15ミニッツ・ウォー
L'intervention / 15 Minutes of War (2019)
仏白合作、フレッド・グリヴォワ監督によるアクション映画。出演はジャン・レノ主演の「ザ・スクワッド」に出ていたアルヴァン・ルノワール、オルガ・キュリレンコ、「THE CROW/ザ・クロウ」のヴァンサン・ペレーズほか。1976年2月の仏領ジブチ、仏軍人の子女を乗せたスクールバスがテロリストにハイジャックされ、特殊部隊が事態収拾のために立ち向かうお話。キュリレンコは自ら人質となる米国人教師を演じます。仏語・英語・ソマリ語(たぶん)が飛び交いますので、字幕版がお薦め。
事件は実際に起きたもので、犯人グループは独立派のソマリ海岸解放戦線(FLCS)。彼らがソマリアに入ろうとしているのは、同国がジブチの独立派を支援しているからです。対する仏特殊部隊は国家憲兵隊治安介入部隊、略称GIGN。仏語のオリジナルタイトルは「介入」です。当時は、メゾン=アルフォールの機動憲兵隊第2/2中隊内に1973年に編成されたECRIを母体とするGIGIN 1と、モン=ド=マルサンの機動憲兵隊第9/11パラシュート中隊内のGIGIN 4の2部隊があり、ジブチの事件の制圧に動いたのはクリスティアン・プルートー中尉(本作のジェルヴァル大尉/演:ルノワールのモデル)率いるGIGIN 1。劇中でも「パリから来た」と言ってますね。ラストで、「事件の3か月後にGIGIN発足」とありましたが、事件同年にプルートーの指揮下でGIGIN 1と4が統合されたことを言っているのだと思います。ジブチは事件の翌年に独立しました。ちなみにプルートーは、80年代のいわゆるエリゼ宮盗聴事件に関与して起訴され、実刑を受けました。
さて本作、テロリスト排除の困難だけでなく、酷暑や仏本国・外人部隊との軋轢等々、ジェルヴァル大尉たちの頭を悩ませる要素は事欠かず、自然と映画そのものも緊張具合の高いものとなっていきます。(本当なら米CIAのオブザーバー/演:ベン・キューラもいるので、そちらのプレッシャーも描くべきなのでしょうが、くどくなるからか米国からのプレッシャーはなし) 狙撃実行前夜までは昔風のシャープでかっこいい演出もあったりしますが、夜が明けて狙撃地点に展開してからはもう泥臭いというか、狙撃手の過酷さが浮き彫りにされてますね。
目玉となる同時狙撃に成功すると、現場付近にいたソマリア国境警備隊との銃撃戦が始まり、それまでのじりじりした雰囲気が一気に戦争アクションの修羅場へと転じます。ここでキュリレンコが、満を持したかのように射殺されたテロリストの拳銃をとり、ソマリア兵を撃ち殺したのは、確かにスカッとしますけど、なんかギャグっぽいなあ。(笑) 戦闘系女子キュリレンコが銃弾飛び交うなかを頭抱えてヒーヒー泣いてる訳ないと思ったけど。ジブチに来たバックグラウンドについて、テロリストと謎めいた会話をするので、もしかすると脛に傷のある人物設定なのかも。
戦闘が終了し、犠牲者が出たことによる喪失感もしっかり演出されていたのですが、どうも場面場面で押し出される雰囲気が、かっこよさであったり過酷さであったりユーモアであったり悲壮であったりと、コロコロ変わる割にそれらを上手く繋げてまとめられていないのは残念ですね。狙撃チームのメンバーがそれぞれ個性豊かだったり、人質の子供たちがみんないい子なのはいいなあと思いましたが。
最後に銃器解説。狙撃メンバーが使うライフルは、第2次大戦中の仏軍の主力小銃MAS 36のスナイパー・カスタム版FR F1。サイドアームのリボルバーはマニューリンMR 73だと思います。GIGINはもちろん、仏法執行機関で広く使われている高性能回転拳銃。「やがて復讐という名の雨」の原題「MR73」はこの銃からきています。戦闘シーンで足を撃たれたカンペール(ミカエル・アビブル)が使っていたのは、ルガーP08の砲兵モデル(ランゲ・アウフ)ですね。ソマリア兵が使う機関銃は、劇中でも言及されていますが大戦後期のドイツ軍の主力機関銃MG42です。あとは遠景ではっきり見えませんが、外人部隊がMAT 49短機関銃を持っていたようです。
ちょっと気になったのは、狙撃チーム全員がエイム中にトリガーに指をかけていたこと。同時精密射撃による制圧が目的ですから、不意の発砲が命取りになるので、大尉の「ゼロ」で指をかけるはずだと思うのですが。この時代だからなんですかね。
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