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サイコ2

Psycho II (1983)

 アンソニー・パーキンス主演、不朽の名作サイコスリラー「サイコ」の続編。ノーマン・ベイツ(パーキンス)が釈放され、モーテルに戻ることで起きる事件を描いていますが、「サイコ」の原作者ロバート・ブロックが書いた「サイコ2」とはまったく違うストーリーです。監督は超能力ホラー映画「パトリック」のリチャード・フランクリン。「サイコ」でマリオン(ジャネット・リー/ジェイミー・リー・カーティスのお母さん)の妹ライラを演じたヴェラ・ミルズが引き続き同役を演じるほか、ノーマンと仲良くなる女の子メアリー役に「フェーム」のメグ・ティリー、ノーマンの主治医レイモンド医師役に「スカーフェイス」のロバート・ロッジア。

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 パーキンスは元々才能に恵まれた俳優で、50年代は青春ものの役者としてオードリー・ヘップバーンやジェーン・フォンダなんかとも共演し、確実にステップアップしていましたし、歌や楽器演奏にも秀でていました。(本作でピアノを弾くシーンも実演しています)  「サイコ」以降の出演作品には「パリは燃えているか?」「ロイ・ビーン」「オリエント急行殺人事件」なんかがありますが、ノーマン色を払拭するには至りませんでした。1979年の「北海ハイジャック」のテロリスト役もノーマン系だったなあ。特に80年代以降はノーマンのイメージが定着してしまい役に恵まれなかったと思います。

 とは言え、ピーター・オトゥールみたいに初期の大役のイメージに縛られることなく長く活動する俳優も少なくない訳で、必ずしも環境の問題ばかりではないのかもしれません。パーキンスの場合、本人にも多少は問題があったようでもあります。本作制作中、パーキンスが再びノーマンを演じると言うのでマスコミの取材が活発だったそうで、不幸にもオリジナル「サイコ」を見たことがなかったティリーが「何で彼ばかりあんなに取材を受けるの?」と発言、激怒したパーキンスに口をきいてもらえなかったとか。

 さておき本作ですが、複雑なプロットをかなり魅力的に描いており、脚本と演出の力量が存分に示されていると思います。古い映画ながらネタバレで魅力が半減する系の作品ですのでストーリーを詳述できませんが、1時間ぐらい緩く引っ張っておいてその後一気に加速、ラストでもうひと山というリズムが気持ちいい。ヒッチコック・マニアで知られるフランクリン監督ですが、その気持ちいいリズムを堅守しながらも、随所にオマージュを仕込む余裕さえみせています。

 いっぽう、スプール夫人(クローディア・ブライアー)についての伏線が何もなくて、会話で一気に解決させる手法をとっているんですね。昔見た時は何とも思わなかったのですが、改めて見ると見過ごせない欠陥だなあと思いました。そこはもっとがんばるべきだった。

 カラーによる撮影は、モノクロのオリジナル「サイコ」の雰囲気を十分に受け継ぎながら、カラーならではの暖かさと不穏さが示されていて秀逸。特に昼夜時間の異なるモーテルの全景はなかなか力が入っていますよね。殺害/負傷シーンもほんと痛そうです。音楽はオリジナルのバーナード・ハーマンに対し本作はジェリー・ゴールドスミス。こちらもさすがです。

 オリジナル「サイコ」に比肩できるような作品ではありませんが、優れていると言っていい続編だと思います。クエンティン・タランティーノはオリジナルより好きだと言っていますが、気持ちはわかる。映画としてのステータスは間違いなくオリジナルですが、それを超えた嗜好レベルだと、私もそうかもしれません。

 1982年、パーキンスが出演した日本のCM。


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