見出し画像

暴走おじさん ”A氏”の場合

とある組織の実例です。

『夫婦で同じ企業で働いている場合、妻を出世させると最初は喜んでいるが、そのうち、妻は辞めてしまうことが続く。』

このような事例を知っているその部門のトップの方はインタビュアーに答えて、
「それゆえに現実問題、妻が辞めてしまうことになるんです。」
と言った。
加えてインタビュアーに向かって、
「あなたの会社だってそうでしょ。妻が辞めないで勤めている事例はまずない」
と言った。

しかし、そのインタビュアーの女性が「私と私の夫は辞めずに勤め続けている」と言いました。
するとそのトップの人は、「それは非常に特殊なケースだ。人事役員の本音は、どちらかに辞めてもらいたいのだ」と言う意見を言い始めます。
「それが現実だよ。人事は辞めてほしんだ。」としつこく繰り返します。

さて、この発言。最初は経験と事実をシェアしようと建設的姿勢を見せていたこのおじさんは、インタビュアーの否定発言をきっかけに、「自分は間違っていない」発言に固執し、挙句の果てに「人事部はそういう人のどちらかに辞めてほしい、が本音だよ」と、関係あるのだか無いのだかわからない発言を繰り返します。
これは、『自己防衛』の心理と深く関係している可能性があります。
こう言うことは、交渉においても、転換点になる可能性があります。


1. 自分の立場を守ろうとする防衛反応

  • トップの人物が最初に述べた意見(「妻が辞めてしまうことになる」)が、インタビュアーの反例(「私と夫は辞めずに勤め続けている」)によって間接的に否定されると、自分の見解や判断が揺らぐことになります。

  • これは、特にトップのようなリーダーにとって、「自分の意見が正しい」という自尊心や権威を維持するために、強い防衛反応を引き起こすことがあります。


2. 自分の経験を絶対視する傾向

  • トップの発言は、自分の経験や部門での観察に基づいています。それが「一般的な現実」であると信じており、反例が提示されると「自分の現実」が否定されたように感じます。

  • この結果、自己の意見を正当化しようとして「特殊なケース」「人事の本音」といった表現で議論を逸らし、自己の立場を守る発言に切り替わります。


3. 一般化への偏り

  • トップの発言は、自分が見てきた事例や体験を「普遍的な事実」として一般化しようとしています。反例(インタビュアーのケース)が提示されると、自分の一般化が崩れるため、それを補うために「特殊なケースだ」とすることで防衛しようとします。


4. 攻撃的な反応による防衛

  • 「どちらかに辞めてもらいたい」という発言は、単なる主張ではなく、インタビュアーの反例に対する攻撃的な返答でもあります。このような攻撃的な発言は、防衛心理の一環として、相手の反例を退け、自分の意見を再度主張しようとする試みです。


5. 防衛心理の要因

  • 権威への挑戦:
    トップの人は部門を統括する立場にあり、権威を維持したいという心理が働いています。インタビュアーの発言は、その権威を揺るがす要因として認識され、防衛反応を引き起こします。

  • 自己認識への脅威:
    自分の見解が不完全または偏っている可能性を認めることは、自己認識にとって大きな脅威となります。そのため、「それゆえに現実問題」「本音は~」といった強調的な言葉で自分の見解を保とうとします。


6. このおじさんがすべきだった事

  • 反例を受け入れる姿勢を持つ:
    反例に対して「そのケースは面白いですね」と興味を示し、学ぶ姿勢を見せることで、防衛的な発言を抑えることができます。

  • 感情を切り離す:
    自分の意見が否定されたと感じたとしても、それを個人的な攻撃と捉えず、冷静に状況を分析する力が重要です。

  • 議論の目的を明確にする:
    自己正当化ではなく、より良い理解を目指すことを議論の目的とすると、感情的な防衛を回避できます。


7. 特定の条件下での「暴走」心理の発生

このケースは、トップが自分の意見の正当性を証明しようとする中で起きた「暴走」と考えられます。インタビュアーの反例が引き金となり、心理的な防衛が働き、相手を攻撃したり一般論に逃げたりする行動が引き起こされたのです。


整理すると:

このトップの発言の暴走は、自己防衛の心理による典型的な反応であると言えます。特に権威や経験が否定される状況では、こうした防衛反応が強く現れる傾向があります。

しかし、このやり取り、本当に言いたいことが他にあるにもかかわらず、もっと建設的な議論がしたかったにもかかわらず、取り巻きにおだてられていると、おかしな感覚になってくるのでしょうね
普段、否定されることに慣れていないだけに、建設的な議論は一瞬にしてそっちのけになり、自己防衛のための発言が暴走し始めます。

『交渉』において、このような議論の転換点はよくみられます。

暴走した人への対応は、冷静さと建設的なコミュニケーションを維持しながら、相手の感情を落ち着かせ、対話を元の軌道に戻すことが重要ですが、その詳細はまた別の機会に!

いいなと思ったら応援しよう!