料理は発見 … 潮かつお+α
下田の帰り西伊豆町の田子に寄り、カネサ鰹節商店*で潮かつお(=シオカツオ、塩鰹)とその他を購入しました。潮かつおはあまり知られてないようですが、田子は日本で唯一の産地です。(が、田子でも作っている所は数軒しか残っていません。)
写真でも分かると思いますが、通常の鰹節より生っぽいです。乾燥して作る塩蔵品ですが、包丁で切れるほど身は柔らかで塩気が強いのが特徴です。
潮かつおは料理にあれこれ使え、台所でするミニ実験のようで面白くも美味しい。材料がカツオと塩だけなので、食べて安心で応用もきくのでしょう。食いしん坊の方には、お勧めの食材。我が家のメニューをご紹介します。
左から潮かつお、カツオの塩辛(カツオの内臓)、鰹節
*カネサ鰹節商店 https://katsubushi.com/
歴 史
平城京の頃から税(租庸調の調)として、奈良の都に送られていました。そして、その後製法が発展し、江戸時代頃から潮かつおは田子地区では保存食として作られるようになりました。
古来よりカツオ漁で栄えた田子では、お正月の縁起物として船主は潮かつおを作り船員や関係者に配っていました。正月の神棚に供えられた後は、三が日の後にみんなにふるまわれました。薄切りにして焼いたり、お茶漬け、酢の物、お吸い物にされました。けれど、現在は減塩志向が強いので、生産は減っているそうです。
潮かつおラーメン
カネサ鰹節商店でいただいた「かつおぼん」を参考にさせてもらいました。22ページ「ネギ潮かつおラーメン」より。
中身はインスタントラーメンです。写真には写ってないのですが、焼きほぐした潮かつおが振りかけてあります。少し臭みがあるので、ゆづ胡椒を添えて。なんだか高級な味になります。「潮かつお+ゆづ胡椒」は超絶美味コンビで、煮物、お吸い物、なんとパスタまでも味のグレードが上がるよう。
潮かつお おにぎり
おにぎりに焼きほぐした潮かつおをまぶしました。潮かつおの難点は、塩辛さかもしれません。けれど、おにぎりにすれば塩を足す必要もなく風味も増します。焼いてほぐしておけばいつでも使えるので、たっぷり作りビンに入れています。お茶漬けにもいい感じです。
潮かつおオイル漬け
フランスパンの上に乗っているのが、薄切りの潮かつおです。この下にはチーズが挟まっています。日ごろアンチョビを手作りしていますが、塩漬けの魚に共通点を感じ、薄切りにしオリーブオイルに漬けてみました。一週間ほど置いてから食べると「ビンゴ!」。これならアンチョビ作りより手間が少ないし、食べでがあっていいなぁと思います。
購入時にもらったチラシには、様々な調理例が紹介されていました。薄切りにしてレモンを絞り生ハム風に食べる、焼ほぐした潮かつおを卵かけご飯にトッピング、きゅうりと和える、フライやてんぷらの付け塩に… もう万能調味料だと胸を張れそうですね。
+α
カツオの塩辛 内臓を無駄にしないよう、カツオの胃袋を塩辛に漬けたと説明されました。味は高知の酒盗(しゅとう)とほぼ一緒ですが、調味料を加えるなどの加工をせず原材料のみのすっきりした味です。
これも応用が利き、ネギと合わせて炒めチャーハンを作ると大人の味です。 また、調理にアンチョビが足りない時は、これで代用できます。 少し洗って塩を抜いた後、冷ややっこにかけても風味が楽しめます。
鰹 節 日ごろ鰹節と呼んでいるのは、1700年ごろ土佐の宇佐港でカビ付け燻乾法で作られた土佐節のことです。
お使いの方は多いと思いますが、小さくなった時どうするか? 軽く砕いてビンに入れましょう。上から醤油を注げば、自家製だし醤油ができます。醤油をつぎ足せば、何回か使えます。 また、おでんやぬか床に入れるのもありですね。 保存は、購入した時のビニール袋に入れ縛り冷蔵すれば風味が抜けにくい。
カツオは、縄文の昔から食べられていた魚だそうです。知恵のある豊かな加工品は、多くの人々のとてつもなく長い営みによって、大切に育まれてきた結果なのでしょう。有難いことです。
ところが、「食べ方を間違えなければ、潮かつおは大変に美味しいです」資料を探していて、この説明文には驚き哀しくなりました。この優れものに、こんな言い方をするなんて。確かに、封を切ったらパクリと食べられるような食材ではありませんけれど、ひと手間かけるだけなのですが…
今は簡単とか扱いやすさが重視されますが、この風潮があの説明文の背景には在ったのかもしれない。それは勿体ないことにはならないのだろうか? 潮かつおに限ったことじゃなさそうで、 しばし私は考えてしまいました。
◎次回は「糸魚川の木地師」。
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