作りの主導は増山さんと言っていい

野上氏(※)や小谷野氏も同様に感じたから「ストーリーを提供」
「ストーリーは作る」増山さんと表現したのでしょう

【萩尾望都】大泉スレPart84【竹宮惠子】
https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/1686470845/272

漫画のテーマをどのようにするか、大体の構想をまとめたものが「プロット」です。そして、物語にどのようなエピソードを入れるのか、起承転結を考えながら話の大筋を作っていく作業のことを「シノプシス」と呼びます。
漫画は、このシノプシスを元にして詳細なシナリオを書いていきます。

増山さんは、『ファラオの墓』のプロットとシノプシスの途中までは考えてくれましたが、その続きとシナリオとネームは竹宮さんが考えました。
増山さんが全て考えてくれたわけではありません。
竹宮さんは『少年の名はジルベール(以降『ジル本』)』で「増山さんはアイデアの提供者」と書いています。

ただ、大泉スレのアンチのように「増山さんはストーリー作りの主導を担っていた」「ストーリーを作って提供していた」「竹宮さんは増山さんに完全に依存していた」というと、何も事情を知らない一般の人は「増山さんは竹宮漫画のストーリー制作全般を担当していた」「竹宮さんは絵だけ描いていた」と受け取ります。

ではなぜ、竹宮アンチの萩尾信者は、その説にこだわるのでしょうか?
順を追って説明していきます。

■ 『ファラオの墓』の場合

竹宮さんは原作者について、次のように書いています。

私は過去の経験から、マンガ原作が付くと、その原作者の話に流されてしまう恐れがあると思っていた。アイディアを出してくれたとしても、それを勝手に私が変更してしまったら、その人が傷つくかもしれないし、頻繁に打ち合わせもしなければいけなくなるだろう。

そこで担当の方に「アイディアだけでいいんです。アイディアだけ出してもらうことってできるんですか?」と、聞いてみた。
「そういうのでもいいですよ。相手の拘束時間次第で、編集部が謝礼を出しますから、質問事項をその都度絞っておいてください」とのことだった。
映画やテレビの世界では、脚本家や構成作家らがアイディアを出すブレーンとして活躍していた。名前を出す場合も出さない場合もある。
それこそジャンル別に人材がいる。

現在は、ヒットした連載マンガでは、必ずといっていいほど、こうしたブレーンが付いていて、連載の好調を維持し続けるための努力が払われている。
少年誌でも、 それは増えていると聞く。 単行本が500万部を超えるような作品はもう、作者の都合だけを聞いていられないほどの出版社にとって重要商品なのだった。

通常のアイデア出しは、その役割を担う人へのギャランティで編集部が負担し、クレジットはなしでも構わないのだが、彼女のようなケースはどうしたらいいのか。私も一度はクレジットに加わってほしいと申し出たのだが、彼女は頑としてこれを拒んだ。それによって、マンガ家・竹宮惠子の価値が下がるということを彼女は恐れていた。

この頃はまだ、「原作付きのマンガ家」は、実力や格が一段落ちるというような考え方が一般的だったのだ。ストーリーも作れて、絵も描けるのがマンガ家で、そうでなければ半人前と陰口を言われる時代だった。
実際には多くの作家がブレーンに助けられて仕事をしていたわけだが、どこまでのブレーンなのか、ギャランティがいくらで、どういう取り分なのかといったことは表に出てこない。

マンガ家が他者のアイデアを借りた場合、原案・原作・構成・監修など、仕事内容に応じて、その人のクレジット名を作品に入れることがある。提供された情報量によって扱いが異なるのが普通だ。口頭でのアイデア出しから完全なマンガ原作まで関わり方も様々だが、彼女の作品への関わり方も、その都度違っていて、多くは構成上のアイデア出しであった。
物語の構築を助けてくれる役割だったのだが、増山さんが長い間、作りためた『変奏曲』に関しては、彼女の完全な漫画原作である。ただ「原作」といえる形を示すものがないだけだ。

竹宮惠子『少年の名はジルベール』小学館 P203-207

構成上のアイデア出しというのは、冒頭で引用した5chのレスで「貴種流離譚で行こう」「悲恋を入れよう。ロミジュリがいい」「最初は王家をつぶされた側の少年の話を描いていくわけだけど、この二人が王様として立っていく状況を描いて、ゆくゆくはふたりの戦いを描く」などと箇条書きされている部分が、それに該当します。

■ 増山さんの完全原作『変奏曲』の場合

竹宮惠子/原作・増山法恵『変奏曲』

では、竹宮さんがジル本で「増山さんの完全原作だった」と書いた『変奏曲』はどうだったのでしょうか。
漫画版の『変奏曲』シリーズは1974年9月に発表。小説版の『ヴィレンツ物語』は1988年3月に出版されていて、この2冊を比べてみると分かると思いましたが、私は『ヴィレンツ物語』をまだ読んでいないので、読んだ人の感想が書かれたレスを引用します。

581 :花と名無しさん:2023/05/22(月) 13:26:58.20 ID:nTZMo2gM0
単独の「ヴィレンツ物語」だと、BL要素皆無だよ
エドナンとボブはスペイン革命絡みの写真のフィルムの取引のために
体の関係なんぞ持ってないし
エドナンはピアノの連弾時にウォルフにキスなんかしないし
別コミに三分割で連載した「変奏曲」で、おかしな要素が入った

【萩尾望都】大泉スレPart82【竹宮惠子】
https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/1683809866/581

原作の『ヴィレンツ物語』には『変奏曲』にあった同性愛シーンがないそうです。竹宮さんがジル本で増山さんによる完全原作だと言った『変奏曲』シリーズですら、竹宮さん好みの要素が付加されていたわけです。
アンチがいうように、「竹宮さんが増山さんの原作を作画方面で完全にトレースしていた」というのは嘘だということが分かります。

■ 竹宮さんの株が下がれば、萩尾さんの株が上がる

萩尾信者の竹宮アンチは『竹宮さんの株が下がれば萩尾さんの株が上がる』と考えている節があります。おそらく、彼らは竹宮さんが萩尾さんのイメージを悪くしていると考えていたのでしょう。

5chの20年位前からの萩尾スレや竹宮スレの過去ログを読むと、しばしば、そういうレスを散見します。そして、『一度きり大泉の話』の出版で、それが弾けました。

『竹宮さんの漫画は全て増山さんが原作を書いていた』という説は、ジル本に書かれていたとおりの『原作者付きの漫画家は格が下がる』という昔の人の発想に沿った考えです。アンチもその当時からの人が多いらしく、この説に頑強にこだわり、強弁を続けています。

『竹宮さんの株が下がれば、萩尾さんの株が上がる』と考え、ネットでの印象操作に骨を折る。これが、萩尾信者の竹宮アンチと呼ばれる所以です。

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