【映画レビュー】秀作集結!『指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界』の感想
短編アニメーションを集めた企画です。
『指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界』のざっくりとした感想
『指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界』を観てきました。
新千歳空港国際アニメーション映画祭のフェスティバルディレクターを長らく務めていたことでもおなじみ土居伸彰さんが代表取締役を務めるニューディアーが配給を務める短編アニメーションたちをまとめて上映する企画。ニューディアーの見本市的な側面もありそうです。
2022年12月10日より渋谷ユーロスペースを皮切りに上映をスタートした本作ですが、大阪上陸が2023年1月に入ってからだったので、このタイミングでのレビューとなってしまいました。
一般の映画館で実施される短編アニメーションの企画もそれほど多くないので貴重な機会となっている上、今回上映される作品もしっかり各地のコンペティションで結果を残していたり、結果を残してきた監督の作品ばかりということで、しっかり必見の内容となっています。
上映作品の紹介とレビューを個別にしていきますね。
コントロール・ユア・エモーション
クリス・サリバン監督の最新長編『The Orbit of Minor Satellites(原題)』をニューディアーが日本配給予定ということで本作から、冒頭の一章を短編アニメーションとして、ワールドプレミア上映。
ある精神病患者の女性を中心に、そんな彼女を取り巻く精神医療の環境を紹介していくという内容。その後の展開が気になるところで終わるので、まんまと長編が観たくなる良作。
切り抜いただけじゃなくて、ちゃんとクレジットもあって律儀です。精神医療のいろはという感じで短編だけでもちゃんと楽しめました。
不安な体
アヌシーの短編部門の審査員賞や、オタワのベスト・ノンナラティブ賞などを受賞する結果を残した、水尻自子監督の新作短編。
水尻自子さんといえば、これまでも柔らかな物体たちを描く作品でおなじみだったのですが、ついにぞその形質を脅かす力が加わるとどうなるのかを描いた短編が登場。
気持ち良さと恐怖が混ざり合った感情が同時に込み上げ、タイトル通りなんとも言えない不安な気持ちになる……だけどそれがクセになる秀作です。
マイ・フレンチ・フィルム・フィスティバルの選出作品でもあり、U-NEXTとかでも期間限定で観ることができます。
I’m Late
鬼才という表現が似合う、特徴的なビジュアルでおなじみの冠木佐和子監督の新作はまさかのドキュメンタリー。いろんな人に生理に関するインタビューをしたものに、アニメーションが加わった短編。
冠木監督が感動超大作を作ると聞いて、「本当かよ」って思ったら、クライマックスは出産までをも描いて、実際初見時は最後の方でボロボロに泣いてしまった傑作。参りました。
ひろしまアニメーションシーズンをはじめ、すでに何度か観ていた作品だったのですが、今回の企画での鑑賞時は、結末を知っている分、内容よりも線の面白さに惹かれる体験になりました。アニメーションが各所で動き回るので、ドキュメンタリーと言いつつ、何度観ても目が楽しいですね。
半島の鳥
オタワ国際アニメーション映画祭で短編グランプリを受賞するなど、こちらもしっかり大きな結果を残している和田淳監督の新作短編。ある半島の村で、子どもが大人になるための通過儀礼を練習する姿を描いた作品。
こちらは観るチャンスを何度も逃していて一本で、待望の鑑賞だったのですが、これが悩ましい一本。
笑うとこなのか、恐怖を感じるとこなのか、観ていて受け取り方に悩むような居心地の悪さを強く感じたり。どう受け取っても良いんだろうけど、わからなすぎると気持ち悪さが生まれますね。
そもそも公式サイトのイントロダクション(↓)を読んでやっと、「あ、大人になるための通過儀礼なんだ」とか本作の筋が見えてきました。
ETERNITY
少年の瞳に映る“永遠”を、トクマルシューゴさんの音楽に合わせて描いていく20分の中編作品。監督は抽象アニメーション作品で知られる水江未来氏
。
観たことがないぐらいの量で画面上の無数の物体が個々に動き続ける凄まじい映像ドラッグ作品となっている怪作にして快作!その細胞は生命の循環から広大な宇宙の歴史まで感じさせてくれます。4D上映と相性良さそうな映像も楽しいです。
明らかに西遊記キャラが混ざってたけど、新作長編(↓)からのカメオ出演ですかね?
和田淳監督の舞台挨拶レポ
大阪の初日である1月29日(土)のシネヌーヴォさんの上映回には、『半島の鳥』の和田淳監督が登壇。
上映前の登壇だったので、あまり踏み込んだことは話されなかったのですが、本作がニューディアーという会社の配給作品を集めた作品であることや、自身が『半島の鳥』ほど長尺の作品を作るのは今回が初めてだといったことを語ってくれました。
意外だったのは、今回のプログラムの鑑賞は今回が初だったとのことで、ちょっとびっくり。
せっかくなので、上映後に色々聞けたら……と思ったのですが、ちょっとタイミング的に疲れていて、なんとすでに映画祭などで観ていた『不安な体』や『I’m Late』を見終わったぐらいで力尽きて寝てしまうという失態。
さすがにそんな状態だったので、合わせる顔がない、とその日はいそいそと退散。日を改めて2周目の鑑賞でやっとちゃんと完走してきました。
今なら色々聞きたいこととかあるので、いずれお会いできる日が来たらいいなぁ、と和田監督に思いを馳せております。
それにしても酷いな、私。
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水江未来監督といえば『劇場版オトッペ』も。(↓)
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