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殺して祈れ

Requiescant (1967)

 カルロ・リッツァーニ監督、ルー・カステル主演のマカロニウエスタン。共演は「皆殺し無頼」のマーク・ダモン、映画監督のピエル・パオロ・パゾリーニほか。パゾリーニは「アポロンの地獄」を撮ってた頃ですかね。パゾリーニ組の俳優フランコ・チッティ、ニネット・ダヴォリも出演しています。リッツァーニ監督は前年公開の「帰って来たガンマン」も手掛けていますが、ハリウッド・ウエスタン調の同作に比べ、本作はよりマカロニ臭がきついです。

 虐殺をからくも逃れ、牧師に拾われたメキシコ人青年(カステル)が、家出した牧師の姪(バーバラ・フレイ)を捜すうち、町を牛耳るファーガソン(ダモン)が虐殺事件の黒幕であることを知り、メキシコ人革命家(パゾリーニ)の助力を得て復讐するお話。

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 ストーリーは、細かいところで強引さの目立つところもあったり、変に説教臭い社会派描写もああったりはしますが、大筋ではよく出来ているんじゃないかな(マカロニにしては)と思います。私が本作を気に入っているのは、ストーリーよりもキャラクター設定なんです。ニヒルで男臭くアウトローな主人公が多いマカロニウエスタンにあって、天性のシャープシューターでありながら銃に生きてきたガンマンではなく、田舎の冴えない兄ちゃんが腰に荒縄でホルスターをぶら下げている風体はまさに異色。「群盗荒野を裂く」のクセの強い米国人ガンマン役よりも、本作のほうがカステルに合っていると私は思います。二日酔いで前後逆で馬に乗ったり、馬のお尻をフライパンで叩いて走らせるなど、小技も効いてますね。

 敵役のダモンも強烈なキャラクターですね。厚塗りメイクに黒マントはまるでドラキュラ伯爵。マカロニでは主演級を多くこなしたダモンですから、本作のファナティックかつサディスティックな悪役ぶりは胸焼けしそうなぐらいこってりしており、印象に残ります。

 いっぽうのパゾリーニ組は、親分をはじめちょっと薄口ですね。終始無表情なパゾリーニと、ラテンの陽気さを振りまくダヴォリはまあいいのですが、人形を愛でるチッティのイカレっぷりがあまり生かされていないのは残念。恐らく急遽出演が決まり、キャラを煮詰める余裕がなかったんじゃないかな。

 ダモンをはじめとする悪党が本当に悪党らしく残忍なので、ラストは追っ払うんじゃなくて皆殺しにしてほしかったところですが、特に虐げられた女性達の怨みを晴らすべく、リズ・バーレット(「キラー・キッド」)らが革命ゲリラに参加して悪党どもに銃を向けるのはスカッとしますね。

 音楽はリズ・オルトラーニで、曲自体は悪くないんですが、どうも絵と合わないところがちらほらと、主人公が虐殺を思い出す赤黒のカットバック・シーンで、パッパラッパ~♪ と陽気なメキシコ音楽……あれはないなあ。クサいぐらいにメロウな曲と、緊張感やダークさを強調する曲とが見境なく使われていて、音楽についてはちょっととっ散らかった感じがします。

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