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使える交渉術! 第18話 『三淵の困惑』
(この物語では、武井青(メーカー勤務 27歳)が、仕事を通じて『交渉戦略』を学んでいきます。)
前回までのあらすじ
武井青は、仕事のトラブルを乗り越え、新たに加わった後輩・香田信二との協力に手応えを感じていた。香田は卓越した分析力と真面目な姿勢でチームに新たな風をもたらしている。
一方で、武井は恋人の美優と電話で日常の出来事を共有し、美優の明るさに癒されるも、彼女の疲れを感じ取る場面もあった。翌日、香田が会議を基にした改善案を持参した。二人の役割分担が明確になり、香田の才能がチームの重要な要素であることが浮き彫りとなった。
第18話:三淵の困惑
新しい試作品の準備が進む中、技術部のオフィスにはいつもの活気が戻ってきていた。
その中で、武井青の同期である三淵健太が久々に武井の元を訪れた。
昼休みを迎えた頃、三淵が不安げな表情で武井のデスクにやってきた。
「武井、ちょっと相談があるんだけど、いいかな?」
武井は手を止め、顔を上げた。
「おう、三淵。久しぶりだな。どうしたんだ?」
三淵は周囲を気にするようにして椅子を引き寄せ、低い声で話し始めた。
「実は、俺の担当している部品で不具合が出てるんだ。納品先のラインでトラブルになって、急ぎ対応を求められてる。でも、具体的な原因がまだ特定できてなくて、どう動くべきか分からないんだ。」
武井は真剣に三淵の話を聞きながら頷いた。
「それは大変だな。杉下課長(三淵の上司)は、何か指示を出してるのか?」
「杉下課長からは『早急に解決しろ』としか言われてなくてさ。課長自身も詳しい技術的なことは分からないみたいだし、俺もこういう事態を経験したことがないから、正直どうすればいいか…」
三淵の表情には焦りと戸惑いが色濃く出ていた。武井は一瞬考え込んだ後、口を開いた。
「まず、不具合に関連する情報を徹底的に洗い出すことが重要だな。それから、原因を特定するためのデータを集める。納品先の状況も詳しく確認した方がいい。誰か手伝ってくれる人はいないのか?」
「いや、今は俺一人で対応することになってる。他のメンバーは別の案件で手が離せないんだ。」
「そうか…それなら、一度香田に相談してみるか」
三淵は少し驚いた顔をした。
「香田って、最近入った? そこまで巻き込めるか?」
武井は微笑んで答えた。
「香田は数値解析や理論設計が得意だ。データ分析の助けになってくれるかもしれない。俺たちだけでやるより、その分野は相当早い。」
三淵は少し安心したような表情を見せた。
「手を貸してもらえるなら、助かる」
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その日の午後、武井は三淵とともに香田に声をかけた。
「シンジ、この案件、助けてもらえないか?」
武井は香田に資料を手渡しながら言った。
香田が資料に目を通す間、武井は事の背景について説明をした。
「そうですか。それで、この資料を見る限り… まずは、データの傾向を分析してみることですね。」
「三淵が関連する現象を全て洗い出している。」武井が言った。
「整理し終わったら、データ傾向と付き合わせたい」三淵が答えた。
「そうですね。 では、早速」
香田が動き出した。三人は手分けして原因を探る作業を進め、少しずつ状況が見えてきた。
武井は心の中で
(三淵も香田も、それぞれ得意な分野を持っている。このチームで解決できるはずだ)
と確信を持ち始めた。
夕方には、三人が出した初期の仮説をもとに具体的な対策案をまとめる予定だ。
三淵はかなり困惑していたが、武井と香田の協力を得て徐々に光明を見出していく。
(続く)
この話に含まれる交渉戦略や問題解決におけるTIPSを分析すると、以下の具体策が効果的であると考えられます。
1. 問題の細分化
武井は「不具合原因を徹底的に洗い出す」「原因を特定するためのデータを集める」と具体的なタスクに分解しています。
効果: 漠然とした問題が具体的なアクションに落とし込まれ、解決への道筋が見えやすくなる。
2. リソースの有効活用
自分だけでなく、香田という適任者に協力を依頼する提案をしています。
効果: 他者の専門性を活用することで、より迅速で正確な解決策を導き出せる。
3. 迅速な初動
問題が明らかになるとすぐに会議室で情報整理を始め、香田にも即座に相談しています。
効果: 迅速な対応により問題の悪化を防ぎ、解決へのスピードを高める。
4. 得意分野の活用
香田の数値解析や理論設計の得意分野を活かす提案をしています。
効果: チームの強みを最大限に発揮し、効率的に問題解決を進められる。
5. 協力体制の構築
三淵、武井、香田の3人で手分けし、それぞれの役割を明確にして作業を進めています。
効果: 個人に過剰な負担がかかるのを防ぎ、組織的に問題解決を図る。
さりげない言葉の中にも、知識や経験が巧みにに課されています。
また、これらのTIPSは、単なる問題解決にとどまらず、信頼関係の構築やチームの成長にもつながる重要な要素です。