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ストリートファイター

Hard Times (1975)

 「異端の鳥」のオンライン上映を見ようと思っていたのですが、ゆっくり見れる時間が取れなかった(160分もあるから…)ので、こちらを見ました。

 脚本家だったウォルター・ヒルの初監督作です。大恐慌時代の賭け喧嘩のお話です。当初は邦題通り「ストリートファイター」というタイトルの予定でしたが、公開前年に千葉真一さん主演の「激突! 殺人拳」が「The Street Fighter」として米国でも公開され、人気作となったためにタイトルを変更した経緯があります。
 出演はチャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーン、ストローザー・マーティン。ブロンソンは当時50歳を過ぎていましたが、見事な体躯とアクションを披露しています。(もっともヒル監督によれば、ブロンソンは喫煙者だったので、スタミナが続かなかったそうですが) ブロンソンとコバーンの共演は「荒野の七人」「大脱走」に続いて3作目。ブロンソンと同じくらいコバーンが好きな私が得する映画です。特にコバーンがタバコをくわえながらニカーッと歯をむいて笑う顔が大好きなので、ノリの軽い役どころの本作はそのコバーン・スマイルがたくさん見られてシアワセ。エドガー・アラン・ポーの末裔を自称する麻薬中毒のトレーナーを演じるマーティンは、「勇気ある追跡」や「ワイルドバンチ」に出ていました。

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 煽りにもある通り、男の友情ものと評されることが多いですが、今回改めて見て少し違う感想を持ちました。ブロンソンはいわゆる流れ者で、借金があるのに博打でスッて首の回らなくなったコバーンを「俺が面倒みる義理はねえ、自業自得だ」と一時見限るのですが、一目ぼれした人妻(ジル・アイアランド)にパトロンがついたことを知った後、コバーンを助けるべくラストファイトに臨みます。

 「来てくれると信じてた」と無邪気に喜ぶコバーンですが、彼のためと言うよりは、アイアランドに振られたことで後腐れなくニューオーリンズを出ることをブロンソンは選んだんだと思います。友情にほだされてコバーンを助けたのではなく、思い出をチャラにして、また貨物列車に乗って一からやり直そう、と。オープニングでもブロンソンは列車にただ乗りしていますが、前にいた町でも同じように忘れたい思い出があったのかもしれません。お金のためにファイトをやってると嘯くブロンソンですが、町を去るにあたり拾ったにゃんこの世話をマーティンに頼んだりするので、『誰かのために無償で尽くす』という行為に飢えている(そう、人は愛されるのと同じくらい、愛することにも簡単に激しく飢えるのです)ように思えます。それが満たされるとき、彼の流浪とファイトは静かに終わるのでしょう。

 そういう見方をすると、アイアランドの役どころは結構重要です。見るぶんにはさほど問題があるとは思えないのですが、ヒル監督はアイアランドの演技が気に入らず、彼女の出演シーンをかなりカットしたそうです。(そのことでアイアランドの夫であるブロンソンとのわだかまりが生じ、次監督作「ザ・ドライバー」への出演オファーを蹴られてしまったんだとか) アイアランドが演じるかどうかはともかく、監督の思うように描いていたら本作がどうなったか、興味ありますね。

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