ロード・オブ・セイラム【Twitterリライト】
「マーダー・ライド・ショー」「ハロウィン」のロブ・ゾンビ監督(以下ロブゾン)による、17世紀の魔女事件を現代にリンクさせたホラー映画です。セイラム魔女裁判がモチーフですが、映画で描かれているのは人名も含めフィクションです。
ラジオDJ(シェリ・ムーン・ゾンビ/ロブゾンの奥さん、以下ヨメゾン)のもとに「Lords」からのアナログ・レコードが届き、それを聴いた時からヤバイ状況がスタートします。このレコードにはある音楽が記録されているのですが、なかなかイヤな感じに耳に残りますね。
グロテスクなシーンもそこそこあれど、どちらかと言うといにしえの悪魔崇拝の影響が現代に甦ったときの、アシッド/サイケデリックな悪夢的ホラー演出を際立たせたい意図があるようです。ご存じの通りロブゾンはかつてホワイト・ゾンビというキッチュなヘヴィメタル・バンドをやっていて、現在はソロで活動しています。そうしたサイケな恐怖シーンはミュージック・ビデオ的でもあります。
ロブゾンは監督デビュー作「マーダー・ライド・ショー」以降のすべての作品にヨメゾンを主要な役で起用していますが、どれを見てもミョーな愛情をこめて「俺のヨメいいべ~?」とでも言いたげに撮るんですよね。映研の監督が、意中の女の子をやたら丁寧に撮るような感じでしょうか。あとロブゾンは、ヨメゾンのお尻が一番のお気に入りのようです。
魔女の親分を演じているのは、「 バイオレント・サタデー」や「ブラインド・フューリー」に出演していたメグ・フォスター。汚れ役ですが、なかなかの熱演です。さすがベテラン。
魔女裁判を研究している初老の男性を演じているのは、同じくセイラム魔女裁判をモチーフとしたアーサー・ミラーの戯曲「るつぼ」の映画化作品「クルーシブル」にも出演のブルース・デイヴィソン。
いわくありげな3人のおばちゃんは、「ロッキー・ホラー・ショー」「ショック・トリートメント」のパトリシア・クインと、「悪魔の受胎」のジュディ・ギーソン、「サランドラ」「ハウリング」「E.T.」のディー・ウォレス。あとはDJ仲間の1人として「ゾンビ」のケン・フォリーが出演していますが大した役どころではなく、マイケル・ベリーマン、シド・ヘイグ同様、ゲスト枠な感じです。
個人的にはすごく面白いと感じたのですが、終盤に手抜きと言うか、息切れ感を感じました。たとえば……
・劇場での安易な一網打尽
・クライマックスの魔女儀式に差し込まれる悪夢描写のやっつけ感
・わんこどうなった
映画に直接関係ないですが、序盤にブラック・メタル・バンドのメンバーがラジオ局に招かれてインタビューを受けるシーンがあります。極端な北欧訛りの英語で悪魔崇拝を語るのをDJ達が茶化すのですが、ブラック・メタルに関するロブゾンの意見表明のようで興味深かったです。
なお本作には原作がありまして、TOブックスから和訳文庫が現時点で発売されています。ロブゾンいわく、本と映画が互いを補完するとのこと。
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