【映画レビュー】随所、随所が匠のお仕事すぎて気持ちいー!『長ぐつをはいたネコと9つの命』の感想
新潟国際アニメーション映画祭の真っ最中に公開となってしまった『長ぐつをはいたネコと9つの命』。
まさか映画祭と被ってしまうなんてしょうがない……!
こうなったら映画祭が終わるのを待つしかない……!
………。
我慢できず新潟のユナイテッドシネマに来ちゃった!(徒歩5km)
というわけで、初日こそ逃しましたが、公開日翌日の土曜日の夜に『長ぐつをはいたネコと9つの命』を観てきましたよ!!
『長ぐつをはいたネコと9つの命』のざっくりとした感想
ドリームワークスアニメーション最新作の『長ぐつをはいたネコ』の続編が日本上陸!アニメーションスタイルを新たに、残り一つとなった命のストックを得るべく「願い星」を探す旅に出る……!10年以上の時を経てプスが帰ってきます。
監督は『クルードさんちのあたらしい冒険』のジョエル・クロフォードさん、そして日本語吹替版ではプス役を竹中直人さんからバトンタッチして山本耕史さんが務めます。
残念ながらアカデミー賞は逃しましたが、アニー賞ではベストストーリーボード賞とベスト編集賞を受賞しています。おめでとうございます。
で、そんな本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……
う〜ん、お見事。(恍惚)
この時代にプスを使うなら......
あの狼のベタなかっこよさ......
3びきのくまへのドラマの乗せ方......
随所、随所が徹底的に上手い!
ルックの格好良さと動きの気持ちよさも相まって、楽しくて幸せすぎて泣いちゃった。ありがとう。ありがとう。
作中の内容など、もっと踏み込んだ感想を書いていきます。
『長ぐつをはいたネコと9つの命』のもっと踏み込んだ感想
■ 笑えて泣けてトキメける!ドリワ節は健在だ!
私は本作を制作したドリームワークス・アニメーションという会社が大好きなのです。
ドリームワークス作品の何が好きかといえば、たくさん笑わせて、その上でさらに泣かせて、さらには心を抉ってきたり、痛烈に重い何かを残してくれたりと、一本の映画でたくさんの体験を残してくれるところが好きなんですね。
で、今回の『長ぐつをはいたネコと9つの命』はしっかりそれを踏襲した映画だったので、もうたまんないです。
リズミカルでとことん強気でマッチョイズムなプス。その軽快さをフックに、実はそんなプスにだって恐怖があり「無理していた」部分があるというドラマを展開していき、そんなプスを新たな仲間にかつての恋仲のロマンスが支え、ついに宿敵だった“死”という恐怖に向かい合う……
う〜ん、上手い。
結構トコトンふざけまくってるんだけど、ことプスの「死」を舐めた態度に対しては許さないぞ、という具合にシリアスになるあの緩急の付け方とか、さすがのメリハリのつけ方が上手いし、すっごく不気味。
(新キャラ・ウルフさんがめっちゃいい仕事をしてくれてるんだ。)
だからこそクライマックスでそれを冒頭の軽快なプスに戻って立ち向かう姿が気持ちいいんだけど、確実に冒頭からはある点において成長している──ベタだけど熱い展開ですよね。
ふざけるとこはふざけまくって、締めるとこ締める。
ドリームワークスも、プスも、ウルフもとてもカッコいい映画でしたわ〜。
思い返してたらまた見たくなってきた。
■ビジュアル面も一級品!しっかり新しい体験だ!
今回の『長ぐつをはいたネコと9つの命』が見事なのはそのストーリーに加えて、ビジュアル面でも「おっ」と驚かせる仕掛けが用意されている点。
一見従来の3DCGのようでもあるのですが、アクションシーンなどではわざとフレームレートを落としてリミテッドアニメーションのようなテイストになるところが面白いです。
『バッドガイズ』も結構近いことやっていたと思うのですが、今作はもっと顕著で、歌舞伎における見得のようにここぞというシーンで一瞬絵が止まるような仕掛けが新鮮。
話の面白さだけでなく、しっかりアニメーションとしての面白さも追求している上に、「おとぎ話」モチーフだからこそ、ページを1ページ1ページ開いているかのような感覚が加わっているのも、狙ったのかわからないですが、作品に合っています。
『スパイダーマン:スパイダーバース』はアメコミを意識しての演出だったわけですが、『長ぐつをはいたネコ』だってルーツとしては“本”なわけですしね。
■『シュレック』シリーズから引き継ぐおとぎ話パロってやっぱ面白い!
そして再発見だと思ったのが、おとぎ話をパロディするという『シュレック』から続くフォーマットがやっぱり面白いということ。
すっかりシリーズの新作が出てこないので忘れてましたが、“パロディ”の面白さみたいなのを改めて再確認させてもらう体験でした。
たとえば「3びきのクマ」のパロディであるゴルディ一家が本作でもすごい良い仕事をしてくれて、実は作中で一番泣かされたのがこの家族のエピソード。
元ネタの童話って、留守のクマの家に勝手にあがりこんだ少女・ゴルディが、子ぐまのために用意されたスープやベッドが「ちょうどいい」と勝手に子ぐまのアイテムを拝借していく……という、やたら子ぐまがかわいそうなだけの話だと思いましたが、まさかこうアレンジしてくるとは!とびっくり。
「ちょうどいい」スープについてもしっかり作中のアクションに取り入れたり、そんな異質なゴルディを受け入れるという非血縁の家族の物語へと置き換える巧さとか、拍手を送りたくなります。
アクション面ですごく楽しかったのは、ヴィランの一角・ジャック・ホーナー。(こちらは元ネタを知らなかったけど「リトル・ジャック・ホーナー」って歌があるのですね。)
毒りんご型の爆弾だったり、ユニコーンの矢だったり、不死鳥の火炎放射器だったりと、おとぎ話武器コレクターぶりも楽しければ、『ピノキオ』みたいな良心のコオロギをツッコミとして入れるのをいいことに、ホーナーにやりたい放題させてくれるところも楽しいです。
ドリームワークスってかつてこそキャラクターデザインがあと一歩、みたいな印象がありましたが、近年は洗練されてホント、全体的なバランスも抜群になりましたよね。洗練された今こそ『シュレック』シリーズをぜひまた、今回のようなスピンオフ的な形で続けて欲しいなぁ。
まとめ
というわけで、しっかり期待通りの素晴らしい映画となっていました。
あえていうなら、懸念していた吹替声優交代の問題は、正直前シリーズを頻繁に見返す程度には好きだったので、違和感は否めませんでした。
キティ役の土屋アンナさんとかキャラクター的にも合ってるし、めちゃくちゃ上手い。……のですが、前作からキャラクターが全然違って見えてしまうのは“声質”の不思議な力ですかね。ここは愛着の部分だし、ローカライズの部分なので、うるさ系のたわ言と思ってスルーしてくれれば良いです。
春休みシーズンでたくさん話題作が上映されていますが、今春の私のイチオシはやはりこの『長ぐつをはいたネコと9つの命』ですよ。
ぜひ劇場に足を運んで、全身で浴びてくれー!
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