【さよならGYAO#1】『ロック・ザ・カスバ!』
最近は、サブスクをすべて解除してGYAOばかり見ている。そう、3月31日にはサービス終了してしまうからだ。
無料で見れる財布に優しい動画サイト。あまりに広告をねじ込むので鑑賞の興をそがれてしまうのが難点だけども、長所もいっぱいあった。
妙に、ニコラス・ケイジフレンドリーが高く、常時4本くらいは見られる所とか。(1)
配信サイトの違いで見られない作品の橋渡しする役割もあったところとか。(2)
真面目な話をすると、クレジットカードアレルギーとか、ネット契約過敏症の高齢者などには抵抗なく利用できていたところとか。(3)
まあそんなGYAOにも別れの時が来ている。
だからといって特別な作品が配信されているわけでもないので、配信切れ間近の作品をだらだらと見ている。
『ロック・ザ・カスバ!』配信2月1日まで
つまらない。
バリー・レビンソン、ビル・マーレイ、ブルース・ウィリスと錚々たる顔ぶれが揃っているにもかかわらず、つまんないんだなこれが。(4)
落ちぶれた音楽プロデューサーが、アフガニスタンへ巡業に来たら、歌手には逃げられるは、武器商人の取引に巻き込まれるはの騒動に見舞われる。そして、立ち寄った村で奇跡の歌声を持つ歌手を見つけて……
あらすじだけ見ると、めちゃくちゃ面白そう。
けれども話の焦点がボケているのか、退屈に時間ばかりが過ぎていく。
まず、ビル・マーレイ演じる落ちぶれた音楽プロデューサー。過去の自慢話ばかりしていて、現在は若い歌手志望から経費を巻き上げてカバーソングを歌わせ糊口をしのいでいる。
もちろんビル・マーレイなので愛嬌ののあるクズ演技は素晴らしいのだけど、設定の時点でどっちつかず。
落ちぶれてるけど、開き直っているように見えるし、何より音楽愛があるのかないのかもピンと来なかった。
私生活の様子も、離婚して娘と離れて暮らしているようだけど、娘には好かれている様子で喪失感があるわけでもない。無理してアフガニスタン巡業する逼迫感がない。
となると、根本の動機がないので全編にわたってドラマが薄い。
そんな実家のカルピスみたいな薄さのドラマに、見ているこちらの意識も薄れてきた頃、ようやく本筋の話が回りだす。
アフガニスタン、ムスリムの村に育ちながらも、オーディション番組への出場を夢見る少女の登場。
これだけでドラマの塊といったキャラクターだけれど、主人公と出会うのが映画始まって一時間。
ようやっと話が動き出したと思ったけども、ここからもなにかグズグズした展開が続く。
男尊女卑の聖地で、ムスリムの女性がテレビで歌うなんてそれだけでインパクトがあるはずなのに、わざわざチラシをばらまいてキャンペーンを張って投票を集めるなんてシーンを入れる。
これだと、視聴者が彼女の勇気に賛同したという印象を削いでしまっている。
残念だったのは、ズーイー・デシャネル演じる従業から逃げ出した歌手が、そこから一切映画に登場しなくなる所。
彼女はもともと、オリジナル曲を歌いたいのに、生活のためにカバー曲ばかり歌わされているという不遇の人物。ただ逃げ出して終わりって、ここも音楽愛を感じない。
そのままフェードアウトしてしまうのも、ムスリム女性の勇気ではなく、才能の話になってしまうやうな。
なんか題材も役者も魅力にあふれているのに半分もいかせていない仕上がりだったと思う。
良かったところは面白い実話を知れた所。
オーディション番組にムスリム女性が出演というのは事実をもとにしているらしい。
まあ、完全に事実の凄みに負けているけれども。
それでもありがとうGYAO
夢は見れなかったけど、とりあえず現実を無視はできた。
了
脚注:というか駄補足
(1)ニコラス・ケイジフレンドリーの高さ:2月1日時点で五本も見れるよ。とくに『グランド・ジョー』は見ごたえあるドラマ作品。
パシフィック・ウォー
バンコック・デンジャラス(R15+)
グランド・ジョー(R15+)
レフト・ビハインド
デビルクエスト
(2)配信サイトの橋渡し:配信サイトごとの作品の違い話題が断絶してしまうこともあるとか。なんかの記事で読んだけども、検索しても出てこない。
(3)高齢者御用達:全く根拠のない、私の知人指標。いわゆるサンプル数1の話。
(4)バリー・レビンソンはけっこう見てた。『レインマン』はもちろん『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』なんかは皮肉っぽくってスキ。
(5)ブルース・ウィリスは傭兵だけど、引退して小説書きたいと思ってるって設定。いっぽう音楽プロデューサーって当たりが、コネがありそうでない感じで、食いついているようないないようなであまりおもしろくなんない。