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涙またはさくらんぼ餅

わたしはつらかった。
心療内科で診察室に入った途端に泣いてしまい、最近の様子を話すどころではなく、喋ろうとすると嗚咽になるので診察時間の15分ずっと泣いていた。
これで先生にはつらい状態だというのはわかったらしいが、受付で次回の予約をする間も涙は止まらず、わたしはずるずる鼻水を啜り上げながら医院を出た。
気を緩めると大声でわんわん泣いてしまいそうだったので、唇を噛んで耐えた。やばい。だって先生が最近どうですか?とか訊くから、最近なんて最近なんて…死にそうでした。と言おうとしたら爆発するように泣いてしまった。死にたい。
わたしは死ぬことを考えると余計泣いてしまった。
母親に死ねと言われた…母親にお前が悪いんだと言われた…わたしは生まれてこなければよかった。
この世は生きたい人だけの為にあって生まれてこなければよかった人の居場所がないのだ。
生まれてこなければよかった人はさっさとこの世から出て行かなければならないのだ。
だから生きたい人に迫害されても仕方がないのだ。
心療内科の先生だってあっち側の人間なのだから結局、最後はわたしを見放すに違いない。なんだか人間不信感が高まってきた。
親に捨てられる夢なんか見たせいだ。
最悪。気分がボロボロに破けた障子紙みたいになった。みじめ。わたしは道路を転げまわって泣き喚きたかったが、そんな事はみっともないからやめた。
わたしはふらふらとスーパーに入った。苦しみの診察が終わったら買い物しようと思っていたのだ。
お店はもうクリスマスムードに彩られ、赤と緑の装飾にお菓子の詰め合わせセットが入口にキラキラ並んでいた。かわいい。
ピンクのキティちゃんのバッグにお菓子がいっぱい入ったやつが。
わたしはお菓子を見ていたら涙が止まった。淡いピンクのねこはどれも可愛かった。
だけど可愛かったからって何だというのか?わたしはやっぱり苦しかった。
また涙が出た。
わたしはそこで海苔とマヨネーズとケチャップとカップラーメンを買ってから駅ビルの中にあるスーパーにも寄った。
ここのスーパーはお菓子がいつも激安だ。賞味期限間近の商品を仕入れて激安で売っているのだろう。いちごやブルーベリーのグミが59円とかソフトキャンディが64円とかなのだ。わたしはグミやソフトキャンディが好きなのでどんどんカゴに入れていった。駄菓子のさくらんぼ餅とサイダー餅というのが19円だったので懐かしいと思ってそれもカゴにいれた。
さくらんぼ餅は小さなパックにピンク色の小さい餅がポチポチ並んでいてつまようじがついていてそれで1個ずつ刺して食べるのだ。
なんかかわいいお菓子だ。
お菓子に夢中になっている間は涙が止まっていた。わたしは電車に乗ったらさっそくさくらんぼ餅を食べようと考えるとながらレジで精算をした。

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