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web3に関する記事をまとめています。
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記事一覧

芸能プロダクションがEXに賭ける本気度 〜ホリプロ・グループ・ホールディングス、平崎麻衣氏に聞く〜

個人のデータを個人がコントロールする非中央集権型のweb3。本連載ではweb3がもたらす新たな可能性について、専門家の視点から考察していきます。第5弾はホリプロ・グループ・ホールディングス 宣伝部 副部長の平崎麻衣氏に話を伺いました。エンタメ業界を取り巻く環境はSNS・グローバルコンテンツの影響力の拡大や、英語圏における吹替文化から字幕受容の社会変化など、コロナ禍を経てまさに変化の時を迎えています。現在、宣伝業務と並行して、熱量のあるファンと直接つながる事業変革の準備に取り組

情報銀行・PDSの再考(下)

前回の記事「情報銀行・PDSの再考(上)」では情報銀行やPDS(Personal Data Store)を巡る国内での官民の取組みを見てきた。今回の記事では、情報銀行やPDSに関連した海外動向を概観し、情報銀行・PDSがあまり普及しなかった理由と、デジタルIDウォレットの普及に向けた「教訓」について考察したい。 1. 海外の動向1.1 情報銀行の萌芽としてのProject VRMとインテンション・エコノミー Project VRMは、 ITジャーナリストのドク・サールズ(

情報銀行・PDSの再考(上)

「情報銀行」という言葉をご存じだろうか。情報銀行は、日本政府などがデータ駆動型経済を推進するために提唱したサービス・制度であり、「GAFAなどの米国ビッグテックに奪われた日本人の個人データを日本の手に取り戻す」ことも一つの狙いとして立ち上げられた官民連携プロジェクトである。情報銀行の公的なスキームは2018年に開始されたが、2024年12月現在で登録されているサービスは2つのみであり、その役割を終えつつあるのかもしれない。しかし、情報銀行やPDS(Personal Data

日本におけるデジタルIDウォレットの活用ケース:空港での顔認識とOne IDの継続利用

成田空港と羽田空港では、手荷物預け機や保安検査場、搭乗ゲートを顔認証を使って「顔パス」で通過できるOne IDサービスが提供されている。顧客経験(UX)の向上が期待されているが、現状では個人情報保護上の理由から、毎回搭乗のたびに顔情報を登録し直す必要がある。本稿では、本年公表されたEUの指針も参考に、デジタルIDウォレットを用いてOne IDを継続利用できるようにすることで、利用者の利便性をさらに高める方法について検討したい。 1.成田空港と羽田空港の顔認証One IDサー

デジタルウォレットに関する普及促進活動(下):BGINで議論進むウォレットガバナンス

デジタルウォレットは、ユーザ個人のデジタルIDや暗号資産を管理するためのアプリケーションで、国や地域を超えて様々な場所・人・用途に利用されることが期待されます。上・下の二回に分けて、NECグローバルイノベーションビジネスユニット セキュアシステムプラットフォーム研究所の一色寿幸さん、田宮寛人さん、大槻紗季さんにデジタルウォレットの標準化や普及促進活動について寄稿いただきました。 前回の記事では、デジタルウォレットの標準化や普及促進に向けた取り組みについて広く紹介しました。「

ファンとアーティストが特別な“つながり”を持てる未来――。~EX(エンターテインメント・トランスフォーメーション)とは~

SNSやライブストリーミング環境の普及、イベント等の参加・体験の価値化などにより、「推し活」というファン行動のもと、アーティストとファンは直接つながる時代になってきました。また、NFT (Non-Fungible Token、非代替性トークン)やweb3を利用したデジタルグッズやファントークン、スペシャルイベントの参加権の購入などを通じて、ファンはアーティストの活動を直接支援できます。透明性と信頼性を保ちながら、アーティストとファンが特別な“つながり”を持てる未来はもうすぐそ

マイナンバーカードの本人確認が不正転売防止に寄与、デジタル技術が“健全な場”を提供する 〜デジタル庁 国民向けサービスグループ、鳥山高典氏に聞く〜

個人のデータを個人がコントロールする非中央集権型のweb3。ソートリーダーシップ(Thought Leadership)活動を推進するIISEでは、web3がもたらす新たな可能性について、各専門家へのインタビューを通じて多角的に考察しています。第4弾はデジタル庁 国民向けサービスグループで参事官補佐を務める鳥山高典氏が登場。鳥山氏はマイナンバーカードの利活用を推進する立場で、2024年春には東京ガールズコレクションにおけるチケット不正転売の実証実験にも携わったキーパーソンです

デジタルウォレットに関する普及促進活動(上):普及促進活動の概要

デジタルウォレットは、ユーザ個人のデジタルIDや暗号資産を管理するためのアプリケーションで、国や地域を超えて様々な場所・人・用途に利用されることが期待されます。その時に重要になってくるのは相互運用性です。例えば、相互運用性がなければ、せっかく発行されたデジタルIDを有効活用できない状況になり得ます。そこで、デジタルウォレットの相互運用性の実現に向けて、様々な団体や組織で標準化や普及促進活動が行われています。 今回は、NECグローバルイノベーションビジネスユニット セキュアシス

「推し」はいかにして生まれたか? “内から外へ”と行動変容した歴史とファンマーケティングの関係 〜エンタメ社会学者、中山淳雄氏に聞く〜

個人のデータを個人がコントロールする非中央集権型のweb3。本連載ではweb3がもたらす新たな可能性について、専門家の視点から考察していきます。第三弾はエンタメ社会学者の中山淳雄氏が登場。推しが誕生した背景、消費活動における女性のパワー、Z世代のコンテンツ受容行動など、エンタメにおけるファンマーケティングの変遷を鋭い洞察力で分析していただきました。 自分たちでカルチャーを作り上げる風潮が推しの勃興につながった ――まずは日本の「ファンマーケティング」における変遷について教え

ステークホルダーとの強固な結びつきが基本、未来を見据えて“一歩先”のテクノロジーを活用する 〜TGC実行委員会 チーフプロデューサー、池田友紀子氏に聞く〜

個人のデータを個人がコントロールする非中央集権型のweb3。本連載ではweb3がもたらす新たな可能性について、専門家の視点から考察していきます。第二弾は東京ガールズコレクション(以下、TGC)実行委員会 チーフプロデューサーを務める池田友紀子氏。“プラットフォーム”として多くのステークホルダーとともに進化してきたTGCの歴史を踏まえ、テクノロジーとの関係やデジタル庁をはじめとする各官公庁との取り組みなどについて話を伺いました。 TGCは時代に伴ってアップデートするプラットフ

エンタメ業界の継続的な課題であるチケット不正転売、明るい未来に求められるものとは? 〜ビジネスプロデューサー、半田勝彦氏に聞く~

個人のデータを個人がコントロールする非中央集権型のweb3。本連載ではweb3がもたらす新たな可能性について、専門家の視点から考察していきます。第一弾はビジネスプロデューサーの半田勝彦氏。エンターテインメント業界にはびこるチケット不正転売問題、ファンマーケティングの進化をテーマに、新たな経済圏・経済活動の推進をサポートするweb3の可能性を探ります。 進むエンタメ業界のフラット化、一方でルール作りが重要に ――長くエンターテインメント業界に携わってきた半田さんから見て、昨今

web3の必須機能であるデジタルIDウォレットとは~デジタルIDウォレットとDID/VCの最新トレンド~

web3は個人のデータを個人でコントロールする非中央集権的なコンセプトを持つ次世代Webです。米などの独占プラットフォーマーが個人データを収集し、個人のプロファイルを作ることで、リアルな世界に大きな影響を与えることに対抗する考えとして生まれました。今後、DAO(分散型自立組織)やNFT(非代替性トークン)、スマートコントラクト等の形で社会に浸透する可能性があります。そして、社会実装に欠かせないのが、リアルとデジタルの社会のインターフェースであるデジタルIDウォレットです。今回

web3の到来と社会の変革

国際社会経済研究所(IISE)は2月開催の「IISEフォーラム2024~知の共創で拓く、サステナブルな未来へ~」で、web3で実現する持続可能なデジタル社会の未来について討議しました。このnoteでは登壇者のIISE特別研究主幹の池野 昌宏が、フォーラムで示した“web3”の世界観とその課題について説明します。池野はNECアメリカ社長を含めて米国駐在が累計15年と長く、米政府や民間企業、NGOに対してデジタルID事業を推進してきました。米国で進む社会の分断や米IT企業による情

EUのデジタルIDウォレット(下): EU各国の動向

前回の記事「EUのデジタルIDウォレット(上):欧州デジタルID規則(eIDAS II)の制定」では、2024年3月に正式制定された欧州デジタルID規則(eIDAS II)について解説した。同規則はEUの27ヶ国に対して「欧州デジタルIDウォレット」の発行を義務付けることで、市民がスマートフォン等を通じてEU域内の公的サービスや民間サービスにシームレスにアクセスできるようにするものである。これを受け、EU各国ではデジタルIDウォレットの発行が進められている。 本稿ではEUの中