【映画レビュー】なんでこんなことに!?問題作『映画クレヨンしんちゃんオラたちの恐竜日記』
結構期待して行ったので残念でした。
『映画クレヨンしんちゃんオラたちの恐竜日記』のざっくりとした感想
『映画クレヨンしんちゃんオラたちの恐竜日記』を観てきました。
夏休みシーズンに帰ってきたクレヨンしんちゃんは今年で劇場版31作目。
いろんな映画ジャンルを踏襲してきましたが、今年は『ジュラシック・パーク』ライクな設定の恐竜映画に挑戦。
監督にはTVアニメ『デュエル・マスターズ』シリーズや2020年頃からしんちゃんのTVアニメシリーズにも演出で参加されていました佐々木忍さんがしんちゃん映画を初監督。
そのあたりは予習記事でも書いてます。
しんちゃん映画大好きなので楽しみにしていたのですが、
本作観てきた感想をざっくり一言で言うと……
結構、問題作。
といった感じ。
話がうまくまとまってなければ、ギャグも話のテンポも悪め。
そこに輪をかけてあざとい泣かせ演出が加わるので、
基本的に“うまくない”
という印象が強い映画でした。
ネタバレを含むもっと踏み込んだ感想を書いていきます。
『映画クレヨンしんちゃんオラたちの恐竜日記』のもっと踏み込んだ感想
■かなり散らかったストーリー!テンポも悪いから余計ひどい!
本作、しんちゃんたちカスカベ防衛隊とシロが恐竜のナナに出会って、楽しいことであったり、世知辛さであったり、命の尊さを学んで成長するひと夏の経験を経る映画……なんだけど、まぁ散らかってる。
ナナの親となったしんちゃんたちと対比の関係にあるビリー。
そしてそのビリーの父親であるバブル・オドロキー。
このしんちゃん達・ビルー・バブルの三者で、“親”のあるべき姿、みたいなことを描きたいのだろうけど、わかりやすい対称性もなければ、そもそもしんちゃんたちとナナの関係性は親というよりも友達という感じで見せ方も上手くない。
さらにうるさいことをいえば、そもそも人間を育てるのと動物を育てることでも「注意をすること」ってけっこう違うわけでして。犬とか猫でも牙や爪を持っていて、言葉も基本通じない動物相手の育ての親になることって人間を育てることとはかなり違うものだと思うわけで。
根本的にイグアナだと思ってるし、あげて良いのかもわからないバナナばかり食べさせているしんちゃんたちより、恐竜としての生態を理解しているビリーにだって親としての必要なもの持ってるはずなのになぁ……なんてことをモヤモヤ思いましたよ。
しかもここにシロという特殊なポジションが居るのがさらにややこしい。
育ての親役でもあり、野原家のペットの先輩のようなポジションだったりと、このシロの存在がこの映画のどういうポジションなのかをより混乱させてくる。しんちゃんのドラマなのか、シロのドラマなのかみたいなところが錯綜してしまって混乱に拍車をかけます。
こんな状態なので、
「バブル・オドロキーがどうして闇落ちしてしまったのか?」
「ひろしが親としてしんのすけとどう向き合ってるのか?」
とかいろんな描写を入れてくれてるのだけど、全然要素として頭に残ってこない。
しかも、輪をかけて混乱していくのが、しんちゃん映画なのでギャグ要素が入ってくるのだけど、これがまたテンポが悪くて最悪。
偽恐竜たちとかキャラクターとしては面白いのだけど割とシリアスになってきて盛り上がってきたところに「ここで入れる?」っていうようなタイミングでグダグダやるのがけっこう最悪。
今作では「LOVEマシーン」をフィーチャーしてマサオくんが恐竜とダンスをするシーンがあるのだけど、この場面はかなり顕著で、全く踊る理由がない上にそんなことしてる場合じゃないのにやたら長いし、そこまでの勢いを殺してしまう悪手っぷり。
やっぱり10分ない短編アニメーションでギャグをやるのと、長編アニメーションの中でギャグをやるのは違う感覚が必要なんですかね。
そんな感じで、ひたすら上手くない映画でした。
■泣かせ演出があざとすぎるのも辛い!
そんな整理がついていない状態で
ナナの犠牲話をやるのがまたきまりが悪い。
この映画では最後にナナがしんちゃんを助けるために犠牲となって、「死んでしまう」のだけど、話の都合のために事故が起きて死んじゃうだけなので、泣くに泣けない。
しかも「泣くとこでーす」って感じの絵と音楽を流してくるので、あまりにも涙へのガイドが過ぎるのが、さらにゲスい。
親しかった存在が亡くなって、しんのすけが涙して成長するみたいな話は『ヘンダーランド』とか『戦国大合戦』で散々やってきてる上で、改めて“同じこと”をやるのに、一番ヘタなのを見せられたのがかなり残念。
暴走した状態のナナが窮地にしんのすけやシロと過ごした日々を思い出して、正気に帰ってしんのすけを庇う──とかにするだけでも見え方も全然違うと思うのに、もはや泣くとしても「観客を泣かせるためだけに死なされたナナがかわいそう」という意味で泣けるよ。
■恐竜描写だけは見応えあり!
唯一、手放しで褒められる「良い」ところがあります。
それが恐竜描写。
今回の映画ではナナ以外の恐竜はリアル志向のデザインで描かれています。
その種類や見せ方はしっかり恐竜映画をやろうという志も見えるし、今だと3DCGで恐竜を見せる例が多い中で全て手描きアニメにしようという姿勢も評価すべきところです。
全体としては少ないけれども恐竜同士が対決する様子などの迫力は素晴らしく、紛れもなく本作は「恐竜映画だった」と言えるでしょう!
ちなみにクレヨンしんちゃんオラたちの恐竜日記パンフレットは見開きの恐竜図鑑ページと16ページの恐竜設定画集にこだわりが見えて良いです。
パンフレットは他にもインタビュー寄りの内容で割とキッズよりは上の年齢層向けになっています。
真鍋真先生のすごい真面目なタイトルのコラムも載ってます。熱いな。
まとめ
という感じで、正直今年のしんちゃんは残念な出来でした。
大人も楽しめるコンテンツみたいな立ち位置ではあるけども、さすがに今年は厳しいと思います。
でも私が行った回ではキッズの笑い声も聞こえたし、「防衛隊ファイヤー」のかけ声のシーンで声もあがってたし(これ初体験だよ)、最後は泣いてる声も聞こえました。
キッズたちにとって良い思い出になったならそれはそれで良かったのかもな。
ちなみに来年のしんちゃん映画の予告はサプライズ!
意外な映画ジャンルに挑戦してくれるようです。
公式サイト
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