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【映画レビュー】可愛く不気味で愛おしい傑作映画『サイコノータス 忘れられたこどもたち』の感想

※この記事は過去にアメーバブログで投稿した記事の再編集版として無料公開としております。
https://ameblo.jp/nejimakikoibumi/entry-12325675703.html


新千歳空港国際アニメーション映画祭で観た作品の感想でございます。

『サイコノータス 忘れられたこどもたち』のざっくりとした感想

『サイコノータス 忘れられたこどもたち』を観てきました。

サイコノータス忘れられたこどもたち
(原題:Psiconautas, los ninos olvidados)
制作年:2015年 / 制作国:スペイン、フランス
監督:アルベルト・バスケス

https://eiga.com/movie/88399/

2015年公開のスペインのアニメーション映画です。
私、この映画の為に、北海道に飛んだと言っても過言ではない程気になっていた作品でございます。なんといっても、キャラクターデザインや雰囲気がたまらないんですよね。

観てきた感想をざっくり一言で言うと

傑作

でございました。シンプルに。

もうちょっと詳しい感想を書いていきます。


『サイコノータス 忘れられたこどもたち』のもっと踏み込んだ感想


■可愛い見た目に騙されるなかれ!苦めのダークファンタジー

本作、思った以上に“苦味”のある作品でした。

観る前はキャラクターデザインやビジュアルの雰囲気から『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』的なものをイメージしていたのですが、その実、子供から大人まで楽しめる作品とは程遠いバランスのダークファンタジー。

墓石が立ち並ぶ荒廃した島、
血を吐いたり薬漬けになっている少年、
窃盗までして島を出ようとする子供たち、
親にあげるための悪い薬のために仕事をする青年、
どいつもこいつも暗く厳しい状況が描かれている映画だったのです。

で、そーんなところがまさに大好き。

かなり私のツボです。

なんなら『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』はちょっと子供向けすぎるなぁぐらいに思っていたぐらいのクチなので、これぐらい大人な物語になってくれてた方が嬉しかったです。

まんまドラッグ描写やエグイ死に方するキャラクターも居るんで子供には刺激強めです。



■ストーリーも難解?

また、本作はストーリーも一筋縄ではいかないやや難解な部分をはらんだ作品になっています。

要所、要所で説明がないことが多いのです

主人公のバードボーイが葛藤しているアレは結局なんだったのか、とか、ヒロインのネズミの女の子ディンキとバードボーイがどういう関係を経てきたのか、とか、中盤に登場するクモ型のあいつが何なのか、とか、あれやこれや……じっくり説明しないうえに明確になんなのかを明かす展開もなく進めていきがちの作品となっています。

そういう点でも、子供にはちょっと難しい大人向けな作品となっています。

人によってラストの受け取り方も変わってきそう。私は非常にポジティブに受け取れたのですが。

私自身もまだ一回鑑賞しただけでは100%どころか半分以上理解している自信もないぐらいです。そこの理解を深めていくだけでも、この映画が迎える結末の見え方も大きく変わっていくんだろうな、という確信だけは持っておりまして、紐解きがいのある物語なのは間違いないと思います。


■キャラクターデザインが秀逸!

そしてやっぱりポスタービジュアルやスクリーンショットなどで見た通り、ビジュアルのセンスがハンパなく良かったですね。

主人公のバードボーイは、二頭身でへろへろくんみたいなシルエットながら、目が死んでドクロのようになっており、なぜかスーツ姿。この格好で煙草を吸ったりしているんだから、超クール。不気味+可愛い+カッコいいという、奇跡のハイブリットに成功しています。

また、ヒロインのディンキも魅力的。同じく二頭身の体型でありながら、ちょっと胸が豊満だったり、ブラジャーを着けるシーンが挟まれていたりと、あの見た目で上手いことアダルティックな雰囲気を持たせているところが見事です。

「不気味」で「怪しく」、「大人」な雰囲気……そしてそれを繋ぎとめるように「可愛い」が使われている絶妙なビジュアルデザイン……もはや発明なんじゃないかという域に感じております。


まとめ

万人に薦められるほどではないぐらいに癖はあるんですが、ハマる人には“ビシーッ!”と思いっきりハマる映画となっておりますので、気になっている人は是非、見た方が良い映画です。

かなり私、大好きです!

そして、新千歳空港国際アニメーション映画祭が終わった後に早くも「サイコノータス忘れられたこどもたち」の上映が再び実施されました。

2018年1月13日(土)〜26日(金)にかけて、渋谷/シアター・イメージフォーラムにて『GEORAMA2017-18PRESENTS ワールドアニメーション 長編アニメーションの新しい景色』と題した特集上映が実施され、このプログラムの一つに「サイコノータス忘れられたこどもたち」の上映も含まれていました。

このまま勢いをつけて全国上映になるかと思ったのですが……

©︎広江礼威/BLACK LAGOON/小学館

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