多重人格商店街 「家路」
夕暮れ時に手を繋いで
十円ぽっちの飴を買った
お兄ちゃんと揃いの飴を
二人で転がした
砂糖を直接舐めたような味が
口に広がって
自然と心がウキウキする
走り出そうとするぼくを
焦ってお兄ちゃんが手で止めた
踏切で止まる
ごうごうと風を切って走る電車
「ぼくはいつかあれの運転手になるんだ」
指をさして
近所に響き渡る声でわあわあ言った
お兄ちゃんは意地悪く
「パイロットも警察官もやるのに〜?」
口角上げて 目尻を下げて
「だって百年も生きるならできるでしょ」と
ぼくは訴える
お