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9月のインコ🦜たち

⬛︎意義深き5試合。勝点以上の価値ある経験

 日本球界が誇る名手鈴木一郎氏の、この名言はよく知られている。彼の言わんとするところが、スポーツの分野のみならず、ビジネスにしろ学問にしろ、人間の営為において普遍的に確かであることは、何らかの形で社会生活を営んでいる人には大なり小なり実感を伴って理解されることだろう。

 とは言え、これを続けるのは思いの外難しい。「積」むことは心がけ次第で容易だが、その「積」んだものを「重ね」ていくことに困難が伴うからだ。もう少し踏み込むならば「積」んだものが「重」なるには、下層に「積」まれた要素が、根雪のようにしっかりと残って上層を支える礎になっている必要がある。底のない容器に何某かを注いでいっても、それらは注がれたそばから虚に落ちていくものだ。

 この「積み重ね」がうまく進んでいる感触を、客観的に説明することは難しい。ましてそれが、ラ・リーガの昇格組にして、9節終了時点で順位もたかだか14位、バルセロナを本拠地としながら、世界的なメガクラブとしての地位を確立しているお隣さんの陰で慎ましく暮らすアンダードッグであるRCDエスパニョール(以下"RCDE"と略記)の戦い方に関するものであれば尚のこと、具体的なイメージを共有し、得心してくれるのは相当に少数〜ありがたいことに筆者のSNSをフォローしてくれている数名の方々くらい〜だろう。

 だが、アンダー「ドッグ」だが、愛称はズバリ"Los Pericos(=インコ🦜)"であるRCDEの試合を定点観測している人なら、彼らがリーグ戦の1/4を消化する過程で、今後のリーグ戦を戦い抜くために必要な基礎を築いたうえで、さらに少しずつ武器を上乗せするプロセス、すなわち、基礎固めの次の段階に立っていることを感じていることだろう。殊に、マノロ・ゴンサレス監督が「最高」と評した直近のマジョルカ戦を振り返るときに筆者が感じるのは、単にその試合の出来がよかったという単発的な好感触以上に、より大きな未知の可能性に対する胸の高鳴りである。

 以下、RCDEにとっての「基礎」が何であり、さらに上乗せされようとしている(が、できるとは限らない)「武器」が何なのかの説明を、5~10節の5試合の流れの概観とともに試みる。なお、その過程で当然、対戦相手の特徴についても触れるが、当該クラブの全試合までは流石に定点観測しているわけではないため、それらがあくまで1試合に限った印象に過ぎない場合があること、および、それゆえに、的確でない評価が混ざる可能性があることを、前もってお断りしておく。

⬛︎三重の壁内の平安。しかし安住は禁物

 まず、この5試合の結果を列記する。

 第5節 アラベス(H)3-2○
 第6節 マドリー(A)1-4●
 第7節 ビジャレアル(H)1-2●
 第8節 ベティス(A)0-1●
 第9節 マジョルカ(H)2-1○

 第4節、ホームでのラージョ戦に続くアラベス戦の勝利で連勝するも、続く3戦で連敗。マジョルカ戦も60分以降は上位につける相手に押し込まれる展開であった。それでもなお、前述したように、チーム状況に対して前向きな気持ちが先行するのは、負けないための守備の構造に安心感があるからだ。3連敗した試合でもそれは然りで、勝点を拾える可能性は十分に感じ取れた。

 構造そのものは至ってシンプルだ。中締め型のブロック形成からボールをサイドに逃したのち、4-4ブロックの構成員の各々が下図のようにポジショニングする。

RCDEの強み、自陣深くでの非保持状態の配置。スタメンは直近マジョルカ戦に則る

 第6節マドリー戦の前半20分過ぎまでを除く全ての試合/時間帯でRCDEは4バックを採用しており、構成人員に依らずこの構造は不動である。そのマドリー戦を除けば、ハーフスペースで直接ドリブルを仕掛けられるような機会は少なく、しっかりとサイドへの誘導と、この構造に敵を嵌め込む意図を組織的に表現できている。

 22-23シーズンの終盤まで続いたディエゴ・マルティネス政権の末期と、それに続くルイス・ガルシア政権期にかけて続いた、マイナス方向のグラウンダークロスから子供じみた被シュートの数を積み上げた悪夢の時期を知るファンにしてみれば、ゴール前の二重の壁と、スペイン代表入りが実しやかに語られるようになったGKジョアン・ガルシアによって築かれる三重の壁の安定度は、呪わしい記憶を塗り替えるに十分。縦にも横にも大きく、厚みもあるガルシアが身体を持て余すことなく操作することで繰り出されるセーブは確かに鮮やかだが、こちら側のポジショニングが敵のやり方に依らず構造的に安定していることで、放たれたシュートのコースが制限されていることも実は大きい。

 もちろん、全てを手放しで称賛できるわけでは無い。ミドルプレス実行時の、前線の選手たちの動きの量と範囲については改善の余地がある。CFアレホ・ベリスは細かなポジション修正に滞りが見られる。セカンドトップのハビ・プアドがその分動いているが限界はあり、敵にインサイドMFのポジション移動やCBからの縦パスに対するレイオフを繰り返されると、当初はプレイを規制できていたCBやCMFにフリーな状態でボールが戻ることが屡々ある。こればかりは人数比の問題でもあるので許容するしか無いものの、ビジャレアルはサイドからハーフスペースに差し込むパスの精度が高いので、RCDEが三重の壁を築く前に中盤ラインの足を止めることに成功していた(なお、この試合では、クラールがアレックス・バエナという特定の「人」の位置をかなり意識しているようにも見えた)。この現象を防ぐポジショニングと動きの量では、プレッシングを重視するエウゼビオ・ディ・フランチェスコ監督麾下のフロジノーネで先期を過ごしたワリド・シェディラが優位だが、彼は彼で、頑健そうな体格が与えるイメージに反してポストワークに難があるので、文句なしの一番手とは評し難いのが現実だ。

 ただ、このサイド攻撃に対する堅牢さが、とりわけ、壁自体を物理的に破壊する理不尽な武器を持たない敵、つまりは同格のクラブに対する負けにくさをもたらしていることは強調しておきたい。これが先に述べた「基礎」である。そして、勝点を稼ぐためにはこの「基礎」に、ボールを前進させ、ゴールに向かうための「武器」が上乗せされていることが必要だ。

 まず、第一の「武器」は、ゴール前で耐え忍んでからの速攻である。アラベス戦での3得点中2得点は押し込んだ状態で挙げたものだが、どの試合においても、好機の多くがロングカウンターから生まれていることは衆目の一致するところだろう。シェディラにイルヴァン・カルドナら新加入の選手はスプリントのスピードに特長があり、とりわけ後者の加速力は凄まじい。プアドや右WGのジョフレ・カレーラスも「ボールを持つと速い」タイプ。ロングカウンターが現有戦力に適した手法であることは間違い無い。

 ただ、筆者がゴンサレス監督の慧眼に感じ入ったのは、むしろ、アラベス戦以降のプロセスを確認してからだ。大陸から離れた小島に三重の壁を築き、その壁の中に囲い込んだ民衆の記憶を改竄し、外敵に侵害されない世界を「楽園」と称したどこかの王様と異なり、RCDEのゴール前に三重の壁を築き、ファンたちの記憶を鮮やかに塗り替えたゴンサレス王は、ローブロック+ロングカウンターというやり方に安住しようとはしていないように見える。

 ラージョ戦にしろアラベス戦にしろ、勝利したとはいえ、その内実は、ロングカウンターを繰り出し合う、所謂「殴り合い」。つまり、こちらが倒れるリスクも内包されていた。手数をかけない前進は、味方に適切にポジショニングするだけの時間を与えない。速攻が潰えた場合、選手たちは、同じ距離を急いで戻っては消耗し、疲弊していく。それは、前述した三重の壁の堅牢性を損なわせる。壁を作る時間の不足、集中力の欠如による飛んできたボールへの反応の遅れなどをもたらすからだ。ことに、この時期のRCDEは、ミドルゾーンでの対人強度を、専らアレックス・クラールの個人能力に依拠していた。自然、速攻の起点となるのは彼。彼がボールを奪い、ボールを運び、そして彼が戻れないことで危険なスペースががっぽりと空く現象も、確かに生じていたのだ。

⬛︎ロサーノの信頼回復に見る指揮官の決意

 この現象を問題視したのか否かは定かでないが、続くマドリー戦にて、指揮官は少々意外な策を採った。開幕戦での低調ぶりに起因して序列を落としていたクラブ生え抜きの背番号10、プレーメーカーのポル・ロサーノをスタメン起用したのだ。前段で述べた「理不尽な武器」を多数携えるリーグ王者との対戦では、終始、敵の脅威に晒されることを覚悟しなければならない。これまでの試合で、強度上の不安を露呈した彼で対応できるのか?スタメン表を見た筆者は不安を覚えた

 しかし、それは杞憂に終わった。試合開始から10分しないうちに警告を受けたことはマイナスだったが、ロサーノは確かな戦術的裏付けのもとで持ち味を発揮した。例えば、RCDEのゴールキックからプレイが再開されるとき、ロサーノに対応していたのはベリンガムだった。3トップ+ベリンガムがこちらのPA近くまで引き付けられ、尚且つアンカーを務めたバルベルデが中央の立ち位置を保っていたことで、カレーラスやプアドが動き回るスペースが確保され、そこでモドリッチとの競争に持ち込むことができるようになる。

マドリー戦の前半、よく見られたシーン

 そして、20分の4バックへの変更(右WBのアルバロ・テヘロを右SHにシフト)後、より効率的にサイドへの誘導ができるようになると、サイドから差し込まれるパスをカットしたロサーノが即座に前線のスペースへ放り込むことができるようになっていく。自陣でのミスに起因して貴重なリードをすぐに失ってからの力負けという、負け方自体は当然悔やまれた。しかし、もし指揮官が、前節の胸をすく快勝の裏で起きていた現象から、ロングカウンター頼みになることで増大するリスクを問題視し、前進の手法を改善しようと意図し、尚且つ、それが綿密な分析のもとに判断されたのだとすれば、それは彼の誠実さを示してはいまいか。

 RCDEにとって幸いだったのは、続く相手のビジャレアルもまた、ハイプレス志向ではなく、ミドルプレス重視のプランで臨んできたことだ。この試合では、右SBのオマル・エル・ヒラリを後衛に残す3バック+その前の2名のCMFによるボール保持安定化へのリトライがなされた。お世辞にも、これが効果的に作用したとは言い難い。ビジャレアルが2トップを敷いていたので、ロサーノが2トップの脇に出るタイミングと、2トップの間に居残っているクラールとの間で呼吸を合わせてパス交換ができれば最良だったが、そうはならなかった。そして、エル・ヒラリの運びに対しては敵の左SHアレックス・バエナが迅速にアプローチしてこれを封じる。大外でボールを押しつけられたテヘロに個人での局面打開は望めない。後半からはカレーラスを右に戻し、初出場となるナジ・ウニュバルを投入してサイドでのボール保持力を高める方針に妥協することになった。

ビジャレアル戦、意図は分かったが奏功しなかった3-2のビルドアップ

 これに続く、80分までを耐え忍びながら屈したアウェイのベティス戦では、セカンドトップに配されていたプアドを左WGに置き、中盤の中央をクラール、ロサーノ、そしてホセ・グラヘラで組む4-1-4-1が試行された。この試合で意識されていたのは、グラヘラとロサーノが上下左右に距離を保つこと。左側では、ロサーノがグラヘラの左前に立ち、ベティスの右SHを絞らせることで、左SBカルロス・ロメロに時間と空間の余裕を与え、インサイドへの侵入の足掛かりを作った。前節のロサーノ+クラールの関係性の問題に対して、早速回答を出したのだ。プアドも左外に張るだけでなく、内に入ってボールの予備的な預けどころとして振る舞った。逆の右側では、クラールが専ら右大外に張るカレーラスをサポートすべく、内側から飛び出す。図示は省略するが、後半途中から投入されたカルドナが平素とは異なりCFに入り、精力的なランニングを繰り返したことも目を引いた。

アウェイながら積極的な試合運びが好印象だったベティス戦では、
グラヘラとロサーノの距離と角度が調整されることで、安定したボール運びが可能に

 さらに、このベティス戦では、プレッシングの実行に際してクラールがトップ下に上がる4-2-3-1への変形も実践された。1トップにシェディラが配されたことも手伝い、パスコースの規制がより効きやすくなっていたのだが、これらの相乗効果により、ミドルプレスだけでなく、開幕直後に失敗したハイプレスへの移行も可能になった。

 残り10分での失点により敗れたものの、このベティス戦でのトライは、マジョルカ戦への布石となったと評せよう。マジョルカ戦では、このベティス戦の手法が継続され、クラールを前線に近い位置に配したことが、敵陣で長い時間を過ごすことに大きく寄与したからだ。マジョルカが、陣地を強引に回復するための手段=スピード/パワー型のウィンガーを有していなかったことが好適に作用したことも確かだが、気鋭のセントラルMFサム・コスタと、スピード溢れる左SBのフアン・モヒカがコンビを組む左サイドに、クラールに加えカレーラスも適宜加勢させることで、パスの質を落とさせることに成功した。クラールは中央に居残るマスカレルに加え、左側(RCDEにとっての右側)で自由度高く動くコスタの周辺にも顔を出し続けるなど、驚異的な仕事ぶりを披露した。

マジョルカ戦。初期配置はこうだが…
クラールのアクションによって、概ね上図のように変形することでハイプレスの効く状態を維持

 もちろん、このクラールの起用がハマったのは、前述の、ベリスorシェディラ+プアドというペアがクラールほどの運動量と対人強度を保証できないことの裏返しでもあり、そのぶん低い位置に彼の対人能力を保険として置いておけないことも意味する。また、実際に得点に結実しているのはロングカウンターであり、ボールの動かし方そのものは形になってきているとはいえ、敵を崩し切るレベルに至っていないことも確かだ。とはいえ、第一の武器としてロングカウンターという手段を保持しつつも、それへの偏重により、負けにくさの源泉たる「基礎」の損壊を避けるために、「武器」の種類を増やさんとするトライそのものを、しかも、その試みに、前の試合での問題点の改善が含まれていることを、大いに評価したい。

⬛︎巨人たちに「威厳ある死に方」を見せられるか

 客観的に説明が可能な負けにくさの「構造」に加え、主観的な印象として、RCDEではこの安定度ゆえに指揮官への信頼も高まっているように見え、全体的に一体感を感じさせる。この状態は、上記のような種々のトライを繰り返すだけの時間的余裕をもたらす。折しも、主将であり最多得点者であるプアドが、ベティス戦で負傷した(早期復帰の情報もある)ことから、手持ちの武器の組み合わせ方を練り続ける必要が、RCDEにはある。そのことを前提として、次のAマッチウィークまでの4試合でキーマンになりそうな選手は誰か。

 まずは、エル・ヒラリ。3−2の形態でのビルドアップに際し、ボール運びの先鋒になることが彼は多い。同サイドでタッチライン際に広がるカレーラスにボールが渡ってからのインナーラップにこそ積極的な彼だが、ビルドアップの初期段階で、もう一歩深くボールを運べれば、ロサーノとグラヘラに余裕が生まれ、そのパス能力がより活きる。また、カルドナの活かし方は課題であり伸びしろである。前述のように、加速するスプリント能力こそ白眉だが、非保持状態での位置取りに迷いがあり、プレイ判断の遅れが散見されることが、スタメンであっても長時間使われない背景にありそうだ。WG起用は一見妥当に思えるが、同サイドのSBであるカルロス・ロメロの対人能力を踏まえると微妙なところ。ベティス戦のように再前線に置くことで、二列目の選手にスペースを提供する仕事を任せることも一案か。彼の近くにクラールを置いておけば、上記のリスクも軽減できよう。

 以上のように数点の課題があるが、開幕後2節の終了時点と比べると、かなりの安心感を、このチームは呈するようになっている。選手からもゴンサレス監督のコンセプトを称賛する声が挙がっており、チームにお仕着せでない一体感が醸成されているように見える。

 とはいえ、非常に薄い選手層で戦っている現実は変わらない。現在の勝点は10(3勝1分5敗)だが、プリメーラ残留が唯一絶対の目標であることを踏まえると、前半戦の残り10試合でも同程度の勝点を稼ぎ出し、後半戦に入る前に20ポイント以上を確保しておきたいところだ。そのうえで、冬の移籍市場では、もうひとりの「クラール」を確保することも必要だろう。

 次回のAマッチウィークまでの4試合の相手は、アトレティック(A)、セビージャ(H)、バルセロナ(A)、そしてバレンシア(H)と強豪ばかり。とりわけ、2つのアウェイゲームの相手は強力だ。バルセロナは言うに及ばないが、アトレティックは各選手のアスリート能力が際立って高く、選手を散開状態でプレイさせても、ランニングスピードとパスの強さと正確さとで力強くボールを前進させることができる。となると、やはりファンたちの力強いサポートが期待できるホームゲームでの勝利にフォーカスすべきだが、セビージャはこの5試合で一気に10ポイントを積み上げているし、順位表ではRCDEの下にいるバレンシアも、アカデミー上がりの若手選手たちの強度漲るプレイは脅威だ。RCDEとしては、ボールを持たされる展開になった場合に、非常に注意深く試合を運ぶ必要があるだろう。

 しかし、現状のRCDEは、各人が順守すべき規律の再現度が少なくともゴール前の守備に関しては非常に高い。敵の攻撃を、予測されたサイド攻撃に誘導したうえで跳ね返すことができていることは、見ている側にも伝わるわけだから、選手たちの中にはもっと強い実感が積み重なっていることだろう。立ち返るべき場所を確立できているチームは、たとえ敗れても、そうそう揺らぐことはないものだ。その点を認めたうえで、やはり楽しみなのは、やはりローカルライバルとのダービーマッチである。

 平安貴族のように、のんびり・はんなりと三重の壁を崩しにかかった白い巨人たちと異なり、ハンジ・フリックがもたらした縦志向の攻撃を、元より標準装備していた精緻さを伴って駆使するバルセロナが、手心をかけることはない。監督の愛称こそ「ハンジ」だが、壁内人類の絶滅を企図するマーレ軍の如く、無慈悲に攻め込んでくるだろう。マルク・カサドやぺドリが壁に楔を打ち込み、ラミン・ヤマルやハフィーニャ、そしてロベルト・レヴァンドフスキが、そのひび割れを穴に変える。若手も多いバルセロナだが、勝者のメンタリティを植え付けられた彼らの振る舞いは良い意味での図々しさを感じさせる。当然、勝つことは難しい。

 ただ、それでも、立ち返る場所を見つけた今のRCDEならば、無様に食われるままには終わらないはずだ。足を食いちぎられても、頬に刃の一撃くらいは入れるだろうし、指揮官も「何の成果も得られませんでした!!」と泣き喚いて、ポストを投げ出したりはしないだろう。望むことは「巨人に負け続けるために生まれてきたのか?」という諦念を吹き飛ばし「威厳ある死に方」を見せてくれること。今のチームなら、負けもただの負けにはならないという確信があるし、あわよくば…という期待もできる。マドリーに、ビジャレアルに、そしてベティスに負けても、このチームは知恵を絞って何がしかを試み、その成果を少しずつ積み上げてきたのだから。

 今期一度目のデルビ・バルセロニは、現地時間11月3日(日)16時15分に開始される。幸運なことに、日本時間での開催日となる4日(月)は祝日だ。ちょっといいワインを準備しつつ、この日までに、チームがどの程度変わっているだろうか…と、期待しつつ待つことができる。そしてそれは、案外どのチームにも等しく許されるわけでもない幸運なのだろう。





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