【Short Letter】Shortrip Letter 〜高野山・奥の院へゆく〜 ※前編
※この記事は僕、ユウの旅日記です。サッカーの話題は出てきません。
今回は和歌山県、高野山へ行って参りました。
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久方ぶりに、朝焼けを浴びた気がする。
朝が苦手な私にとって、太陽とは朝起きたら、常に高く登っている、そんな類のものである。
ところが、旅に出る日は訳が違う。前の晩、どれだけ遅く床に就こうとも、日の出前から目が覚めてしまう。
最寄駅からの二番列車に乗り、今日は一路、高野山を目指す。普段、この時間の電車にはまるで縁がないが、どうやら思いのほか都会の生活は早い時間から動いているらしい。座席は埋まり、立っている客もちらほらと見かけるくらいだ。
難波駅にて、6時ちょうどの急行・極楽橋行きに乗り換える。朝食を摂ろうとしたが、運悪く売店は全て閉まっていた。やむなく自販機でジュースを買い、急場の飢えをしのぐ。
通勤車両とはいえ、ボックスシートに座れるのは有難い。座席は半数くらい埋まっているが、こんな早朝から極楽にたどり着こうとするのは、私くらいのものだろう。
電車は新今宮、天下茶屋と停車し、堺東を過ぎたあたりで沿線に田園が増えてきた。北野田を過ぎると、風景は働く街から住む街へと変わり、人の出入りが次第に落ち着いてくる。
ここでしばし眠ることにした。旅はまだ長い。
ーー案外眠れないもので、次の河内長野で目を覚ましてしまった。このあたりから、大阪方面から和歌山・橋本方面へと、人の流れが変わる。
快適な特急列車の旅もよいが、普通列車で沿線の人々の暮らしを垣間見ながら進む旅も、また悪くないものだ。
県境の人の出入りの少ない区間を抜け、紀見峠、林間田園都市を過ぎたあたりから、車内は和歌山・橋本へと向かう学生やサラリーマンの姿で賑わいはじめる。空席が目立つ車内にもちらほらと、立っている人の姿が目立ち始めた。
見立て通り、橋本でほとんどの乗客が下車した。一気にがらんとした車内。どうやら極楽へと向かうのは、私も含めて3人程度のようだ。
橋本を過ぎると、一気に山岳路線に入る。車内にはひっきりなしにかん高い音が響き続ける。連続する急カーブで、列車は鳴き声を上げ続ける。
九度山と高野下で1人ずつが降り、ついに車内には私一人になった。
列車はさらに山深い、眼前に崖が迫る森の中を走る。
鉄道の旅の魅力は、おそらくその「隔絶性」にあるのだろう。すれ違う車もない、人もいない、外界と隔離された世界の中を、ただぽつねんと突き進むその姿が、旅をいっそう「非日常」として際立たせるのかもしれない。
「千と千尋の神隠し」のクライマックスのシーン、千尋がカオナシと乗っていたのも電車である。「銀河鉄道999」が、もしバスの旅だったら、どこか味気ない。
外界との隔絶性というフックが、旅情をより際立たせる。
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