私の初恋はたぶん、中学生のとき。
恥ずかしながら3年間まるまるひとりの男の子のことが好きだった。
小学校を卒業して中学校で初めて出会ったその人とは、
お互い同じ行に苗字の頭文字があったから出席番号が近く、席が隣で始まった新学期。
なにがって、完全に顔が可愛くて好きだった。
それ以外は、たぶんかなり変わった子だったと思う。
背が小さかった。そのせいか男の子からも女の子からも可愛がられて常に周りには誰かがいるような子だった。なぜか目が離せなかった。
その子はサッカー部、私は吹奏楽部。
パート練習はいつもグラウンド側の学習室を確保し、必ず窓際を陣取り、グラウンドで練習してるサッカー部たちを見下ろしながら楽器を吹いてた。
雨が降れば運動場使う系の部活は階段走ったり廊下で筋トレしたりするでしょ。その時はわざと廊下に譜面台を立てて楽器を練習してた。
なんかとにかく見て欲しかったんだと思う。
そんな放課後を繰り返す3年間。
時々向こうから話しかけてくる以外は、恥ずかしくて自分から話しかけるなんて到底ムリで、
いやぁもう姿形を見れたらいいし目が合えばお腹いっぱいって感じだったのでそれでよかった。
あの頃はそれだけで毎日楽しかったし幸せだった。
告白とか滅相もありゃせん。全てに恥ずかしさが勝つ。とにかく恥ずかしいんですわ。
恥ずかしくて仲良しの友達の誰にもその子が好きだとこぼしたこともなかった。
好きな人〜?いない!を通していた3年間。
理科の授業、校庭にあるレモンの木を見に行った日、先生が摘んだレモンの葉っぱをいつまでも鼻に引っ付けて嗅いでいた彼を今でも忘れない。
2年生になりクラスが分かれた。1日1回姿を見かけられたらそれで今日は満足ハピハピラッキー☆なのは全くブレなかった。
3年生でもクラスは分かれた。思い続けるのは1年生の頃から全く変わってなかった。
私は部活を続けたかったから、他の誰も選んでない吹奏楽が有名な高校を一人で受験して合格した。
彼がどこの高校を受けたのか、知りたかったけど誰にも聞けず、
メールアドレスも聞けず、結局卒業の日が来てしまった。
卒業後地元で見かけたことも一度もなく、成人式にも来てなかったし、
今その彼がどうしてるのかなんて私は一切知らないけれど、
3年間健気に思い続けたあの気持ちともどかしさは、大人になった今でも忘れることはない。