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Stray -PS+エクストラ探訪-

 2022年7月に、主人公は、NPCはロボットというポリコレ対策万全で発売された本作。強気の値段でエクストラもDAY1だったにも関わらず、Steamの方でもランキング上位となっていた。PS+上位コースの目玉商品だ。


 話題になった本作を気になりつつもスルーした人達は、恐らくDEATH STRANDINGと同種の不安が原因だったのだろう。猫が可愛いのは判るが、ゲームの面白さが見えてこない。SNSに上がるのは猫の挙動を愛でるツイートばかり。「具体的に何が楽しいんだ?」と首を傾げた事だろう。


 何の事はない。本作の魅力は、アドベンチャーとしての単純な出来の良さだ。退屈しないインタラクト配置と、雰囲気を楽しむための程好い間延び。緩く雰囲気を楽しみつつストーリーを追いかける事を重視した、一本道型のアクションアドベンチャーとして良く出来ている(オープンワールドかの様な事前情報も有ったが、大筋の展開はリニア)。他作との違いは、そこに猫である必然性のあるレベルデザインが加わっている事だ。


 ネイサンやエツィオでは無理そうな小さな穴細い足場。それらを猫の小さな体と高い跳躍力で越えていくのは、感覚だけが人体から切り離された様な心地よい困惑がある。「ボクには無理なんだ」とNPCが指した地形をスルスルと越えていくのも優越感を擽られるポイントだ。ゴソゴソと家捜しして物品をかっぱらって行くのも、人間でやったらシュールさが先走っていただろう。猫の姿でやるから新しく苦にならず可愛がられ感謝されるポイントが詰め込まれている。


 物言わぬ猫である故に、人々(ロボだが)の諍いも何処吹く風。猫の身でこなせる程度のスポット的な戦闘も良いスパイスだ。朽ちて退廃したサイバーパンク世界は冒険感と快適さが両立したワクワクに満ち、5時間ばかりのストーリーを気持ち良く駆け抜けられる。


 やや気になるのがボリュームだ。普通にプレイして5~6時間。3500円という単体価格の内、何割かは猫の可愛さ代と割り切る必要がある(同クラスの完成度とボリュームのアドベンチャーは1500~2000円帯に多い)。冗長を避けて小粒に纏まる事が求められるジャンルなのでボリュームが無い事はメリット(密度の高さとテンポの良さ)ではあるのだが、とはいえ、何かにつけてコスパが重視される昨今だ。


 リプレイ性が無い訳ではなく、二周目、三周目向けのトロフィーが用意されている。雰囲気と猫の可愛さを堪能しながら回収すれば、ボリュームは二倍弱に膨らむ。爪とぎスポットのコンプという猫ならではのトロフィーは、ポストアポカリプス(咎める者がいない自由と寂しさ)を味わう意図もあろう。しかしそれでも10時間もすれば全て消化される。居続けるのでなく、思い出と共に走り去るのが最良の体験パターンである事に変わりは無い。


 手軽で、良質で、プレイ後は寂しくも清涼な気分に浸れる。割高な値段も、サブスクで遊ぶならお買い得感に化けるだろう。PSエクストラに入り、その最初の一作として手をつけるのが(消費者目線では)最適な体験だろう。


 定価を貫いていたエクストラがセールを開始し、この機にと年パスで入った御仁。お目当てのソフトは個々人にあろうが、差し置いて本作からプレイしてみて欲しい。気持ちの良いスタートダッシュになるだろう。