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レベルデザインの申し子(Evil West)


 西部劇×吸血鬼というサメ映画感が眼を惹くが、最大の魅力は緊張感のあるレベルデザインだ。一発ネタとも思えるガワの下にしっかりした計算を隠している。Flying Wild Hogのお家芸炸裂というワケだ。


 群がるモブを千切っては投げる気持ち良さ重視の雑魚戦。動きを見ての対応を重視するソウル風味のボス戦。何れも楽しいが、重要なのは撃破後はモブ扱いで群れに混ざるボス達。そして、複数種の(元ボスを含めた)モブによる混成部隊だ。これが『緊張感のあるレベルデザイン(特に敵の配置)を担保している。


・「モブ(元ボス)Aは突進技を使ってくる」→「避けた後の隙に他モブを一匹倒せる
・「Bは地を這う飛び道具を使う」→「昇竜拳(っぽい技)で、回避と攻撃を同時に行える」
・「Cは回復を持っている」→「回復技だけカウンターしとけば、他モブから殲滅できる
…等と、複数種を同時に相手どるシチュが多数用意されている。組み合わせの新たなパターンが供給され続ける事で、最後まで戦闘に飽きが来ない


 主人公の戦闘スタイルも、この『混成部隊を捌く楽しさ』を支えている。パっと見には銃撃メインに思えるが、実際はパンチが主力のインファイターだ。リボルバー、ライフル、ボウガン、レールガン、ガトリング、レーザービーム、火炎放射器、何かすごいパワーの十字架、グレネード、「これだけ銃持ってて近接かよ」と鼻白むだろう。だが、遠距離から安全に殲滅できない仕様もまた、『混成部隊を捌く楽しさ』のために欠かせない。


 例えば、
 目前のモブをボコボコにしつつ、ボスの横槍を察して中断、回避する。その後隙にライフルを構え、遠くの射撃型モブを先に処理。再び飛び掛かって来るボスをローリングで回避し、再度目の前のモブに肉薄してトドメを刺す。
 …そんなボスモブ入り乱れる戦闘は、出入りの激しい近接メインだからこそ提供出来る体験だ。


 なお大量の火器はゲージ消費で発動できる特殊技であり、補助兵装として戦闘に組み込まれている。敵をスタンさせたり、バリアを剥がしたり、雑魚を纏めて薙ぎ払ったり出来るが、クールタイムが長めで乱発出来ない。メガクラ、特定ボスへのメタ、最後のひと削り等、狙い澄ました運用をしないと性能を引き出せない仕様になっている。この不便さもまた、本作が脳死ブンブンゲーになる事を防いでいる。



 プレイヤーを退屈させないがため、敵配置と戦闘システムをピースとしたワイドリニアなパズルを作る事に腐心している。ゲーム自体は短い一本道だしリプレイ性も無いが、戦闘が楽し過ぎて周回したくなると言う力業でボリュームも確保している。NORMAL→HARD→VeryHARDと周れば30時間程度は遊べるだろう。ローカライズでケチが着いてしまったゲームだが、Flying Wild Hogの過去作が好きなら期待の儘に手を出して問題無い。