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ナッシュ均衡(Nash Equilibrium)とは?

ナッシュ均衡(Nash Equilibrium)とは、ゲーム理論における戦略的相互作用の一つです。

いきなり、なんのこっちゃ? ですよね。

具体的な例で見ていきましょう!

1. 囚人のジレンマ(Prisoner’s Dilemma)


2人の容疑者(AとB)が逮捕され、別々に尋問されています。次の選択肢があります。』

  • 自白(裏切る): 相手を裏切って証言する

  • 黙秘(協力する): 互いに沈黙する

ナッシュ均衡の分析

カッコ内の数字は、AおよびBが刑務所に入る年数をマイナスで表記しています。

  • (Aが黙秘, Bが黙秘) =
    (-1, -1)
    → 両者が沈黙すると、それぞれ1年の懲役

  • (Aが自白, Bが黙秘) =
    (0, -3)
    → Aが自白し、Bが黙秘すると、Aは釈放、Bは3年の懲役

  • (Aが黙秘, Bが自白) =
    (-3, 0)
    → Bが自白し、Aが黙秘すると、Aは3年の懲役、Bは釈放

  • (Aが自白, Bが自白) =
    (-2, -2)
    → 両者が自白すると、それぞれ2年の懲役


このとき、どちらのプレイヤーも

  • 「相手が黙秘するなら自白したほうが得

  • 「相手が自白するなら自白するしかない

という状況に陥るため、
(Aが自白, Bが自白) = (-2, -2) がナッシュ均衡になります。

結論
お互いに自白するのがナッシュ均衡だが、全体としては非効率な結果になっている。実際はわかりませんが、このケースでは、お互いが黙っているという約束に基けば、双方得するわけです。

でも、うーん… わかったような、わからないような。

それ以外の例でも見てみましょう。

2. 残業文化と従業員の行動

  • 企業Aと企業Bが同じ業界で競争している。

  • A社が長時間労働を奨励し、B社が定時退社を推奨すると、A社の従業員がより多くの仕事をこなして市場競争で優位に立つ可能性がある。

  • しかし、B社も同じように長時間労働を奨励すれば、競争は維持されるが、従業員の負担は増える。

ナッシュ均衡

  • 両社とも長時間労働を奨励するのがナッシュ均衡

  • どちらか一方が戦略を変えると競争に負けるため、行動を変えられない

このような場合、どうすれば?

  • 働き方改革などのルール変更がないと、業界全体の労働環境は変わりにくい

【ナッシュ均衡における「効率性」の問題】

ナッシュ均衡は、「誰も戦略を一方的に変えても得をしない状態」ですが、社会全体(もしくは関係者全員)にとって最も効率的な結果をもたらすとは限らない点が重要です。

たとえば、「囚人のジレンマ」のようなケースでは、ナッシュ均衡が全体として非効率な結果(両者が自白して2年ずつ服役)をもたらしますが、もし両者が黙秘できれば(-1, -1)というより良い結果を得られます。しかし、どちらかが裏切ると相手が損をするため、信頼がないとその結果には達しません。

3. 航空会社のチケット価格競争

2つの航空会社(A社とB社)が、同じ都市間の路線を運航しているとします。

  • もし A社が値下げし、B社が価格を維持すれば、多くの顧客がA社を選び、A社の売上が増える。

  • しかし、B社も値下げすれば、結局、両社とも利益が減る

結果、「価格競争の激化」により、両者とも利益を削る価格設定に陥ることもある

【航空会社の価格競争におけるナッシュ均衡の効率性】

航空会社の価格競争では、ナッシュ均衡が「過剰な価格競争」になった場合、それは非効率的な結果をもたらすことがあります。

  • 両社が競争しすぎて価格を下げ続けると、最終的に「利益ゼロ」や「赤字」になり、持続不可能なビジネスモデルになる。

では、どうすれば両社にとって、得な状況になるのか?

それは「談合」。価格を高止まりさせることです。

でもそれは、消費者にとって不利な状況となり、社会全体にとって最も効率的な結果とはなりません。

【ナッシュ均衡ではない、全体が最も得をする結果】

最も得をする結果とは、「長期的な利益最大化」と「市場の安定化」を両立できる状態です。航空会社の場合、これは以下のような形になります。

1) 市場のセグメンテーション(棲み分け戦略)

  • 両社が特定の市場セグメントにフォーカスし、価格競争を避ける。

    • たとえば、A社はビジネスクラスや高級サービスに特化し、B社は格安チケットに特化する。

    • こうすることで、お互いの市場が重ならず、不要な価格競争が回避できる。

2) 差別化戦略(価格以外の競争)

  • 価格競争に頼らず、ブランド力やサービスの差別化を行う。

    • 例:シンガポール航空やカタール航空が高級な機内サービスを提供し、価格ではなく「価値」で競争。

    • これにより、値下げ競争を避け、利益率を確保できる。

3) ロイヤルティプログラム(囲い込み戦略)

  • マイレージプログラムや会員制を強化し、顧客の忠誠度を高める。

  • これにより、単純な価格競争ではなく、長期的な顧客価値を最大化できる。

ナッシュ均衡が「両社が価格競争を続ける状態」だとすると、それを超えて「長期的に安定した利益を得られる状態」を目指すことが重要ですね。

それには、ルールを設けて、社会全体に不利益をもたらさない知恵によって競争することが健全なようです。



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