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ラジオのリアルイベント(?)に行ってみたらバレーボールが面白すぎた〜2024.1.27 アルテミス北海道vs倉敷アブレイズ~
1.ラジオを通して世界が変わる
ラジオは本当に何が起こるかわからない。僕が熱心なリスナーになってから4年ほど経つがつくづく思う。自分にとってラジオ自体なくてはならない存在だが、ラジオによって出会ったものが自分の日常に深く根付くこともある。
昨年で終了したCreepy Nutsのオールナイトニッポン(ニッポン放送)では、R-指定さんとDJ松永さんのトークや紹介する音楽に影響されて、僕も日本語ラップを聞くようになった。なんとなくヒップホップはイケイケな感じがして食わず嫌いしていたのだが、それは本当に食わず嫌いだった。このようにラジオを通して好きになる曲やアーティストは割と多い。
佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ニッポン放送)では、テレビプロデューサーであり様々なエンタメを愛する佐久間さんが面白いと思ったものを本当に楽しそうに語る姿に心ひかれた。僕がnoteに書評を書くなど、面白いと思ったものをもっと表で楽しく発信するようになったのには佐久間さんへの憧れや影響が大きい。ラジオが僕の発信マインドを変えたのだ。
そして先日、僕はまたしてもラジオを通して思わぬ出会いをすることになる。それがバレーボールだ。
2.なぜ「Go! Artemis」は聴きたくなるラジオなのか
Go! Artemis(FM NORTH WAVE)という番組がある。北海道のFMラジオ局で毎週日曜の7時から30分間放送されている。
パーソナリティはDJのハイジさん、そして日本のバレーボールリーグであるVリーグに所属しているアルテミス北海道の奥山優奈選手である。
元々このラジオは僕がラジオ好きであることを知ったアルテミスファンの知人に「試しに聴いてみてほしい」とすすめられて聴き始めた
どんなもんかなーと聴いてみると非常に驚いた。奥山選手がとにかくしゃべることに前のめりなのだ。一般にスポーツ選手のラジオトークは照れがあったり、しゃべる内容がイメージ通りまとまってないからか、ちょっと引いた感じや斜にかまえたように思えてしまうことが僕にはあったからである。
もちろんハイジさんの話の引き出し方やアシストが奥山選手の口をよりなめらかにしているのだろう。バレーの話だけじゃなく、自身のエピソードトークもイキイキと話されている。散歩や家事をしたり湯船に入ったりしながら楽しく聴ける番組だ。
ちなみに僕の一番のお気に入りトークは、「免許取ってすぐ車で帰省することを名寄の母親に伝えたらすぐ札幌まで飛んできて結局一緒に名寄まで帰った話」である。
僕はradikoのプレミアム会員になって全国各地のラジオをつまみ聴きしている。自分の中で何度も聴きたくなるラジオパーソナリティの条件は、明るい話も暗い話も「人間」をさらして前のめりに話していることだ。奥山選手はその雰囲気にとても近いなあと思い、毎週楽しませていただいている。
そんなラジオパーソナリティ兼選手が所属しているアルテミス北海道が、今季はじめて札幌でV3リーグwomen(Vリーグ3部)の試合を開催した。奥山選手が出場するのはもちろん、会場MCはハイジさんが担当される。こうなったらリスナーとして一度くらい試しに見に行かねばという話である。
ラジオで今すごく増えているのがリアルイベントである。ラジオの枠を飛び越えてどこかの会場でパーソナリティとリスナーが一堂に会して熱量のあるイベントを行う。中にはSNSで内容の投稿を厳禁にして「ここだけの話」ぽさを演出するところもある。
ラジオリスナーとして行く僕にとっては、1月27日のアルテミス北海道vs倉敷アブレイズの試合はまさにラジオのリアルイベントのようなものと言えるかもしれない。
3.「バレーボールはどんなスポーツか」をサッカー好きが考えてみた
僕は基本的にスポーツはサッカーばかり見ている。バレーボールはいくつか文献に目を通すぐらいだ。当然現地観戦は初だし、テレビを含めてもじっくり1試合まるごと集中して見ることも初めてだった。
ここから書くのはあくまで今回1試合だけ見た感想である。もしかしたらたまたま見た試合が特別だったかもしれないし、そうじゃないのかもしれないことは留意してほしい。
試合を見ていて気づいたことがある。それは選手たちがすべてのプレーが満遍なく一定のレベルでできることだ。「レシーブがすごく上手だけどサーブが入らないです」や「ブロックはできるけどアタックはいつも外に出たりブロックしかされません」なんて選手はいない。みんなレシーブもサーブもアタックもブロックもしっかりこなせる。その中で得意なプレーや強みはそれぞれあるわけだ。少なくとも素人にはそう見える。
サッカーだとこうは見えない。サッカーなら「相手からボールを奪うのは得意だけどパスに難がある」や「シュートがまったく入らないがドリブルはめちゃくちゃ速い」とった能力の凹凸が素人目にも分かりやすく極端な形で見えてしまう。もちろんプロまで行き着いた選手たちなので満遍なく能力があるのは前提である。差がはっきり見えやすいという意味だ。
バレーボールは個人のパフォーマンスに関して言えば「ここが足りない」よりも「ここが図抜けている」と解釈しやすいスポーツな気がする。僕がサッカーを含む他のスポーツに対して斜に構えすぎなのかもしれないが。
ではみんな満遍なくすべてのプレーができるのに点差が開いて勝敗が決まるのはなぜか。点が入るプレーと点が入らないプレーが分かつものは何か。ここを考えるのがバレーボールを観戦する面白さなのではないだろうか。
ぱっと見ただけでは何がどうなっているのか細かくわからないが、攻撃でも守備でも誰がどこにどのタイミングで動いてアタックやブロックしたり、ボールを拾うかをチームでデザインされている感じがする。
あらゆるデザインを状況に応じて瞬間瞬間で判断して自分たちの手札から出していく。それもコートの選手たちが全員同じデザインを描いた状態で出さないと効果を発揮しない。身体能力や技術だけではなく事前の準備、頭脳、駆け引き、チームワークが試合でさらけ出される。バレーボールはみんなの頭の中身を知りたくなるスポーツだ。
もちろん、なんだかよく分からないコンビネーションからアタックが決まったり、チームを救うビッグレシーブが出たりしたときはめちゃくちゃテンションが上がる。
3-0でストレート勝ちだったこともあり、僕が試合中いったい何度ガッツポーズをしたことか。ガッツポーズは健康に良いと思い知った半日だった。
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4.なんでもサッカーに結びつけたがる症候群
スポーツでも何でも初めてのものに接するときにいつも僕が考えるのは「自分の好きなものにいかに引き寄せるか、例えられるか」である。
試合中、アルテミスの成田郁久美監督の姿が僕の視界に選手と同じくらい何度も入ってきた。相手のスパイクが少しズレたら直撃するんじゃないかというくらいコートのラインギリギリまで前に出て、選手たちに声をかけ続ける。良いプレーや惜しいプレーがあるたびにオーバーリアクションで気持ちを表現する。対戦相手の倉敷アブレイズが座っている時間の多い監督だったので、なおさら成田監督の振る舞いが目立った。
「この振る舞い、ミシャじゃん……!」
僕は北海道コンサドーレ札幌をずっと応援しているので、成田監督の姿についミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督を重ねてしまう。彼はたびたび審判に「出すぎです」と制止されるくらい前に出て選手たちに指示を送り続ける。そしてゲーム中に何か動きがあるたびに大きなリアクションと共に気持ちをあらわにする。成田監督を見ているとコンサドーレの試合の情景を思い出す。
気持ちを内に秘めた監督も表に出す監督も僕はどちらも魅力があると思っている。どちらのタイプもいるからこそ、それぞれがより輝く。成田監督のコート上での振る舞いは今後も観戦時の楽しみ要素である。
初観戦の僕が真っ先に目で追えたのがリベロの浦山絢妃選手だ。なんといってもリベロだけユニフォームの色が違うのでわかりやすい。
ルールや役割ははっきり分からないがリベロはとにかくボールを拾いまくるのが仕事のようだ。相手のスパイクをレシーブすることはディグというらしい。もちろん先回りしてきちんとした姿勢で受けれたらいいが、そんなボールばかりではない。浦山選手は、時にはびっくりするような反射神経や体勢で相手のスパイクなどを拾って味方に繋いでいた。
「菅野のセーブじゃん……!」
なんでもサッカーに結びつけたがる症候群の僕には浦山選手の数々のディグが、コンサドーレのゴールを何度も防いでいるGK菅野孝憲選手のセービングと重なって見えてきた。菅野選手がGKとしては低い部類の身長の選手であることも、浦山選手の小回りの効いたディグと連想させるものがあったのかもしれない。
そして浦山選手はとにかくどこにでも顔を出す。そんなとこに飛んだボールも拾っちゃうのかと何度もおどろいた。守備範囲がとにかく広い。
「ミンテのカバーリング……!」
またしても僕はコンサドーレに結びつけて考える。連想したのはキム・ミンテ選手(現・湘南ベルマーレ)だ。自陣の広大なスペースを危険を察知しては先回りしてピンチを防ぐ姿に頼もしさを覚えたコンササポがどれほどいただろうか。偶然にもミンテ選手のポジションも3人のDFの真ん中、通称「リベロ」である。
相手からすれば浦山選手によって取れたはずの得点を失い、逆に彼女からのボールをつないだアルテミスは得点に結びつけていた。
僕は自分の興味を広げる鍵を「ジャンルとジャンルのこじつけ」だと信じている。自分なりの解釈で自分の好きなものとの共通項を見つけて親しみを感じたり、興味をもつ。その上でより深く知っていく。これができれば世界中のありとあらゆるものが自分の好きなものと関わりがあると解釈できるのではないだろうか。
5.ラジオのファンからチームのファンへ
僕のバレーボール初観戦は、大満足を通り越して驚きでいっぱいだった。
僕は基本的にどのスポーツもそれなりに楽しめる要素を見つけては楽しく観戦している。ただ、それらのスポーツとサッカーには決定的に埋められない差がある。それは「一人で観戦して楽しめるかどうか」だ。
サッカーは一人で現地観戦しようが、配信で見ようがめちゃくちゃ楽しい。でも他のスポーツは絶対に誰かと見ないと途中で飽きたり、集中できなくて他のことをしてしまう。
まだ1試合しか見てないので断言はできないが、バレーボールは「熱くなるところ」と「考えるところ」がいいバランスで楽しめそうだ。もっともっとのめりこめば一人で見に行っても、あるいは配信でも楽しめそうな気がする。
そしてプレーしている選手のみなさんが本当にかっこよかった。アルテミスのSNSによると例えば6番の小室祐里選手は「かわいい担当」だそうだが、その担当とやらは試合でのかっこよさを際立させるための「壮大なフリ」なのではと思ってしまう。それだけのインパクトが各々にあった。
選手たちの「かっこいい」で思い出したのが、Creppy Nutsがオールナイトニッポンを担当していた頃に開催したリアルイベントだ。普段はラジオでくだらないことをわちゃわちゃしている2人が、こういうイベントではリスナーを前にビシッと本職であるアーティストのパフォーマンスを披露する。その度に客席のリスナーたちから感嘆のため息が漏れるのだ。
普段ラジオでアルテミスのことを聴いている僕からすれば、パーソナリティとその仲間のみなさんがコートの中ではビシッと本職のパフォーマンスを見せたところが最高にしびれた。ラジオから興味を持つとこういう瞬間に出会うのだ。
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飽きっぽい自覚はあり、趣味はサッカー観戦と読書とラジオだけ。これ以上増やせるほどのキャパが自分にあるとは思えない。でも、どういう形になるか分からないが今後もアルテミス北海道に気にかけて応援していこうと思う。
引き続きGo! Artemisは毎週聴いてはX(Twitter)にシェアすることを地味にやっていくつもりだ。ちょっとアルテミスが気になっている人もまず是非番組を聴いてみてほしい。
可能ならば番組ハッシュタグ「#おはテミス」を使って感想をつぶやかれることをお願いしたい。チームのみなさんが喜ぶのがもちろんだが、ハッシュタグのタイムラインが僕と知人のつぶやきだけで埋め尽くされずに僕らも申し訳なさが軽減され、ほっとすること間違いないからだ。
6.アルテミス北海道の情報
(1)次のホームゲーム
2/17(土)15:00~ vs倉敷アブレイズ
2/18(日)14:00~ vsヴィアティン三重
※会場:北ガスアリーナ札幌46(札幌市中央体育館)
(2)各種SNS等
◎ホームページ
◎X(Twitter)
https://twitter.com/ArtemisHokkaido
◎YouTubeチャンネル
(3)アルテミスを知るのに参考になった資料
◎成田郁久美監督のインタビュー動画(2022/9/6)
◎工藤浩代表理事のインタビュー記事(2023/9/1)
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