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アリス・スウィート・アリス

Communion / Alice, Sweet Alice / Holy Terror (1976)

 撮影当時、おそらく10歳前後のブルック・シールズが映画デビューを果たしたサイコスリラー/スラッシャー映画。シールズ主演の「プリティ・ベビー」「青い珊瑚礁」のヒットを受けて、カット/アンカットバージョンがタイトルを変えて再上映されました。もっとも、シールズが演じているのは最初に殺される女の子の役ですが。監督のアルフレッド・ソウルは日本未公開の数本を監督したほか、「グローリー・デイズ/旅立ちの日」のプロダクションデザイナーを務めた人物です。

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 70年代の米国映画ですが、自動車や至るところにジョン・F・ケネディの顔写真がみえることなどから、時代設定は60年代初頭と思われます。また舞台はニュージャージー州パターソンですが、ストーリーはもちろん、色彩やローマ・カトリック教会の様式、ねっとりした空気感などには驚くほどイタリアンホラー/ジャッロ、はっきり言えばダリオ・アルジェント作品に通じるところがあります。ニコラス・ローグ監督の「赤い影」を模倣したと思われるレインコートの黄色(伊:giallo)がすごく印象に残るんですが、それにも何かの意図を感じます。三面人形の不気味さや、病的肥満で小児性愛の大家もどことなくアルジェントっぽい。あ~……あと、殺傷シーンはそれほどショッキングではないものの、アメリカンサイズのGが登場するので、苦手な方はご注意ください。この瓶詰のGも何となくアルジェントっぽいですね。

 登場人物はどいつもこいつもクソッタレです。これは意図的なものなので、見ていてイラッとはするものの映画的な不愉快さはありません。その筆頭はもちろんサイコ少女アリス。設定は12~13歳だと思いますが、演じるポーラ・シェパードは当時19歳だったというから驚きです。

 殺害を免れるも大怪我を負わされたアリスの叔母(ジェーン・ロウリー)は、感情の起伏が激しく、ぎゃあぎゃあわんわんうるせえうるせえ。

 前述の大家はズボンの前が汚れているのがすごく気になりますが、にゃんこに優しいので私は嫌いじゃない。(笑) 演じるアルフォンソ・ドノブルは元々ゲイバーの用心棒で、「悪魔のしたたり」「Night of the Zombies」に出演しましたが、1978年に銃で自殺してしまったんだそうです。

 アリスの母(リンダ・ミラー)も結構イラッときます。のっけから妹のカレン(シールズ)ばかりかわいがっていますし、アリスに対して形の上では母親らしく振舞おうとする割に、温かい愛情を注いでいるようにみえません。で、誰かが傷つけられる度にギャーギャー喚く。父(ナイルズ・マクマスター)は一見まともな人物で、アリスに対しては母親よりも真の愛情をかけているようにみえるのですが、離婚したはずの母親とイイ感じなったりして、結局下半身に逆らえない俗物です。(嫌いじゃないけど) 元嫁とイチャイチャしてる最中に現嫁から電話がかかってきて、水をかけられたようにしゅーんと醒めちゃうシーンは笑えます。

 車椅子のボケたモンシニョールもイラつくんですよねえ。トレドーニ夫人(ミルドレッド・クリントン)が死を願うのも無理はありません。夫人がそのことをトム神父(ルドルフ・ウィルリッチ)に告白し、恍惚とするシーンはなかなかの凄味があります。

 観客をイラつかせるこうした人物描写は、本作が意図したものであれば大したものだと思いますし、私自身はむしろ意図した演出であると確信しています。それと、聖体拝領(communion)のシーンがありますが、口をあーんと開けるんじゃなくて、舌をべーっと出して待ってるんですね。「聖体拝領」「communion」などで画像検索しても、そんな画像は出てきません。何だったらウエハースを口に入れてもらうんじゃなくて、手で受け取ったりもしています。この舌を出して待っているさまが、子供はともかく大人がやると滑稽をはるかに通り越して気持ち悪いんです。アリスの舌なんか、これまた厚ぼったくて長く、さらに異様。オリジナルタイトルにするぐらいですから、何らかの寓意が込められているんでしょうね。いろいろ想像できます。

 一点、殺人者の動機がやはりいまひとつ弱い。頭では理解できるんですが、気持ちに刺さってこないのが本作の最大の難点です。そこをしっかりやれていれば、アメリカ版ジャッロの嚆矢ともなり得た作品かもしれません。

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