ライアー・ハウス
後に「スリー・ドッグス クリスマス三銃士」「ゾンビワールド」などを手掛けるジェシー・バゲット監督のコメディタッチ・クライムサスペンス映画。主演は「バウンド」のジーナ・ガーション。共演はTVを中心に活躍するケリー・ギディッシュ、ヴァル・キルマー、レイ・リオッタ、ロバート・デュヴァルの従弟で本作同年の「リンカーン」にも出演したウェイン・デュヴァル。ガーションはさすがに老けましたけど、まだまだ魅力的ですねえ。10歳以上年齢が違うギディッシュと並べても全然負けてません。
タイニー(ギディッシュ)がローナ(ガーション)からの電話で彼女の家に行ってみると、ローナの夫デイル(キルマー)が床に伸びている。どうも彼は、武装強盗をはたらいて大金を手にしたらしい。椅子に縛りつけ、銃で脅して問い詰めるも、お金の在処を吐かないデイル。銃を握ったままエキサイトするローナが引き金を引いてしまい……というお話。
シチュエーションはほぼトレーラーハウス(結構大きい)内で、ローナとデイル、ローナとタイニー、途中でハウス内に侵入してくる私立探偵(デュヴァル)と女2人の会話が映画の中心で、ある意味舞台演劇っぽくもあります。1980年代初頭のテキサスという舞台設定もよく演出されており、レトロだけど洗練された衣装や音楽も(ありきたりな表現ですが)ステキ。そう言えばオープニングもなかなかにステキでしたねえ。
そこに女2人がお金を捜索するために家中をひっくり返したり、証拠隠滅のための人体破壊とそれに伴う大量の血糊がプラスされ、現場はカオスを極めるのですが、それでもなぜか雰囲気だけはすごくステキなんですね。古き良きスラップスティックを思わせる緩急の手際のよさに加え、登場人物の会話がすごく魅力的だからだと思います。
私立探偵の登場から、ストーリーが加速しつつ二転三転します。ラストは意外な落ちがつきますが、私はこれ、弱いと感じました。たぶんですが、リオッタ演じる保安官のキャラクターが薄すぎるせいだと思います。どういう演出なら良かったのか、いいアイデアが浮かばないのですが、とにかく大して物語に関わってない登場人物が、土壇場で横からズカズカ入り込んでおいしいところをさらってくのが、どうも無神経に思えるんですよね。ここまで一生懸命映画を見て来たのに何それ? って感じ。この落ちをつけるための演出には、やはり不満が残ります。
まあ全体的には、ステキなビジュアルと音楽、多彩なアンサンブルの会話が楽しい映画ですので、それなり以上に楽しめました。序盤で退場となりますが、すーぐバレる子供じみた嘘をつくキルマーの演技もよかったです。何度も言うようですが、激しい会話が楽しい映画なので、字幕を追うのがかったるい人には吹替版をお薦めします。
序盤でローナが振り回す、デイルが強盗に使った銃は、劇中でも触れられていますがスミス&ウェッソンM29。「ダーティハリー」で一躍有名になった『the most powerful handgun in the world』です。これで撃たれてあんな銃創で済むはずない。(笑) ちなみに現在のお値段は1,200~1,500ドル。強盗に使うにはもったいないですね。